王騎軍新米使用人日記
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
5
まだ太陽が登る前のシンとした空気。
紺色の空が段々と白み始め、ゆるやかに朝が始まろうとしていた。
まだ薄暗い朝もやの中、木刀を携えて走る女性の姿があった。
ここしばらく遠征に行っており、昨夜遅くに帰城した摎である。
王騎には1日ゆっくり休みなさいとは言われたが、どうにも戦帰りは気が高ぶって目が冴えてしまい…仕方ないので素振りでもしようと鍛錬場へと走っていた。
遠くで馬のいななきが聞こえる。流石にこの時間に起きている人は少ない。
だが鍛錬場に近づくと、人の気配がした。
(もしかして王騎様、いるかな?)
早朝にたまに王騎が鍛錬しているのを知っているので、少し期待しながら扉を開くと、木刀を振る小柄な人影があった。
少し残念に思いながらも暫くその後ろ姿を見ていると、随分と兵士にしては華奢である。
自分がいない間に少年兵でも新しく入ったのだろうか?
「――おはよう!早いわね」
声をかけると、その人影はビクッ!と飛び上がり、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「お、おはようございます…すいません、勝手に使ってしまって…」
「いいじゃない、ここは城の者なら誰でも使っていいんだから・・・ん?」
息をきらしながらこちらへ近づいてきたのは、使用人の服を身にまとった見覚えのある女の子。
「はぁっ、はぁっ…あの、私最近こちらで働き始めました、隆国の妹の沙月と申します」
「やっと…」
「えっ?」
「やっと会えた!」
きらきらした目で沙月を見つめる。
思えば隆国から妹の話を聞き、ここで働くことを王騎に推薦したのは摎なのである。
その時から沙月に会うのを楽しみにしていたのだが、今日まで全く会う事がなかった。
「私は摎です。ここで王騎様の側近として戦ってるの」
「摎さま…」
摎という女性兵士がいると春姐さんに聞いてはいたけれど、働き始めてから全然姿が見えなかった(たまたま長期遠征中)ので、すっかりそのその存在を忘れていた沙月だったが、まさかこんなに美しい人だとは…
摎はぽーっとしている沙月の手をぎゅうと握ると、にっこりと微笑んだ。
「これからよろしくね。私達、いいお友達になれるかしら」
「は、はい、手が!!痛いです!!」
「きゃー!ごめんなさい!」
あまりの摎の握力に、つい心の声が出てしまう沙月だった。
*****************
「…で、何でこんな早朝に素振りしていたの?」
並んで素振りをしながら、摎は隣の沙月に尋ねた。
ぴたりと動きを止めた彼女は汗をぬぐって大きく息を吐きだした。
「私、農民出身なので基本は早寝早起きなんです。自然に目が覚めちゃって」
だんだん朝日が昇ってきて、2人の周囲を眩しく照らし始める。
沙月はふと考えるように太陽をじっと見つめて、言葉を続けた。
「…兄が軍人なので、解っているつもりだったんですけど。ここへ来て、皆さんが国の為に命がけで戦っていることや、血のにじむような鍛錬を毎日行っているのを目の当たりにすると…全然解ってなかったんだなぁって」
「そんな皆さんの為に、私にできる事って何なんだろう…いえ、勿論使用人としての仕事は当たり前なんですけど、何ていうか、もっと他にもあるのかなとずーっと考えてしまって…そうしたら昨夜は眠れなくて…とりあえず鍛えようと思って」
摎ははにかむように笑う沙月を見て、胸が熱くなった。
ここにいる奴らは皆、王騎に憧れて強さを求め、そして王騎の為に戦う者達の集まりだ。
ただそれだけだったのに、そんな風に思ってくれる存在が身近にいてくれる――それだけで力が湧いてくるような気がする。
(殿との約束の他にも戦う理由がまた一つ増えたな…私は絶対この子を守る!)
「ありがとう…その気持ちが嬉しい!よし、私はやるぞ!!」
「はい!私もです!」
おおー!と早朝の鍛錬場に、乙女2人の掛け声が響き渡る。
「…女の子2人が仲良くしているのって、いいなぁ…」
「あぁ…癒されるな…」
「戦になると摎は鬼だけどな…」
早朝鍛錬しようと足を運んだ兵たちは、なんとなく場内へ入り辛く、入口から微笑ましくその光景を見つめていた。
「皆さんおはようございます…どうしたんですか、中へ入らないんですかぁ?」
「どうやら先客のようですね」
王騎と騰の登場に兵達は拝手し、慌てて道を開けた。
そこには摎と沙月が仲良く鍛錬する姿。
屈託なく笑いあい、じゃれ合う様はまるで姉妹のようだった。
「…騰」
「ハッ。何やら邪魔のできないような尊さを感じます」
「今日は鍛錬はやめにして、皆で朝風呂にでも行きましょうかァ」
「いえ、私はこのまま見ていまs「――騰。」ハッ、お供いたします」
(――摎のあんな顔、久しぶりに見ましたね。あの子も戦場で剣を振るうばかりではなく、せめてここにいる時だけでも年頃の娘らしく過ごしてもらいたいものです…。)
おわり。
なんとしても騰を出さないと死ぬ病気…
まだ太陽が登る前のシンとした空気。
紺色の空が段々と白み始め、ゆるやかに朝が始まろうとしていた。
まだ薄暗い朝もやの中、木刀を携えて走る女性の姿があった。
ここしばらく遠征に行っており、昨夜遅くに帰城した摎である。
王騎には1日ゆっくり休みなさいとは言われたが、どうにも戦帰りは気が高ぶって目が冴えてしまい…仕方ないので素振りでもしようと鍛錬場へと走っていた。
遠くで馬のいななきが聞こえる。流石にこの時間に起きている人は少ない。
だが鍛錬場に近づくと、人の気配がした。
(もしかして王騎様、いるかな?)
