社会人メロンパンズ(荒北 鳴子 )長編 完結
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宴会は無礼講でお酌など強要せずとアナウンスをして、食事がある程度進んだところで、準備しておいたイントロクイズや簡単なゲーム、会社内の内輪ネタ問題などでなごやかに盛り上げた。
司会進行を快く引き受けてくれた鳴子には幹事として感謝しかない。
慣れた様子で笑いをいれながら進めてくれる同期の彼を見た。
「私は鳴子くんに甘え過ぎかな……」
苦手なビールに口をつけると、目が合った赤い髪の男は器用にウインクしてくれた。
優勝者には某ネズミで有名なテーマパークのチケットをペアで用意してある。
「鳴子くんと行ったら楽しいだろうな。確か千葉の高校だったはずだし、詳しいのかも」
賑やかな宴会場に掻き消される呟き。
幹事と司会だから景品を手にすることはないけれど。
ああなんだかふわふわする。
名字は酔いがまわるのを自覚していた。幹事なのにこれではいけないと思うが、力が入らず机に突っ伏してしまう。
「鳴子くん……」
眠気と戦いながら意識を保とうとするが、抵抗むなしく視界は暗転し、声は遠くなっていく……。
夢を見ていた。
高校の制服を着た鳴子くんとネズミのカチューシャをつけて、パレードを見たり写真を撮ったり。アトラクションに並ぶ時間もたくさんお喋りして。
高校生の鳴子くんは今より赤い髪をツンツンに立てて。幼さのある顔は挑戦的でギラギラしている。
夢なのはわかっていた。
名字は高校生の鳴子章吉を見たことがあった。
必死にひたむきに、まっすぐゴールを目指して駆け上がる黄色いジャージは、あれは…………
「鳴子くん……?」
誰かの気配。ここはどこだろう。名字は瞼をゆっくりと開ける。
畳に寝かされ、頭の下には座布団があった。
少し離れた場所からこちらを見ていた人物を捉える。
大好きで憧れて。隣に並びたいとか恐れ多くて。でもそれでも少しでも近づきたかった。
近所の公園のグラウンドで中学生が野球をしていた。塾の帰りに見ていた。ピッチングが荒々しくもキレイでかっこよくて。
それははじめての淡い気持ち。
高校が一緒だったのは偶然。友達に誘われて見学に行った自転車競技部でその人を見つけた。
以前より粗野な印象を受けたけど本質は変わらない。キレイでかっこいい。
その日から自転車が好きになった。野球を見るのが好きだと思っていたけど。それもこの人がきっかけだったのかもしれない。
「荒北さん……」
憧れたその名を口にすると、呼ばれた男は眉を吊り上げ、歪に笑う。
「名字チャン、なんの夢みてた」
ああ、これは。ふわふわと定まらなかった気持ちへの罰なのだろうか。
名字は身体を起こし、荒北に向き合った。
司会進行を快く引き受けてくれた鳴子には幹事として感謝しかない。
慣れた様子で笑いをいれながら進めてくれる同期の彼を見た。
「私は鳴子くんに甘え過ぎかな……」
苦手なビールに口をつけると、目が合った赤い髪の男は器用にウインクしてくれた。
優勝者には某ネズミで有名なテーマパークのチケットをペアで用意してある。
「鳴子くんと行ったら楽しいだろうな。確か千葉の高校だったはずだし、詳しいのかも」
賑やかな宴会場に掻き消される呟き。
幹事と司会だから景品を手にすることはないけれど。
ああなんだかふわふわする。
名字は酔いがまわるのを自覚していた。幹事なのにこれではいけないと思うが、力が入らず机に突っ伏してしまう。
「鳴子くん……」
眠気と戦いながら意識を保とうとするが、抵抗むなしく視界は暗転し、声は遠くなっていく……。
夢を見ていた。
高校の制服を着た鳴子くんとネズミのカチューシャをつけて、パレードを見たり写真を撮ったり。アトラクションに並ぶ時間もたくさんお喋りして。
高校生の鳴子くんは今より赤い髪をツンツンに立てて。幼さのある顔は挑戦的でギラギラしている。
夢なのはわかっていた。
名字は高校生の鳴子章吉を見たことがあった。
必死にひたむきに、まっすぐゴールを目指して駆け上がる黄色いジャージは、あれは…………
「鳴子くん……?」
誰かの気配。ここはどこだろう。名字は瞼をゆっくりと開ける。
畳に寝かされ、頭の下には座布団があった。
少し離れた場所からこちらを見ていた人物を捉える。
大好きで憧れて。隣に並びたいとか恐れ多くて。でもそれでも少しでも近づきたかった。
近所の公園のグラウンドで中学生が野球をしていた。塾の帰りに見ていた。ピッチングが荒々しくもキレイでかっこよくて。
それははじめての淡い気持ち。
高校が一緒だったのは偶然。友達に誘われて見学に行った自転車競技部でその人を見つけた。
以前より粗野な印象を受けたけど本質は変わらない。キレイでかっこいい。
その日から自転車が好きになった。野球を見るのが好きだと思っていたけど。それもこの人がきっかけだったのかもしれない。
「荒北さん……」
憧れたその名を口にすると、呼ばれた男は眉を吊り上げ、歪に笑う。
「名字チャン、なんの夢みてた」
ああ、これは。ふわふわと定まらなかった気持ちへの罰なのだろうか。
名字は身体を起こし、荒北に向き合った。