東堂庵と饅頭屋 中編
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みんなの前でポーズを決めてくれたり。
仲間と一緒に笑っていたり。
女の子に優しくてとても人気がある。
みんなが好きになる。
あの人は山を愛してる、山に愛されてる。
音もなく静かに誰よりも速く山を登る。
私はファンクラブにすら入れなかった。
ファンクラブの会員規則に自転車競技部のマネージャーはやってはならないと書いてあるなんて知らなかったのだ。知っていたらマネはやらなかったかもしれない。
いや、きっとやっただろう。箱根の山はあの人のものだ。私は入学前から、あの人の山を登る後ろ姿の虜になった。
美しい。
そんな言葉がぴったりだ。姿勢は正しくぴんと伸びて、一瞬にして目の前から消えた。
私は少しでもあなたの支えになりたい、箱根の山神。どうか側で応援することを許して欲しい。
「名字名前さんではないか!どうだ!マネージャーの業務には慣れたか!」
「は、はい、おかげさまで。まだまだ失敗ばかりですけど、頑張ります」
「ワッハッハ!気にすることはないさ!名字名前さんが一生懸命やってくれていることはわかっているぞ!これからも頼りにしているぞ!」
「は、はい!」
東堂尽八。我が箱根学園が誇る自転車競技部のエースクライマーだ。
ファンクラブがあるほどの人気者。
練習後の疲れもあるだろうに、そんな中、一年の数人いるマネージャーのひとりである私のことも気にかけてくれる優しい人。
「そういえばな荒北、聞いてくれるか!この前巻ちゃんと話したのだがな!なんと巻ちゃんは春だというのにもう夏バテのようなのだ!春だというのに!花粉症ではなく夏バテだぞ、わかるか荒北」
「そうかヨ」
「聞いておるのか荒北!大変な話だぞ!今からそんなことでどうする!巻ちゃんにはこの夏のオレとの勝負、万全の状態で挑んでもらわんとな、おい、荒北どこへ行く!」
「ッセ!シャワー室混むだろーが、おめェも急げヨ!」
そうなのだ、東堂さんには「マキちゃん」なる想い人がいるらしい。
これはマネージャー同士でも話題になっているため、東堂さんのことはみんな諦めたようだ。
もとより箱学自転車部は部内恋愛禁止。好きになり目立つアピールをしてもだめだ。選手の士気を削ぐことになるからというのがその理由。
だけども自転車部には東堂さんをはじめ、新開さんや、二年の黒田さんなどモテる人が本当に多い。同級生の真波くんも人気がある。
なので一年の時にマネは何人か採るが、みな誰かを好きになり退部となってしまうのだ。
それは避けたい。
私はどうしてもすこしでも山神を応援したいのだ。力になりたい。
それに悲しいかな東堂さんには「マキちゃん」がいるのでこの想いは実らない。
だからずっとしまっておける。はず、だった────
仲間と一緒に笑っていたり。
女の子に優しくてとても人気がある。
みんなが好きになる。
あの人は山を愛してる、山に愛されてる。
音もなく静かに誰よりも速く山を登る。
私はファンクラブにすら入れなかった。
ファンクラブの会員規則に自転車競技部のマネージャーはやってはならないと書いてあるなんて知らなかったのだ。知っていたらマネはやらなかったかもしれない。
いや、きっとやっただろう。箱根の山はあの人のものだ。私は入学前から、あの人の山を登る後ろ姿の虜になった。
美しい。
そんな言葉がぴったりだ。姿勢は正しくぴんと伸びて、一瞬にして目の前から消えた。
私は少しでもあなたの支えになりたい、箱根の山神。どうか側で応援することを許して欲しい。
「名字名前さんではないか!どうだ!マネージャーの業務には慣れたか!」
「は、はい、おかげさまで。まだまだ失敗ばかりですけど、頑張ります」
「ワッハッハ!気にすることはないさ!名字名前さんが一生懸命やってくれていることはわかっているぞ!これからも頼りにしているぞ!」
「は、はい!」
東堂尽八。我が箱根学園が誇る自転車競技部のエースクライマーだ。
ファンクラブがあるほどの人気者。
練習後の疲れもあるだろうに、そんな中、一年の数人いるマネージャーのひとりである私のことも気にかけてくれる優しい人。
「そういえばな荒北、聞いてくれるか!この前巻ちゃんと話したのだがな!なんと巻ちゃんは春だというのにもう夏バテのようなのだ!春だというのに!花粉症ではなく夏バテだぞ、わかるか荒北」
「そうかヨ」
「聞いておるのか荒北!大変な話だぞ!今からそんなことでどうする!巻ちゃんにはこの夏のオレとの勝負、万全の状態で挑んでもらわんとな、おい、荒北どこへ行く!」
「ッセ!シャワー室混むだろーが、おめェも急げヨ!」
そうなのだ、東堂さんには「マキちゃん」なる想い人がいるらしい。
これはマネージャー同士でも話題になっているため、東堂さんのことはみんな諦めたようだ。
もとより箱学自転車部は部内恋愛禁止。好きになり目立つアピールをしてもだめだ。選手の士気を削ぐことになるからというのがその理由。
だけども自転車部には東堂さんをはじめ、新開さんや、二年の黒田さんなどモテる人が本当に多い。同級生の真波くんも人気がある。
なので一年の時にマネは何人か採るが、みな誰かを好きになり退部となってしまうのだ。
それは避けたい。
私はどうしてもすこしでも山神を応援したいのだ。力になりたい。
それに悲しいかな東堂さんには「マキちゃん」がいるのでこの想いは実らない。
だからずっとしまっておける。はず、だった────
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