短編
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やきもち(騰夢)
「はぁ…」
私は何度目かわからない溜息をついた。
「ほら沙月、料理ができたから宴会場に持っていって!あ、それはここに運んで」
使用人の先輩である春姐がてきぱきと指示を出す。先日王騎軍は大きな戦で大勝利を収め、王から沢山の報奨を頂いたので、城で祝勝会が行われていた。なので私は朝から目まぐるしく働いている。しかし溜息はそのせいではない。今日は街から綺麗なお姉さま達が軍長達や兵達にお酌をしに来ているのだ!今をときめく王騎軍の男達との出会いの場とあれば、お姉さま達の気合も物凄い。お化粧も着物も素敵。色っぽさ全開。普段街で遊んでいる者達(録嗚未・鱗坊様・同金様・干央様!)はともかく、遊んでいない真面目?な者達に対しての押しが物凄いのである。具体的に言えば隆国兄様と…副官である騰様。
ちなみに王騎様は少し離れた所で摎様と仲睦まじく歓談しているので、お姉さま達の割り込む隙がない。
兄様ってばあんなに真っ赤になって…まぁ少し位はしょうがないけど。って…騰様の隣に次から次へと色っぽいお姉さま達が!あんなにくっついて…あ、手があんなところに…
「…はぁ…」
あれ、また溜息が。なんでこんなにモヤモヤするんだろう。騰様は全然表情が変わらないから、お姉さまたちも必死なんだろうな。――もう何も考えないようにして、無の心で食器を片付けよう。無。無…あっ、また一人来た。
「どうした沙月、顔が怖いぞ」
振り向くとお姉さんを侍らせた録嗚未が酒壺を持って立っていた。
「顔は元からです。なんですか、お酒のお代わりですか」
「ちげーよ!…お前ちょっとこっち来い!」
がっと肩を組まれ、ずるずると宴会場から連れ出される。お姉さん方もぽかんとしてるよ!
「ちょっ…録嗚未っ」
周りからはおいそこデキてたのかよー!だの、さすが録嗚未だの、沙月ちゃんそんな男やめとけ!だの歓声が上がっていたが断じて違う。録嗚未とは年が近いから話しやすい、馬鹿な話ができる良い友達だ。部屋を出る時視界の端で兄様の驚いた顔と、そして真っ直ぐ私を見る騰様が見えた。
「なにすんの!仕事あるんだけど!」
「そんなむくれた顔で宴会場にいられても盛り下がるだろうが。ちっと外で頭冷やせ」
「…そんなにひどい顔してた?」
「あぁ、全身から殺気が漲ってたぜ」
かっかっかと笑いながら酒を飲む録嗚未。しばし無言で2人、夜風にあたっていると段々冷静になってきた。
「…録嗚未ありがとね」
「いいって。落ち着いたかよ。で?どうした」
「んー…何か、騰様に群がるお姉さんたち見てたら嫌な気持ちになって…」
ぶーっ!と録嗚未が酒を吹き出した。汚い。
(それって騰にヤキモチ焼いてるってことじゃないのか?うわーこいつ騰の事好きなのかよ…あんな奴のどこがいいんだ?何考えてるかわかんねーし。少し強いだけだろうが…)
「――録嗚未?なに?」
急に黙ってこちらを見る録嗚未。見るというか睨まれている。何だろう。
(そりゃ今来てるねーちゃん達とは全然違うけど、こいつだって悪くないんだよなぁ。隆国の妹だからそういう風に見ないようにはしてたけど…)
「ちょっと。ろーくーおーみ!」
おや?酒を置いて録嗚未がじりじりとこっちに近づいてくるぞ?え、目が怖い…
(悪くねえっていうか…むしろすげえ可愛い!!)
「沙月!俺にしとけ!」
「きゃあああ?!」
録嗚未が抱き着いてきた瞬間、―ファルッ!という音と共に鈍い音がして…どさりと足元に倒れた。
「…だいじょうぶ?」
よかった、息はある。気絶しているようだ。そして目の前には――
「すまない、つい手が出てしまった」
騰様が長めの箒を手に立っていた。これで殺ったんですね…
「いえ、すみませんお騒がせして。急に酔ってしまったみたいで、あはは…」
録嗚未を起こそうとする私の手に、騰様の手が重なった。
「――何故か、沙月とこいつが密着しているのを見ると腹が立つ」
「え?」
「恋仲なのか、録嗚未と」
ぐっと手に力が入った。表情が変わらないと思っていたけど、何だか辛そうに見える。
「いえ、友達です!さっきは私の様子が変だから連れ出してくれて」
「…そうか…恋人ではなかったんだな」
あっ。今度はほっとしてる。こうしてみると騰様も分かりやすいのかも。
「騰様こそ、あんなに綺麗な女の人達に囲まれて…」
「囲まれてはいたが、別に面白くはなかったな。私は沙月と2人でお茶を飲んでいる方が楽しいが」
私もです、と小さく呟く。ふわりと大きな手で頭を撫でられるとさっきまでのモヤモヤが嘘みたいに消えて、胸がキュンと高鳴った。
「さてそろそろ戻るぞ。沙月、お酌してくれるか」
「はい、勿論です!」
そのまま騰様と手を繋いで、宴会場へ――
「おいお前ら!人の目の前でいちゃついてんじゃねぇ!」
「はぁ…いいか録嗚未。こういう時は空気を読んで消えるものだ」
「絶対読まねえぞ」
「あぁ良かった生きてて…一緒に戻ろう?」
「沙月~お前ほんと可愛いよなぁ」
「録嗚未もう少し寝てるか?」
「おい(怒)」
