社会人メロンパンズ(荒北 鳴子 )長編 完結
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「皆さま本日は社員旅行にご参加いただきありがとうございます。今回の旅行で幹事を務めております名字です」
社員旅行は希望者のみなので参加していない者も多い。現に荒北も今回初参加である。
「ビールやチューハイの他ソフトドリンクもご用意しておりますので、どうぞリラックスしなが道中お楽しみ下さい」
挨拶を早々に終えて、名字はドリンクを配る。大型バスを数台手配しての社員旅行。なかなかに大変であっただろう。
席順も名字が決めた。荒北と鳴子は隣同士であった。
「荒北さんはベプシでいいですか」
「オウ」
「鳴子くんは?お酒のむ?」
「酒飲んだらトイレ近くなるし遠慮しとくわー、ワイもベプシで」
「めずらしいね」
「そか?ワイも炭酸好きやで」
ニコニコしなら他の席にドリンクを配りに行ってしまう。
「ホントよくやるよな、アイツ」
プシッと炭酸のキャップを捻る。荒北は久々に彼女と言葉を交わした。
「荒北さん、最近名前ちゃんのこと避けてません?まあワイには好都合ですけど」
「ハッ、嫌いじゃねーけどそこまで追ってねえョ、鳴子の好きにすりゃあいい」
鳴子はしばらく名字さん、と呼んでいたはずだ。荒北はそんな些細な変化も気付いてしまう程度には彼女にまだ興味があるらしい。
しかし深入りはしないと決めたのだ。アイツも東堂のファンだ。泊まり先だって東堂庵だ。荒北は旅のしおりを眺めた。
「アカンすよね、これ」
「なにがだよ」
「言いませんけど」
「ッセ、なら黙ってろヨ」
興味なさそうに荒北は窓を見た。
高速道路に入る。名字もしっかりと着席してシートベルトをしていた。
箱根に着いたら箱根スカイラインを通り芦ノ湖と富士山を眺める。
熱い夏の記憶。
決して戻れない。戻りたくはない。全力でペダルを漕いで、誰よりも速くと願って、散ったあの夏。
「鳴子」
「なんすか」
「東堂からチャリ借りて走るか」
「ほんまっすか!」
「バァカ、喜び過ぎだろ、日程的に無理だろうな」
「そら荒北さんと走れるなら喜びますよ!ワイは今もチーム入ってるから負けませんけどね」
ぱしんと自らの太腿を叩く鳴子。現在も社会人チームで走る鳴子の脚は立派で、既存のスーツではウエストにサイズを合わせると足が入らないのでオーダースーツでお金が掛かるらしい。
「負けねェよ、箱根の地は、オレたちのホームだ」
箱根を越え、チームの思いを乗せた小野田が富士の山を制した。あの夏の記憶を鮮やかに鳴子も思い出していた。
社員旅行は希望者のみなので参加していない者も多い。現に荒北も今回初参加である。
「ビールやチューハイの他ソフトドリンクもご用意しておりますので、どうぞリラックスしなが道中お楽しみ下さい」
挨拶を早々に終えて、名字はドリンクを配る。大型バスを数台手配しての社員旅行。なかなかに大変であっただろう。
席順も名字が決めた。荒北と鳴子は隣同士であった。
「荒北さんはベプシでいいですか」
「オウ」
「鳴子くんは?お酒のむ?」
「酒飲んだらトイレ近くなるし遠慮しとくわー、ワイもベプシで」
「めずらしいね」
「そか?ワイも炭酸好きやで」
ニコニコしなら他の席にドリンクを配りに行ってしまう。
「ホントよくやるよな、アイツ」
プシッと炭酸のキャップを捻る。荒北は久々に彼女と言葉を交わした。
「荒北さん、最近名前ちゃんのこと避けてません?まあワイには好都合ですけど」
「ハッ、嫌いじゃねーけどそこまで追ってねえョ、鳴子の好きにすりゃあいい」
鳴子はしばらく名字さん、と呼んでいたはずだ。荒北はそんな些細な変化も気付いてしまう程度には彼女にまだ興味があるらしい。
しかし深入りはしないと決めたのだ。アイツも東堂のファンだ。泊まり先だって東堂庵だ。荒北は旅のしおりを眺めた。
「アカンすよね、これ」
「なにがだよ」
「言いませんけど」
「ッセ、なら黙ってろヨ」
興味なさそうに荒北は窓を見た。
高速道路に入る。名字もしっかりと着席してシートベルトをしていた。
箱根に着いたら箱根スカイラインを通り芦ノ湖と富士山を眺める。
熱い夏の記憶。
決して戻れない。戻りたくはない。全力でペダルを漕いで、誰よりも速くと願って、散ったあの夏。
「鳴子」
「なんすか」
「東堂からチャリ借りて走るか」
「ほんまっすか!」
「バァカ、喜び過ぎだろ、日程的に無理だろうな」
「そら荒北さんと走れるなら喜びますよ!ワイは今もチーム入ってるから負けませんけどね」
ぱしんと自らの太腿を叩く鳴子。現在も社会人チームで走る鳴子の脚は立派で、既存のスーツではウエストにサイズを合わせると足が入らないのでオーダースーツでお金が掛かるらしい。
「負けねェよ、箱根の地は、オレたちのホームだ」
箱根を越え、チームの思いを乗せた小野田が富士の山を制した。あの夏の記憶を鮮やかに鳴子も思い出していた。