短編
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年上の彼女(録嗚未)
「だから違うって言ってるじゃない!録嗚未の馬鹿っ!!」
「おい…待てよ!!」
「あ~、今日もやっちまった…」
走り去る彼女を追いかけようとしたが、後ろから腕を捕まれてつんのめる。
「だぁっ!何すんだ離せ」
「追っかけてってどうすんだ?また喧嘩するだけだろうが」
「お前ら毎日喧嘩して疲れないのか」
腕を掴んでいたのは鱗坊。隣には干央があきれ顔で立っていた。
確かにそうだ。最近アイツとは喧嘩ばかりしている。
録嗚未よりいくつか年上の彼女―― 沙月は、王騎軍副官である騰の部下である。
彼女に一目ぼれをした録嗚未は、あの手この手で求愛し、つい先日見事に恋人同士となったばかりなのであるが…
最近何故か一緒にいると喧嘩になってしまうのだ。
「別に…俺だって喧嘩したくてしてるわけじゃねえよ…」
少しばつが悪くなり、録嗚未はしゅんと項垂れた。
珍しく大人しい弟分の姿に少し驚いた鱗坊と干央、顔を見合わせニヤリと笑うと、
「先輩たちが相談に乗ってやろう。飲みに行くぞ!」
と、落ち込む録嗚未を引きずって城下街へと繰り出して行った。
*
「――で、今日の喧嘩のネタは何だ」
仏頂面の録嗚未に酒を注いでやりながら鱗坊は話を切り出した。
「… 沙月がさっきも騰と二人で何か楽しそうに話してたからよぉ…」
ぐびっと酒を一息で飲むと、ん。と盃を差し出す。
「まぁ沙月は騰様の部下だし、細かい用件などを相談する事もあるだろうよ」
干央は苦笑いしならがら酒を注いでやる。
「違うんだよ!騰と沙月が話してる時は、お前らといるような感じじゃなくて、なんていうか、親密な空気があって!――悔しいけどお似合いっていうか…。で、何話してたんだって聞いたら何で話の内容をアンタに言わなきゃいけないんだって言われて、俺に言えねえってことは何かあるんだろうって思って…」
「あーあーわかったわかった。その情景が浮かぶわ」
確かに騰は沙月の事を気に入っている。
そして、同じように録嗚未の事も気に入っている。
沙月を妹のように可愛がっている反面、意味ありげにそれを見せつけては録嗚未をからかっている部分もあるのではないかと、鱗坊達は推測している。
まぁ、恋人の録嗚未からするとそれが面白くないとは思うが。
「沙月が違うと言ってるんだろう。お前も恋人ならどんと構えてやれば良いではないか、小さい奴め。こんな男所帯でいちいちそんな事を言われたら、あの子だって嫌になってしまうぞ」
「うっ…小さい…」
刺さった。録嗚未は机に突っ伏した。
「そうだぞ。俺たちの可愛い可愛い沙月をお前みたいな小僧が独り占めしてるんだ。クソが。もっと自信持ったらどうだ?」
「今クソって言ったよな?」
「ふむ…もしかして根本的にお前は沙月と合わないのではないか?一度離れてみたらどうだ」
干央のその言葉に目をカッと見開いた録嗚未は、バァン!と机を思いきり叩いた。
机の上のつまみが皿ごと舞う。酒は鱗坊が慌てて確保した。
「嫌だ!俺はアイツの事が好きだ。俺にとって最高の女なんだ。ようやく想いが通じたのに離れたくねえ!…本当に馬鹿だ俺は…。俺は…絶対沙月を手放さねえぞ!!」
「…おい録嗚未、入り口見ろ」
笑いを堪えながら鱗坊が後ろを指さす。
「あぁ?」
突然の怒号にしーんと静まり返った店内を見渡し、言われた通りに入口を振り返ると。
そこには顔を真っ赤にした沙月が立っていた。
*
ざわめきが戻った店内では、録嗚未と沙月、通路を挟んで隣の机に鱗坊と干央が座っていた。
(何故だ…こういう場合普通2人きりにしてくれるんじゃねえのか…?)
どうやらこの先輩達、飲みながら事の顛末を見届ける気らしい。
少し怒っているような顔でうつ向いている彼女を見て、意を決して口を開いた。
「あー。さっきの聞こえた…よな?」
「うん」
沈黙。居たたまれない空気に耐え切れない。まだ怒っているのだろうか。
「…よくここに居るのがわかったな」
「騰様がきっとここに居るって教えてくれた」
「と…っ!!…んんっ。そうかよ」
(おお、騰様の名前が出たのに耐えた!)
