❲…………その様子だとお前も"鶴ヶ峰の異変"に気づいているみてぇだな。アイツはランク戦中で、俺に意識を全く向けていない。だが……明らかに何時もと…あの時と違う。体験した事の無い妙な感覚が刺さってきやがる。いや、この感じ………"殺したい程の憎悪や怒り"の感情に似ているな。だが俺に向けられた訳でもなく、お人好しなアイツが他人の此処までの感情を抱くとは思えねぇ。………お前はどう思う鋼❳
「カゲの言い分には概ね賛成だ。そして"お前に向けられていない感情を受信した"って事は、………恐らく無意識の内に鶴ヶ峰が求めている可能性があるな、【カゲに自分を止めて欲しい】と。全力を出している鶴ヶ峰を止められるのはＡ級隊長クラスでなければ難しいのは、今までのランク戦結果で実証済み。それに当真が【サイドエフェクト制御がだいぶ出来る様になった鶴ヶ峰なら"聴かせたい奴にだけ"に、今なら"歌や思いを伝えられるだろう】と。…………俺には類似した体験を経験した事はない。だが……そんな気がしてならない」
「(チッ)………あくまでも可能性の範疇で確証がない以上、……あの人に聞くのが一番だな。…コチラ影浦、すんませんが応答願います。……"つる姐"」

２対１になったので直ぐに柚紀の勝利で終わるかと思われていたが、意外と長引いており【これも柚紀らしくない】と感じる影浦は、とりあえず状況の把握と報告を兼ねて言実に連絡。そして直ぐ様反応が返ってきた理由は《やはり妙な事になっておるみたいだな。……少し前からあの子の"トリオン反応に変化があった"。減少によりものでなくこれは………》と語っている間にロビーが何やら騒がしくなる。気になった村上がブースから出て様子を窺うと

「"モニター画面が全て、消えている？"………荒船、ナニが起きたんだ？」
「俺にも分からない。ただ、…画面が消える直後に映し出された鶴ヶ峰が無表情で【まるで言実さんかと勘違いする感覚】に陥った。それもアレは………"警告"と発したモノに似ている。とうなってるんだ？」
❲いきなりの放送で失礼するよ！皆ご存知の巽お姉さんです！！っと、挨拶はこの辺にして………悪いけど緊急メンテに入るから暫くランク戦中止にさせてもらうよ！あ、ブース内の機械は普通に動くよ？ただ、入った先で"何か遭ってもコッチは一切責任を取らないから"気をつけなよ❳
「東です陽菜さん。……一体何が起きているんですか？今現在ランク戦中だった隊員はどうなるんですか？コチラの声が聞こえているのならお答え下さい」
❲おっ？！東くんが居るのか！！？とりあえず君には監視を任せるとして……どうやらステージ試作品をテストクリア前にこっそり導入した阿呆が居るみたいでさ〜、システムセキュリティが発動してかなり不安定な感じになってる。大体の隊員は強制的に退去させれただろうけど、…………歌姫ちゃん達は取り残されちゃってるな。相手側なら彼女が倒せばそのまま出てこれるけど、……ヤバい、彼女一人データ世界から出してあげれなくなる！！？それじゃあ去年のトラウマ再来するから！！！どうするのよ〜〜言実〜❳
《五月蝿いヒナ、口を動かす前に手を動かせ。………影浦、村上。お前達を特別権限であの子と同じステージに飛ばす。無事にあの子を倒した後"相討ちする形"で戻ってこい。先に言っておくが今から向かうステージは"かなり荒廃や破壊尽くされて原形を留めていない可能性がある"。……気を引き締めろよ？》

言実と巽のコンビによる説明を聞いて村上はブースに戻り、東を中心とした隊員達が被害拡大を防ぐ為に動く。丁度ランク戦をやりに来た米屋達を巻き込みつつ。その最中、一足早く柚紀に敗れて戻って来ていた弧月使いの隊員にベイルアウト直前までの状況を荒船が問い質していると

「………………俺は、自分が思った事を口に出したり行動をしただけだ。なのにアイツ、スゲェ怒ってた。連携が取れてないのは認めるし、だからチーム解散とボーダーを辞めるのを決めた。………他人の事なのに自分の事の様に感情を露わにしてた。って言っても表情が怒りに満ちていた訳じゃないが、……あれは…あの人から"警告を受けた際に見た表情と瓜二つ"だ。まるで…"同じ人なのに中身だけ変わった"、そんな感じ。………そんなの起きっこねぇのにな」

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転送された先で二人が見た光景は"第一次侵略時"を彷彿させるような廃墟と化したステージであり、所々火災も発生していた。……柚紀はメテオラをセットしていない筈なので、相手側の攻撃余波かと思ったが一般隊員のトリオン量では此処までの状況になるのか？…そんな事を考えていると、前方に人影を発見する。そしてその光景を見て二人とも驚愕を覚えたが、先に我に返った影浦が行動を起こす

-　ズカズカズカズカ……ガシッ！　-
「テメェ、ナニしてやがる？！こんな………"四肢切断した挙げ句頭を踏み潰す"とか、お前らしくねぇ。何で、こんな事をしてやがる。答えろ……………鶴ヶ峰」
『あら？"影浦先輩"に村上先輩？何故此処に………あ〜、あの方が私（わたくし）の異変やシステム干渉したのにお気付きになったから、でしょうかね？(ｸｽｯ)わざわざ御足労頂きまして恐れ入ります』
「("わたくし"？それに今、カゲの事を…)「な、何なんだよあの女はっ？！髪色が変わるのは知ってたが……紅蓮…真っ赤になるなんて聞いてねぇぞ！！？それも何で痛みを感じるんだよっ！！？そんな設定、してねぇから！！！」！！………まさか、サイドエフェクトで相手の設定に干渉した、のか？」
『あらあら、可笑しな事をおっしゃられますね。……わたくしの能力は"自らのトリオンを用いて自他に干渉をするもの"と、皆様周知されているのでは？勿論"干渉したいモノに振れる"必要はありますが、………その気になればトリオンを動力源にて稼働・構築されているこの空間にすら(ｸｽｯ)干渉は出来ますよ？後始末の面倒くさい点や後遺症の発生が危惧されますから、普段はやりませんが』

炎のせいで周囲が赤みがかって見えているからでなく【髪色を赤くさせ、丁寧な口調ながら普段の柚紀から想像も出来ない所業を笑みを浮かべながら行っていた】。因みにガンナーの隊員も片腕を損失、足には射撃を受けたせいでトリオンが漏出させた状態で、痛みにより表情を歪ませていた。……頭を踏み付けられているスコーピオン使いの相手も「がっ、………ぁ、………ぐ、…こ、……と、どめを、……さ…て…………」と呻き声が聞こえ、損傷具合からしてもダウン扱いになっても可笑しくはないのだが、柚紀が無理矢理この場に押し留めているのを察した影浦が言実に内部通信を入れる

((悪いがつる姐、今の鶴ヶ峰は何時ものアイツじゃねぇ。俺は兎も角……鋼はまともに戦える保証がないのもだが、俺一人でコイツに…正直勝てると言い切れねぇ。それで悪いが【例の件含めて秘密を明知っても平気そうな部隊のトレーニングルームに俺達を飛ばせれないか？】サイアクの場合、俺の所でも良いがゾエやユズルがコイツを討てるか……性格や実力含めてもかなり微妙だが……………それでも何とかしねぇとこのままじゃ…【鶴ヶ峰が別人格に乗っ取られるぞっ？！！】))