-　ソロランク戦　開始　-
『(……ステージは見た感じ市街地Ａかな？それにしても)……あの、何で抜かないんですか？それじゃあ私を倒せませんよ？』
「ん？………まぁ、気にせんといてな。ほい、レディーファーストや。柚紀ちゃんからどうぞ〜」
『……(ギュッ！)手加減しません、全力で行きます！！(ダッ！！)』

転送されたステージの確認をしてから改めて腰に弧月を携えた生駒を見るが、抜刀する気配がない。……流石に鈍器として使うとは思っていない柚紀が不審に思うが、向こうはお構いなしな状態で挑発してくる。それに乗るのは癪だが、何もしない訳にも行かないので攻撃を当てるために距離を詰める。それを見てやっと構える生駒だが、……ただ柄を掴むだけで抜こうとはしない。その光景を見て柚紀の脳裏に【初めてのトリオン体換装した際に慣れる為に手合わせ(？)した太刀川の姿】を思い出し

『…！！(キキィーッ！)(-　ズカッ！　-……プシュゥー)……やっぱり、居合抜きっ！！？』
「ん？？……バッチリ決まったと思ったんやが、掠めるだけやったか〜。……(ﾄﾝﾄﾝ)…もしかして嵐山から俺の事、聞いといたんか？」
『いえ、違います。ただ……(サスサス)…弧月にはＢに上がれば使える居合を用いた固有技があって、それを以前この身体に慣れる為の手合わせして頂いた相手に使われた事があったので、………ほぼ反射的に身体が動いた感じですね』
「なる程な〜、経験の差ちゅう訳か。緑川と戦った際には綺麗に入ったさかい、柚紀ちゃんにも効果あると思ったんやが……流石歌姫さんは自衛訓練されてますな〜。ほな、此処からは剣での打ち合いと参りましょうか〜」
『……(ギュッ！)勿論望む所です！一応"短刀"ですが手解きを受けていますので、全くの素人じゃありません。油断、してたら直ぐに終わりますよ？』
「上等や(ダッ！！)」

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「わぁ〜、柚紀ちゃん凄い！！イコさんの居合い、見切って回避したよー！」
「ま、当たっては居るけどな。にしても、アレだな。……初回時に俺が真っ二つにした経験がこんな感じで活かされるとは、人生何があるか分からないよな〜」
「………(ハァ〜)それはそうと、アタッカー同士の打ち合いだと【使用トリガーや戦闘スキル】が勝敗を左右する。一見スコーピオンを使う鶴ヶ峰が不利に思われがちだが、アイツには膨大なトリオンがある。だから耐久的な心配はないとなると、……剣の腕前次第が？」
「だけど、柚紀ちゃんって剣の腕前は未知数だよな〜。例の券を使って【先生役を弾バカが立候補】して、練習風景を俺も眺めてましたがあの時はスコーピオンを一度も使っていませんでしたし……」
『当たり前だ、柚紀はアタッカーじゃなくてシューターだぞ？何故Ｃの時点でサブにまで手を伸ばす必要がある？それにスコーピオンを扱うのを習うならフブキや風間に先生をあの子なら頼むだろうし……それより、お前達はこの試合、どちらが勝つと思う？』

観戦しているメンバーから様々な意見やら情報が飛び交う中、言実が勝敗予測を訊ねる。これに対して緑川・隠岐、そして木虎は迷った末に生駒と答えたのに対して他は柚紀と即答。それを聞いて『何故そう思う？』と追求されれば順番に考えを口にしていく

「……見た感じ、剣の腕前はやっぱり生駒って人の方が上ッスね。間合いの取り方とかかなり上手い気がします」
「鶴ヶ峰も射程の関係上かなり至近距離で受け太刀をしつつ反撃もしようとしているが、弧月の有効射程を活かそうと攻撃しては下がりを意識している。それも、建物の障害物もちゃんと意識しているせいか、壁際に追い込まれる様子も無い」
「後は、最初の一撃が入っている分、無理に攻めずにトリオン切れを狙うのも一つの手だが………」
「流石にそれはないでしょうね。緑川との手合わせをしているなら、スコーピオンの耐久性の違いには気づいていそうですし、昼間の訓練室でおれが解説してます。ですので"普通に戦えば"負けるのは柚紀さんでしょうが…」
「あの閃きの天才の柚紀だよ？それはナイナイ！！と言うより【ただ単純な切り合い】をするとは佐鳥は考えられません！！それじゃあ"スコーピオンの良さ"が活かせない。ま、コレをトリオンやトリガーを知らない相手にするとは思えないけど、……意外と頑固だからな〜、目標の為にも誰だろうと負けたくないんじゃないかな？」
「スコーピオンの、良さ？そう言えばあの男麗な先輩……フブキ先輩に【もぐら爪を披露しろ】とか訓練室で言ってたけど、アレって何だったの？」

生駒が有利な点を上げていたかと思えば、結局はどうやって柚紀が勝つかの話になり、佐鳥の言い分には木虎ですら納得してしまっていた。そして同じトリガーを使う緑川が気になっていた事を訊ねれば「見てれば分かる」と風間に言われて画面に視線を向けたその瞬間

「えっ？！じ、地面から刃が生えたっ？！」
「アレがもぐら爪（モグラモール）だ。……時枝の説明を聞いてなかったのか？スコーピオンは形を自在に変えられると言っていた筈だ。それは通常のブレードの形だけに留まらず、足裏から出した刃を地中を経由して今みたいに奇襲攻撃も可能とする。そう言う意味では発想力が豊かな鶴ヶ峰にはピッタリなトリガーと言えるな」
「………えっ？"刃が二つになった"？！でもペナルティーを受けた様子もないですし、なんであんな事が…」
「おっ？！？枝刃（ブランチブレード）とかまたレアな奴が出たな〜。あれもスコーピオンのちょっとした小技だが、ただ刃を増やすだけなら風間さんみたいに二刀流にすれば事足りる。つーか、柚紀ちゃんなら一つのトリガーでも【同じのなら擬似サブトリガー】みたいに出来そうジャね？」
『馬鹿を言うな。それが出来たとしてもスコーピオンだけで、他のトリガーでは無理な芸当だ。……弾トリガーも基本作り出した一つの弾を分散して放つ性質上不可能だ。最も…Ｂになれば可能やも知れぬがそれは柚紀の想像力とトリオン次第だ』