短編
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年上の彼女 その2(録嗚未)
「あの子、最近いいですねェ」
「ハッ。録嗚未ですか。そうですね、力も素早さも申し分ないです。直情的ですが、今いる新人の中でも頭一つ抜き出ています」
「そのうち私が手合わせしてみましょうか」
「ハッ、了解しました」
兵達の鍛錬を見ながら話す王騎と騰、二人の後ろで控えていた沙月は、その言葉を聞いて密かに興奮していた。
(ふっふっふ…やったね録嗚未~!殿と騰様に褒められてるよ!今すぐ教えてあげたいなぁ)
「――鼻息が五月蠅いぞ、沙月」
「ふぁっ?!」
振り向き様に上官である騰に突っ込まれる。
「コココココ。そういえば彼は貴女の恋人でしたか。まさか貴女が決まった相手を作るとは…」
王騎は感慨深そうに言葉を続ける。
「思い返すと、沙月は今まで数々の兵に告白されては即お断りして。沢山の男達を泣かせてきた罪な女でしたねぇ、騰」
「ハッ。沙月は黙っていればそれなりですので、大抵の新兵はすぐ騙されます」
「あのう騰様?!それなりってどういう意味でしょうか!」
「おや、私は褒めているんだが……」
「褒められた気がしませんよ!それに騙されるって――」
「私は事実を言ったまでだ」
「だからって、録嗚未は騙されていませんからね!」
「こちらも相変わらず仲が宜しいですねェ。…うん?」
わいわいとじゃれ合いをしている騰と沙月をじっと睨み付ける録嗚未の視線に気づいた王騎は、彼に向って微笑んだ。
(――早く貴方の真価を見せて下さい。弱い男に大事な沙月を任せられませんからねェ?)
王騎に気づいた録嗚未は、かぁっと顔を赤くすると慌てて鍛錬に戻っていった。
*
その夜。お酒とつまみを片手に録嗚未が沙月の部屋へと訪れた。
風呂に入った後らしく、濡れ髪のままだ。
「おう。お疲れ」
「お疲れ様~!入って入って」
ちらっと顔を見ると、眉間に深いしわが刻まれている。
(あ、絶対これやきもち焼いてる顔だわ。また喧嘩になっちゃったら嫌だな)
沙月は今日の鍛錬中に騰とはしゃいでしまった事を思い出した。
(あれは皆の前でまずかったかな。でも会話内容までは聞こえていないはずだし……)
「あのぅ。録嗚未さん…?」
無言で椅子に腰を下ろすと、ん。と沙月に盃を渡す。
「まずは飲もうぜ」
「おー!頂きます!」
録嗚未はぐいっと酒を一気に飲み干し、隣に座っている彼女をギロリと睨んだ。
「…で、今日の鍛錬の時なんだが」
(き、来たっ!)
また文句を言われると思い、沙月は身構えた。
「――殿、ずっと俺の事見てなかったか?今日鍛錬も模擬戦もかなり頑張ったんだ!なぁ、なんか言ってたか?絶対言ってたよな?!だって俺の方見て微笑んでたんだぜ?」
(そっちかぁぁぁぁい!!)
心の中で盛大に突っ込むと、目をぎらつかせている…もとい、キラキラさせている録嗚未にデコピンをした。
「いでっ!」
「落ち着いてよ!――殿も騰様も、あんたの事すごく褒めてたよ。今いる新人の中でも特にすごいって」
「っしゃ~!!やったぜ!!ほらどんどん飲め」
「ちょっと!こぼれるってば」
そう、彼は自分の髭の形を真似るほど、王騎大好きっ子なのだ。
「あ、そうだ。殿が今度手合わせしてみるって言ってたよ。張り切って自主練習しないとね」
「うおおおおお!燃えてきたぁぁぁ!」
がたん!と椅子から勢いよく立ち上がると拳を突き上げる。
(まぁ子供みたいに喜んじゃって……)
惚れた欲目というもので、何をやっても可愛く見えてしまう。
「俺も早く殿と共に戦に出たいぜ……ぶえっくしょい!!」
「ほらもう髪の毛濡れたままで来るから」
「早くお前の所に行きたくてな!急いで支度して来た」
そう言ってにかっと笑う顔が眩しい。
いつも裏表なく、真っすぐに感情をぶつけてくる彼に、沙月は気が付くとすっかりやられてしまったのだ。
照れ隠しに録嗚未の後ろへ回り、雑に結ってある髪をするりとほどく。
「風邪ひいちゃうよ。乾かしてあげるから大人しくしてなさい」
「……おう」
乾いた布で優しく叩きながら水分を取ってやる。
櫛でよく梳かし、自分の愛用の香油を毛先につけて丁寧に揉みこんでいく。
「……あ~…お前と同じ匂いがする」
録嗚未は気持ちよさげに酒をあおりながら、されるがままだ。
「いい香りでしょ。この香油、お肌に付けてもいいんだよ」
そう言いながらするっとうなじから鎖骨、肩周りを撫でると、録嗚未の体がびくっと固まった。
