短編
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全部月のせい(王騎夢)
満月の夜、あまりにも月が綺麗だったから寝るのが勿体ないとお酒を片手に部屋を出た。
いつもの城内ならばどこかで人の声が聞こえたりするのだが、珍しく今夜は静まり返っている。自分の足音だけがかつん、かつん、と響く。
月が良く見える場所を探して彷徨えば、城の裏手にある空き地にたどり着いた。ここはたまにのんびりしたい時に来る、私のお気に入りの場所だ。草むらに腰を下ろして、ちびりちびりとお酒を飲む。あまり酒に強くないので、ちょっとずつ。手を伸ばせば届きそうなほどに月が近い。
「もう少しで届きそうですねェ」
突然後ろからかけられた声に驚くと、王騎様が隣に座った。
「殿…こんな時間におひとりでどうなさったんですか?」
「ンフフ。貴女と一緒ですよ。月に誘われたんです」と、お酒の入った壺を掲げてみせた。
「…急に殿がいなくなったら、みんな心配しますよ?」
「おや、生意気を言うようになりましたねェ」コココココと笑いながらお酒を飲む殿。
いい感じにほろ酔いになりながら、しばらく他愛のない話で月見酒を楽しんだ。
それでですね、その時兄様が――と話しながら王騎様を見ると、顔がすぐ近くにあって、思わず息を飲む。
月の光に照らされた王騎様が、とても美しい。
「沙月」
名前を呼ばれただけなのに、体の奥がずくんと疼く。ダメだ、目を逸らさないと――そう思えど、自分を見つめる瞳から逃れられない。
「――可愛いですよ、なんて…月に酔ったのかもしれませんねェ」
王騎様はそう言うと、何度か触れるだけの口付けをした。
「…戯れが過ぎましたか」
「やだ、王騎様もっと…」
唇が離れていくのが寂しくて、思わず口に出てしまった。
「沙月…いいんですか?」
情欲の色が滲む声。私は頷くと王騎様に口づけをした。
「…わたしも、月に酔ったみたいです」
…そう、全部月のせいだ。
おわり。
満月の夜、あまりにも月が綺麗だったから寝るのが勿体ないとお酒を片手に部屋を出た。
いつもの城内ならばどこかで人の声が聞こえたりするのだが、珍しく今夜は静まり返っている。自分の足音だけがかつん、かつん、と響く。
月が良く見える場所を探して彷徨えば、城の裏手にある空き地にたどり着いた。ここはたまにのんびりしたい時に来る、私のお気に入りの場所だ。草むらに腰を下ろして、ちびりちびりとお酒を飲む。あまり酒に強くないので、ちょっとずつ。手を伸ばせば届きそうなほどに月が近い。
「もう少しで届きそうですねェ」
突然後ろからかけられた声に驚くと、王騎様が隣に座った。
「殿…こんな時間におひとりでどうなさったんですか?」
「ンフフ。貴女と一緒ですよ。月に誘われたんです」と、お酒の入った壺を掲げてみせた。
「…急に殿がいなくなったら、みんな心配しますよ?」
「おや、生意気を言うようになりましたねェ」コココココと笑いながらお酒を飲む殿。
いい感じにほろ酔いになりながら、しばらく他愛のない話で月見酒を楽しんだ。
それでですね、その時兄様が――と話しながら王騎様を見ると、顔がすぐ近くにあって、思わず息を飲む。
月の光に照らされた王騎様が、とても美しい。
「沙月」
名前を呼ばれただけなのに、体の奥がずくんと疼く。ダメだ、目を逸らさないと――そう思えど、自分を見つめる瞳から逃れられない。
「――可愛いですよ、なんて…月に酔ったのかもしれませんねェ」
王騎様はそう言うと、何度か触れるだけの口付けをした。
「…戯れが過ぎましたか」
「やだ、王騎様もっと…」
唇が離れていくのが寂しくて、思わず口に出てしまった。
「沙月…いいんですか?」
情欲の色が滲む声。私は頷くと王騎様に口づけをした。
「…わたしも、月に酔ったみたいです」
…そう、全部月のせいだ。
おわり。