(あいつも少しは反省しているようだな…)
ひそひそと隣の机からの声が聞こえる。反省?滅茶苦茶してるに決まってるだろう。
余計な事言うな!とギロリと隣を睨んでいると、沙月が話し出す。
「あのね、録嗚未。毎回言っているとおり、騰様とはあんたが心配するような事は何もないの。でも私の尊敬している方だし、上司だし、何かと二人で話す機会が多いのは事実だよ。だからそれで毎回突っかかって来られると腹が立つ」
「…分かってる。俺すぐかっとなっちまって…お前の事、怒らせたいわけじゃねえんだ。
お前年上だし、綺麗だし、強いし、頭もいいからさ。他の誰かに取られるんじゃないかってすげえ不安になる…」
常に物怖じせずに、誰に対しても堂々としている録嗚未が、自分のせいで落ち込んでいる。
(うわぁ~!しょげてる録嗚未かわいいっ…!)
ここが店じゃなければ飛びついているところだ。
最初は生意気な弟みたいに思っていたのに、彼を知るほどにどんどん惹かれていって…
「ね、録嗚未」
沙月はぐいっと向いに座る録嗚未の顔に近づくと「私だって、負けないくらいあんたのこと大好きだよ」と囁いた。
「おい、近いっ…!!」
「私のこと、もっと信じてくれる?」
至近距離で見つめられて、頷くしかできない。
あぁ、完敗だ。すげえ好きだ。やっぱり俺の彼女は最高だ。
湯気が出そうなくらい真っ赤になってしまった録嗚未を愛おしそうに見つめる彼女を見て、隣の席では面白くなさそうな男が二人。
「ちぇっ、見せつけてくれるなぁ…結局仲直りか」
「喧嘩するほど仲が良いんだな、お前らは」
「えへへへ…でも、録嗚未の気持ちが聞けたから良かったです。鱗坊さん、干央さん、これからも録嗚未をよろしくお願いしますね」
「おう、任せろ。こいつに色々と夜の技をご指導しておいてやるから、実施を楽しみにしとけよ」
「う。おいっ!余計なこと言うな鱗坊!」
「…うふふふふ」
急にそわそわしだす二人を見て、干央はもしや?と気づいてしまった。
「なんだ、お前たちまだそこまで進んでないのか!」
「はぁ?なんだって?!」
図星だった。
意外な事に、二人はまだ口づけすらしていなかったのである。
大笑いする鱗坊と干央を尻目に、「行くぞ!」と沙月の手を取って店を飛び出した。
*
ゆっくりと、通りを手を繋いで歩く。
録嗚未はちらりと隣の彼女を見ると、こちらを見てニコニコしていた。
「あはっ、そういうのは録嗚未が武功を上げるまではおあずけしてます、って正直に言えば良かったね」
「…絶対アイツらにからかわれるからいい」
二人の間には決め事があった。
体を繋ぐのはまだ駆け出しの録嗚未が、戦場で武功を上げてからにする、と。
周りに女にうつつを抜かしていると思われたくないのと、多分一度沙月の味を知ってしまえば際限なく求めてしまうと思ったから。
その提案をした時彼女はびっくりしていたが、あんたらしいわと笑って受け入れてくれたのだ。
しかし。
「――ねぇ、本当に何もしたくないの?」
沙月に繋いだ指ですり…と指や手の甲をさすられると、段々と艶めかしい気持ちになってくる。
「っ馬鹿、したくない訳ないだろ。だからそういうのやめろ…我慢出来なくなる」
「…ふーん」
眉間に皺を寄せ、必死に刺激に耐える録嗚未の手を強く引き、路地裏へと引きずり込む。
「お前――っっ!?」
唇にチュッと柔らかい感触。
その後ペロリと舐められる。
「…私だって我慢してるんだよ。だからさ、早く武功あげてよね!」
そう言って悪戯っぽく笑う彼女にぼうっと見とれてしまうが、ねぇ聞いてる?と顔を覗き込まれ、はっと我に返った。
「あ、当たり前だ!!次の戦で必ず武功上げて、お前をいやってほど抱くからな!覚悟しとけよ!」
「ふふふ。期待してる~」
また手を繋ぐと、城への道を歩き出す。
しばらくはこの彼女に翻弄される予感しかない録嗚未だった。
おわり。
意外と書いていて楽しかったので、続くかもしれないです。初・使用人じゃないヒロイン!