戦に出て武功を上げるまで、最後まで体を重ねるのはおあずけ!という二人の間の約束があるので、録嗚未はあまり積極的に沙月に触れてこない。
それが沙月にはおもしろくない。
(健全なお付き合いだって、少々の触れあいがあってもいいはずだよね。だって私たち、恋人同士なんだから)
「ねぇ……殿に褒められたご褒美あげようか?」
そう吐息まじりに耳元で囁くと、益々録嗚未の体は固まった。
黙っているのを良いことに、沙月はどんどん調子に乗っていく。
録嗚未の膝の上に向かい合って座ると、首元に腕をからめて顔を近づけ熱い口づけを――
「――んぶっ!」
思いっきり手のひらで阻止された。
「だぁぁぁーっ!!誘惑するな!!」
「ちょっとくらいいいでしょ~。別に減るもんじゃないし」
録嗚未は深い溜息をつくと、がしっと沙月の肩に手を置く。
「いいか。俺はお前を抱くのを我慢して鍛錬してるお陰で、殿の目に留まるようになったんだ!あと一息で!!正々堂々とお前を抱けるんだから!!沙月も我慢しろ!!」
「ぎゃ~馬鹿!ちょっと声が大きい!」
酔いと興奮のせいか、めちゃくちゃ大きな声で恥ずかしい宣言をする録嗚未。
いくらここが個室といえども窓だって開いているし、大きな声を出せばもちろん周りに聞こえてしまう。
青ざめて録嗚未の口を塞ごうとするも、力強く肩を掴まれていて動きが取れない。
「沙月すまん!!まだお前を抱けないが、愛してるぞ!!!」
「だから声がでかいんだよ~~!!!(泣)」
録嗚未の叫びは、城中に響き渡った。
「すみません殿。阿呆な部下とその恋人を黙らせてきます」
「まぁまぁいいじゃありませんか。若いっていいですねェ」
しっかりと王騎と騰の耳にも入っており。
「まーだ何にもやってないのかあいつら(笑)」
「沙月、可哀そうに……」
鱗坊と干央の耳にも入り。
兵士達や使用人達の耳にももちろん入り。
次の日には、会う人会う人に生暖かい笑顔を向けられ、「がんばれよ!」と応援される沙月と録嗚未であった。
おわり。
おかしいな、最初はいちゃいちゃさせようと思ったのに…?
「あの子、最近いいですねェ」
「ハッ。録嗚未ですか。そうですね、力も素早さも申し分ないです。直情的ですが、今いる新人の中でも頭一つ抜き出ています」
「そのうち私が手合わせしてみましょうか」
「ハッ、了解しました」
兵達の鍛錬を見ながら話す王騎と騰、二人の後ろで控えていた沙月は、その言葉を聞いて密かに興奮していた。
(ふっふっふ…やったね録嗚未~!殿と騰様に褒められてるよ!今すぐ教えてあげたいなぁ)
「――鼻息が五月蠅いぞ、沙月」
「ふぁっ?!」
振り向き様に上官である騰に突っ込まれる。
「コココココ。そういえば彼は貴女の恋人でしたか。まさか貴女が決まった相手を作るとは…」
王騎は感慨深そうに言葉を続ける。
「思い返すと、沙月は今まで数々の兵に告白されては即お断りして。沢山の男達を泣かせてきた罪な女でしたねぇ、騰」
「ハッ。沙月は黙っていればそれなりですので、大抵の新兵はすぐ騙されます」
「あのう騰様?!それなりってどういう意味でしょうか!」
「おや、私は褒めているんだが……」
「褒められた気がしませんよ!それに騙されるって――」
「私は事実を言ったまでだ」
「だからって、録嗚未は騙されていませんからね!」
「こちらも相変わらず仲が宜しいですねェ。…うん?」
わいわいとじゃれ合いをしている騰と沙月をじっと睨み付ける録嗚未の視線に気づいた王騎は、彼に向って微笑んだ。
(――早く貴方の真価を見せて下さい。弱い男に大事な沙月を任せられませんからねェ?)
王騎に気づいた録嗚未は、かぁっと顔を赤くすると慌てて鍛錬に戻っていった。
*
その夜。お酒とつまみを片手に録嗚未が沙月の部屋へと訪れた。
風呂に入った後らしく、濡れ髪のままだ。
「おう。お疲れ」
「お疲れ様~!入って入って」
ちらっと顔を見ると、眉間に深いしわが刻まれている。
(あ、絶対これやきもち焼いてる顔だわ。また喧嘩になっちゃったら嫌だな)
沙月は今日の鍛錬中に騰とはしゃいでしまった事を思い出した。
(あれは皆の前でまずかったかな。でも会話内容までは聞こえていないはずだし……)
「あのぅ。録嗚未さん…?」
無言で椅子に腰を下ろすと、ん。と沙月に盃を渡す。
「まずは飲もうぜ」
「おー!頂きます!」
録嗚未はぐいっと酒を一気に飲み干し、隣に座っている彼女をギロリと睨んだ。
「…で、今日の鍛錬の時なんだが」
(き、来たっ!)