早朝にたまに王騎が鍛錬しているのを知っているので、少し期待しながら扉を開くと、木刀を振る小柄な人影があった。
少し残念に思いながらも暫くその後ろ姿を見ていると、随分と兵士にしては華奢である。
自分がいない間に少年兵でも新しく入ったのだろうか?
「――おはよう!早いわね」
声をかけると、その人影はビクッ!と飛び上がり、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「お、おはようございます…すいません、勝手に使ってしまって…」
「いいじゃない、ここは城の者なら誰でも使っていいんだから・・・ん?」
息をきらしながらこちらへ近づいてきたのは、使用人の服を身にまとった見覚えのある女の子。
「はぁっ、はぁっ…あの、私最近こちらで働き始めました、隆国の妹の沙月と申します」
「やっと…」
「えっ?」
「やっと会えた!」
きらきらした目で沙月を見つめる。
思えば隆国から妹の話を聞き、ここで働くことを王騎に推薦したのは摎なのである。
その時から沙月に会うのを楽しみにしていたのだが、今日まで全く会う事がなかった。
「私は摎です。ここで王騎様の側近として戦ってるの」
「摎さま…」
摎という女性兵士がいると春姐さんに聞いてはいたけれど、働き始めてから全然姿が見えなかった(たまたま長期遠征中)ので、すっかりそのその存在を忘れていた沙月だったが、まさかこんなに美しい人だとは…
摎はぽーっとしている沙月の手をぎゅうと握ると、にっこりと微笑んだ。
「これからよろしくね。私達、いいお友達になれるかしら」
「は、はい、手が!!痛いです!!」
「きゃー!ごめんなさい!」
あまりの摎の握力に、つい心の声が出てしまう沙月だった。
*****************
「…で、何でこんな早朝に素振りしていたの?」
並んで素振りをしながら、摎は隣の沙月に尋ねた。
ぴたりと動きを止めた彼女は汗をぬぐって大きく息を吐きだした。
「私、農民出身なので基本は早寝早起きなんです。自然に目が覚めちゃって」
だんだん朝日が昇ってきて、2人の周囲を眩しく照らし始める。
沙月はふと考えるように太陽をじっと見つめて、言葉を続けた。
「…兄が軍人なので、解っているつもりだったんですけど。ここへ来て、皆さんが国の為に命がけで戦っていることや、血のにじむような鍛錬を毎日行っているのを目の当たりにすると…全然解ってなかったんだなぁって」
「そんな皆さんの為に、私にできる事って何なんだろう…いえ、勿論使用人としての仕事は当たり前なんですけど、何ていうか、もっと他にもあるのかなとずーっと考えてしまって…そうしたら昨夜は眠れなくて…とりあえず鍛えようと思って」
摎ははにかむように笑う沙月を見て、胸が熱くなった。
ここにいる奴らは皆、王騎に憧れて強さを求め、そして王騎の為に戦う者達の集まりだ。
ただそれだけだったのに、そんな風に思ってくれる存在が身近にいてくれる――それだけで力が湧いてくるような気がする。
(殿との約束の他にも戦う理由がまた一つ増えたな…私は絶対この子を守る!)
「ありがとう…その気持ちが嬉しい!よし、私はやるぞ!!」
「はい!私もです!」
おおー!と早朝の鍛錬場に、乙女2人の掛け声が響き渡る。
「…女の子2人が仲良くしているのって、いいなぁ…」
「あぁ…癒されるな…」
「戦になると摎は鬼だけどな…」
早朝鍛錬しようと足を運んだ兵たちは、なんとなく場内へ入り辛く、入口から微笑ましくその光景を見つめていた。
「皆さんおはようございます…どうしたんですか、中へ入らないんですかぁ?」
「どうやら先客のようですね」
王騎と騰の登場に兵達は拝手し、慌てて道を開けた。
そこには摎と沙月が仲良く鍛錬する姿。
屈託なく笑いあい、じゃれ合う様はまるで姉妹のようだった。
「…騰」
「ハッ。何やら邪魔のできないような尊さを感じます」
「今日は鍛錬はやめにして、皆で朝風呂にでも行きましょうかァ」
「いえ、私はこのまま見ていまs「――騰。」ハッ、お供いたします」
(――摎のあんな顔、久しぶりに見ましたね。あの子も戦場で剣を振るうばかりではなく、せめてここにいる時だけでも年頃の娘らしく過ごしてもらいたいものです…。)
おわり。
なんとしても騰を出さないと死ぬ病気…