「だから違うって言ってるじゃない!録嗚未の馬鹿っ!!」
「おい…待てよ!!」
「あ~、今日もやっちまった…」
走り去る彼女を追いかけようとしたが、後ろから腕を捕まれてつんのめる。
「だぁっ!何すんだ離せ」
「追っかけてってどうすんだ?また喧嘩するだけだろうが」
「お前ら毎日喧嘩して疲れないのか」
腕を掴んでいたのは鱗坊。隣には干央があきれ顔で立っていた。
確かにそうだ。最近アイツとは喧嘩ばかりしている。
録嗚未よりいくつか年上の彼女―― 沙月は、王騎軍副官である騰の部下である。
彼女に一目ぼれをした録嗚未は、あの手この手で求愛し、つい先日見事に恋人同士となったばかりなのであるが…
最近何故か一緒にいると喧嘩になってしまうのだ。
「別に…俺だって喧嘩したくてしてるわけじゃねえよ…」
少しばつが悪くなり、録嗚未はしゅんと項垂れた。
珍しく大人しい弟分の姿に少し驚いた鱗坊と干央、顔を見合わせニヤリと笑うと、
「先輩たちが相談に乗ってやろう。飲みに行くぞ!」
と、落ち込む録嗚未を引きずって城下街へと繰り出して行った。
*
「――で、今日の喧嘩のネタは何だ」
仏頂面の録嗚未に酒を注いでやりながら鱗坊は話を切り出した。
「… 沙月がさっきも騰と二人で何か楽しそうに話してたからよぉ…」
ぐびっと酒を一息で飲むと、ん。と盃を差し出す。
「まぁ沙月は騰様の部下だし、細かい用件などを相談する事もあるだろうよ」
干央は苦笑いしならがら酒を注いでやる。
「違うんだよ!騰と沙月が話してる時は、お前らといるような感じじゃなくて、なんていうか、親密な空気があって!――悔しいけどお似合いっていうか…。で、何話してたんだって聞いたら何で話の内容をアンタに言わなきゃいけないんだって言われて、俺に言えねえってことは何かあるんだろうって思って…」
「あーあーわかったわかった。その情景が浮かぶわ」
確かに騰は沙月の事を気に入っている。
そして、同じように録嗚未の事も気に入っている。
沙月を妹のように可愛がっている反面、意味ありげにそれを見せつけては録嗚未をからかっている部分もあるのではないかと、鱗坊達は推測している。
まぁ、恋人の録嗚未からするとそれが面白くないとは思うが。
「沙月が違うと言ってるんだろう。お前も恋人ならどんと構えてやれば良いではないか、小さい奴め。こんな男所帯でいちいちそんな事を言われたら、あの子だって嫌になってしまうぞ」
「うっ…小さい…」
刺さった。録嗚未は机に突っ伏した。
「そうだぞ。俺たちの可愛い可愛い沙月をお前みたいな小僧が独り占めしてるんだ。クソが。もっと自信持ったらどうだ?」
「今クソって言ったよな?」
「ふむ…もしかして根本的にお前は沙月と合わないのではないか?一度離れてみたらどうだ」
干央のその言葉に目をカッと見開いた録嗚未は、バァン!と机を思いきり叩いた。
机の上のつまみが皿ごと舞う。酒は鱗坊が慌てて確保した。
「嫌だ!俺はアイツの事が好きだ。俺にとって最高の女なんだ。ようやく想いが通じたのに離れたくねえ!…本当に馬鹿だ俺は…。俺は…絶対沙月を手放さねえぞ!!」
「…おい録嗚未、入り口見ろ」
笑いを堪えながら鱗坊が後ろを指さす。
「あぁ?」
突然の怒号にしーんと静まり返った店内を見渡し、言われた通りに入口を振り返ると。
そこには顔を真っ赤にした沙月が立っていた。
*
ざわめきが戻った店内では、録嗚未と沙月、通路を挟んで隣の机に鱗坊と干央が座っていた。
(何故だ…こういう場合普通2人きりにしてくれるんじゃねえのか…?)
どうやらこの先輩達、飲みながら事の顛末を見届ける気らしい。
少し怒っているような顔でうつ向いている彼女を見て、意を決して口を開いた。
「あー。さっきの聞こえた…よな?」
「うん」
沈黙。居たたまれない空気に耐え切れない。まだ怒っているのだろうか。
「…よくここに居るのがわかったな」
「騰様がきっとここに居るって教えてくれた」
「と…っ!!…んんっ。そうかよ」
(おお、騰様の名前が出たのに耐えた!)