また文句を言われると思い、沙月は身構えた。
「――殿、ずっと俺の事見てなかったか?今日鍛錬も模擬戦もかなり頑張ったんだ!なぁ、なんか言ってたか?絶対言ってたよな?!だって俺の方見て微笑んでたんだぜ?」
(そっちかぁぁぁぁい!!)
心の中で盛大に突っ込むと、目をぎらつかせている…もとい、キラキラさせている録嗚未にデコピンをした。
「いでっ!」
「落ち着いてよ!――殿も騰様も、あんたの事すごく褒めてたよ。今いる新人の中でも特にすごいって」
「っしゃ~!!やったぜ!!ほらどんどん飲め」
「ちょっと!こぼれるってば」
そう、彼は自分の髭の形を真似るほど、王騎大好きっ子なのだ。
「あ、そうだ。殿が今度手合わせしてみるって言ってたよ。張り切って自主練習しないとね」
「うおおおおお!燃えてきたぁぁぁ!」
がたん!と椅子から勢いよく立ち上がると拳を突き上げる。
(まぁ子供みたいに喜んじゃって……)
惚れた欲目というもので、何をやっても可愛く見えてしまう。
「俺も早く殿と共に戦に出たいぜ……ぶえっくしょい!!」
「ほらもう髪の毛濡れたままで来るから」
「早くお前の所に行きたくてな!急いで支度して来た」
そう言ってにかっと笑う顔が眩しい。
いつも裏表なく、真っすぐに感情をぶつけてくる彼に、沙月は気が付くとすっかりやられてしまったのだ。
照れ隠しに録嗚未の後ろへ回り、雑に結ってある髪をするりとほどく。
「風邪ひいちゃうよ。乾かしてあげるから大人しくしてなさい」
「……おう」
乾いた布で優しく叩きながら水分を取ってやる。
櫛でよく梳かし、自分の愛用の香油を毛先につけて丁寧に揉みこんでいく。
「……あ~…お前と同じ匂いがする」
録嗚未は気持ちよさげに酒をあおりながら、されるがままだ。
「いい香りでしょ。この香油、お肌に付けてもいいんだよ」
そう言いながらするっとうなじから鎖骨、肩周りを撫でると、録嗚未の体がびくっと固まった。
戦に出て武功を上げるまで、最後まで体を重ねるのはおあずけ!という二人の間の約束があるので、録嗚未はあまり積極的に沙月に触れてこない。
それが沙月にはおもしろくない。
(健全なお付き合いだって、少々の触れあいがあってもいいはずだよね。だって私たち、恋人同士なんだから)
「ねぇ……殿に褒められたご褒美あげようか?」
そう吐息まじりに耳元で囁くと、益々録嗚未の体は固まった。
黙っているのを良いことに、沙月はどんどん調子に乗っていく。
録嗚未の膝の上に向かい合って座ると、首元に腕をからめて顔を近づけ熱い口づけを――
「――んぶっ!」
思いっきり手のひらで阻止された。
「だぁぁぁーっ!!誘惑するな!!」
「ちょっとくらいいいでしょ~。別に減るもんじゃないし」
録嗚未は深い溜息をつくと、がしっと沙月の肩に手を置く。
「いいか。俺はお前を抱くのを我慢して鍛錬してるお陰で、殿の目に留まるようになったんだ!あと一息で!!正々堂々とお前を抱けるんだから!!沙月も我慢しろ!!」
「ぎゃ~馬鹿!ちょっと声が大きい!」
酔いと興奮のせいか、めちゃくちゃ大きな声で恥ずかしい宣言をする録嗚未。
いくらここが個室といえども窓だって開いているし、大きな声を出せばもちろん周りに聞こえてしまう。
青ざめて録嗚未の口を塞ごうとするも、力強く肩を掴まれていて動きが取れない。
「沙月すまん!!まだお前を抱けないが、愛してるぞ!!!」
「だから声がでかいんだよ~~!!!(泣)」
録嗚未の叫びは、城中に響き渡った。
「すみません殿。阿呆な部下とその恋人を黙らせてきます」
「まぁまぁいいじゃありませんか。若いっていいですねェ」
しっかりと王騎と騰の耳にも入っており。
「まーだ何にもやってないのかあいつら(笑)」
「沙月、可哀そうに……」
鱗坊と干央の耳にも入り。
兵士達や使用人達の耳にももちろん入り。
次の日には、会う人会う人に生暖かい笑顔を向けられ、「がんばれよ!」と応援される沙月と録嗚未であった。
おわり。
おかしいな、最初はいちゃいちゃさせようと思ったのに…?