復活した録嗚未と仲良く?3人で宴会場へと戻ったのだった。
おわり。
「はぁ…」
私は何度目かわからない溜息をついた。
「ほら沙月、料理ができたから宴会場に持っていって!あ、それはここに運んで」
使用人の先輩である春姐がてきぱきと指示を出す。先日王騎軍は大きな戦で大勝利を収め、王から沢山の報奨を頂いたので、城で祝勝会が行われていた。なので私は朝から目まぐるしく働いている。しかし溜息はそのせいではない。今日は街から綺麗なお姉さま達が軍長達や兵達にお酌をしに来ているのだ!今をときめく王騎軍の男達との出会いの場とあれば、お姉さま達の気合も物凄い。お化粧も着物も素敵。色っぽさ全開。普段街で遊んでいる者達(録嗚未・鱗坊様・同金様・干央様!)はともかく、遊んでいない真面目?な者達に対しての押しが物凄いのである。具体的に言えば隆国兄様と…副官である騰様。
ちなみに王騎様は少し離れた所で摎様と仲睦まじく歓談しているので、お姉さま達の割り込む隙がない。
兄様ってばあんなに真っ赤になって…まぁ少し位はしょうがないけど。って…騰様の隣に次から次へと色っぽいお姉さま達が!あんなにくっついて…あ、手があんなところに…
「…はぁ…」
あれ、また溜息が。なんでこんなにモヤモヤするんだろう。騰様は全然表情が変わらないから、お姉さまたちも必死なんだろうな。――もう何も考えないようにして、無の心で食器を片付けよう。無。無…あっ、また一人来た。
「どうした沙月、顔が怖いぞ」
振り向くとお姉さんを侍らせた録嗚未が酒壺を持って立っていた。
「顔は元からです。なんですか、お酒のお代わりですか」
「ちげーよ!…お前ちょっとこっち来い!」
がっと肩を組まれ、ずるずると宴会場から連れ出される。お姉さん方もぽかんとしてるよ!
「ちょっ…録嗚未っ」
周りからはおいそこデキてたのかよー!だの、さすが録嗚未だの、沙月ちゃんそんな男やめとけ!だの歓声が上がっていたが断じて違う。録嗚未とは年が近いから話しやすい、馬鹿な話ができる良い友達だ。部屋を出る時視界の端で兄様の驚いた顔と、そして真っ直ぐ私を見る騰様が見えた。
「なにすんの!仕事あるんだけど!」
「そんなむくれた顔で宴会場にいられても盛り下がるだろうが。ちっと外で頭冷やせ」
「…そんなにひどい顔してた?」
「あぁ、全身から殺気が漲ってたぜ」
かっかっかと笑いながら酒を飲む録嗚未。しばし無言で2人、夜風にあたっていると段々冷静になってきた。
「…録嗚未ありがとね」
「いいって。落ち着いたかよ。で?どうした」
「んー…何か、騰様に群がるお姉さんたち見てたら嫌な気持ちになって…」
ぶーっ!と録嗚未が酒を吹き出した。汚い。
(それって騰にヤキモチ焼いてるってことじゃないのか?うわーこいつ騰の事好きなのかよ…あんな奴のどこがいいんだ?何考えてるかわかんねーし。少し強いだけだろうが…)
「――録嗚未?なに?」
急に黙ってこちらを見る録嗚未。見るというか睨まれている。何だろう。
(そりゃ今来てるねーちゃん達とは全然違うけど、こいつだって悪くないんだよなぁ。隆国の妹だからそういう風に見ないようにはしてたけど…)
「ちょっと。ろーくーおーみ!」
おや?酒を置いて録嗚未がじりじりとこっちに近づいてくるぞ?え、目が怖い…
(悪くねえっていうか…むしろすげえ可愛い!!)
「沙月!俺にしとけ!」
「きゃあああ?!」
録嗚未が抱き着いてきた瞬間、―ファルッ!という音と共に鈍い音がして…どさりと足元に倒れた。
「…だいじょうぶ?」
よかった、息はある。気絶しているようだ。そして目の前には――
「すまない、つい手が出てしまった」
騰様が長めの箒を手に立っていた。これで殺ったんですね…
「いえ、すみませんお騒がせして。急に酔ってしまったみたいで、あはは…」
録嗚未を起こそうとする私の手に、騰様の手が重なった。
「――何故か、沙月とこいつが密着しているのを見ると腹が立つ」
「え?」
「恋仲なのか、録嗚未と」
ぐっと手に力が入った。表情が変わらないと思っていたけど、何だか辛そうに見える。
「いえ、友達です!さっきは私の様子が変だから連れ出してくれて」
「…そうか…恋人ではなかったんだな」
あっ。今度はほっとしてる。こうしてみると騰様も分かりやすいのかも。
「騰様こそ、あんなに綺麗な女の人達に囲まれて…」
「囲まれてはいたが、別に面白くはなかったな。私は沙月と2人でお茶を飲んでいる方が楽しいが」
私もです、と小さく呟く。ふわりと大きな手で頭を撫でられるとさっきまでのモヤモヤが嘘みたいに消えて、胸がキュンと高鳴った。
「さてそろそろ戻るぞ。沙月、お酌してくれるか」
「はい、勿論です!」
そのまま騰様と手を繋いで、宴会場へ――
「おいお前ら!人の目の前でいちゃついてんじゃねぇ!」
「はぁ…いいか録嗚未。こういう時は空気を読んで消えるものだ」
「絶対読まねえぞ」
「あぁ良かった生きてて…一緒に戻ろう?」
「沙月~お前ほんと可愛いよなぁ」
「録嗚未もう少し寝てるか?」
「おい(怒)」
復活した録嗚未と仲良く?3人で宴会場へと戻ったのだった。
おわり。