(あいつも少しは反省しているようだな…)
ひそひそと隣の机からの声が聞こえる。反省?滅茶苦茶してるに決まってるだろう。
余計な事言うな!とギロリと隣を睨んでいると、沙月が話し出す。
「あのね、録嗚未。毎回言っているとおり、騰様とはあんたが心配するような事は何もないの。でも私の尊敬している方だし、上司だし、何かと二人で話す機会が多いのは事実だよ。だからそれで毎回突っかかって来られると腹が立つ」
「…分かってる。俺すぐかっとなっちまって…お前の事、怒らせたいわけじゃねえんだ。
お前年上だし、綺麗だし、強いし、頭もいいからさ。他の誰かに取られるんじゃないかってすげえ不安になる…」
常に物怖じせずに、誰に対しても堂々としている録嗚未が、自分のせいで落ち込んでいる。
(うわぁ~!しょげてる録嗚未かわいいっ…!)
ここが店じゃなければ飛びついているところだ。
最初は生意気な弟みたいに思っていたのに、彼を知るほどにどんどん惹かれていって…
「ね、録嗚未」
沙月はぐいっと向いに座る録嗚未の顔に近づくと「私だって、負けないくらいあんたのこと大好きだよ」と囁いた。
「おい、近いっ…!!」
「私のこと、もっと信じてくれる?」
至近距離で見つめられて、頷くしかできない。
あぁ、完敗だ。すげえ好きだ。やっぱり俺の彼女は最高だ。
湯気が出そうなくらい真っ赤になってしまった録嗚未を愛おしそうに見つめる彼女を見て、隣の席では面白くなさそうな男が二人。
「ちぇっ、見せつけてくれるなぁ…結局仲直りか」
「喧嘩するほど仲が良いんだな、お前らは」
「えへへへ…でも、録嗚未の気持ちが聞けたから良かったです。鱗坊さん、干央さん、これからも録嗚未をよろしくお願いしますね」
「おう、任せろ。こいつに色々と夜の技をご指導しておいてやるから、実施を楽しみにしとけよ」
「う。おいっ!余計なこと言うな鱗坊!」
「…うふふふふ」
急にそわそわしだす二人を見て、干央はもしや?と気づいてしまった。
「なんだ、お前たちまだそこまで進んでないのか!」
「はぁ?なんだって?!」
図星だった。
意外な事に、二人はまだ口づけすらしていなかったのである。
大笑いする鱗坊と干央を尻目に、「行くぞ!」と沙月の手を取って店を飛び出した。
*
ゆっくりと、通りを手を繋いで歩く。
録嗚未はちらりと隣の彼女を見ると、こちらを見てニコニコしていた。
「あはっ、そういうのは録嗚未が武功を上げるまではおあずけしてます、って正直に言えば良かったね」
「…絶対アイツらにからかわれるからいい」
二人の間には決め事があった。
体を繋ぐのはまだ駆け出しの録嗚未が、戦場で武功を上げてからにする、と。
周りに女にうつつを抜かしていると思われたくないのと、多分一度沙月の味を知ってしまえば際限なく求めてしまうと思ったから。
その提案をした時彼女はびっくりしていたが、あんたらしいわと笑って受け入れてくれたのだ。
しかし。
「――ねぇ、本当に何もしたくないの?」
沙月に繋いだ指ですり…と指や手の甲をさすられると、段々と艶めかしい気持ちになってくる。
「っ馬鹿、したくない訳ないだろ。だからそういうのやめろ…我慢出来なくなる」
「…ふーん」
眉間に皺を寄せ、必死に刺激に耐える録嗚未の手を強く引き、路地裏へと引きずり込む。
「お前――っっ!?」
唇にチュッと柔らかい感触。
その後ペロリと舐められる。
「…私だって我慢してるんだよ。だからさ、早く武功あげてよね!」
そう言って悪戯っぽく笑う彼女にぼうっと見とれてしまうが、ねぇ聞いてる?と顔を覗き込まれ、はっと我に返った。
「あ、当たり前だ!!次の戦で必ず武功上げて、お前をいやってほど抱くからな!覚悟しとけよ!」
「ふふふ。期待してる~」
また手を繋ぐと、城への道を歩き出す。
しばらくはこの彼女に翻弄される予感しかない録嗚未だった。
おわり。
意外と書いていて楽しかったので、続くかもしれないです。初・使用人じゃないヒロイン!