18.貯古齢糖の曲(173.
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柚紀が次に目を覚ましたのは、この時期では日が登るにはまだな夜明けの時間帯であり、場所は私室の寝室内であった。頭がぼんやりする中、近くに置かれていたペットボトルで水分補給しつつ言実が置いたであろうメモを見て『あ、そっか。私は……』と昨日の事を思い出す。そしてペットボトル隣に置いてあった携帯を操作してメッセージを確認すれば………身支度を整えて部屋を後にする。行き先は…
- ピッピッピッピッ………ウィーン -
「ん???……(スタスタスタ…)おやおや、こんな時間なのに一人で基地内を歩くのは感心しないよ柚紀ちゃんや。ま、変な時間に寝ちゃったから仕方ないとも言えなくはないけどね〜。で、……わざわざ"作戦室"に来た理由は、…シロを心配してかい?」
『おはよう御座います陽菜さん。ん〜………どちらかと言えば菊地原くんの、ですかね?シロから【菊地原くんも私が揺らいだ影響を受けて作戦室でお預かり中です。次に会った時は小言を貰う覚悟をしてね?】とメッセージを貰ったので。えっと……(キョロキョロ)まさかだとは思いますが、二人とも和室スペースで寝てますか?今日は夜通しゲームする予定だったのでお布団は複数組み有る筈ですが…』
- ………スススー -
「そんな訳ないでしょ?市河はベイルアウト先のマットで寝てるよ。(フワァ〜)因みに、……巽さんは僕が愛弟子に手を出さないか見張る為にコッチに仕事を持ち込んで、作業してた感じだね。で、………………君は僕達に協力を仰ぐため、去年あんな嘘の作り話をした、で間違いないよね?」
『ありゃま、起きちゃったか。そっちの和室スペース【例の検査室みたいに色々遮断したり、サイドエフェクト効果を弱めたり出来るから】ワンチャン聞こえないかな〜って思ったけど爪が甘かったみたいだね。で、……その説明は風間さん達と一緒にで良いかな?正直…(ギュッ)何度も、話せる内容じゃ、ないから』
自作戦室にやって来た柚紀を巽が出迎えて話をしていると、閉まっていた襖が開いて菊地原が姿を現す。そして一見普通に見えるがやはりオトは騙せないらしく「……いいよ、それで。だから落ち着きなよ鶴ヶ峰。オト、乱れてるよ」と指摘される始末。そしてニ・三言葉を巽と語った後に"必要なもの"を持って作戦室を後にする。(同じタイミングで菊地原は自分の作戦室へ向かう)それらを見送った巽の表情は、………かなり複雑なものとなっていた
「此処から本番かな?……あの子が自分の手の届かない場所に居るとバレた以上、彼奴は動き出すよ?そして"狡賢いから恐らく柚紀ちゃんに効果がある方法で色々嫌がらせ…プレッシャーを掛けてくる"。まだまだ子どもな自分には出来る事がたかが知れているだろうし、言実も相手の手強さを知っているから迂闊には動けない。そうなると……"線引きするしかないね"【ボーダーが組織として手放せない逸材なら、多少は擁護される】のを見越して、秘密を話す相手を厳選。……主にB級の子達とは浅めの付き合い方にする感じかな?で、間違えないかい?……(クルッ)…シロ」
- ペタペタ、ペタペタ…… -
「多分、そうなります。にしても、……名前が違うから他人の空似って思っていたし、ユズちゃんにとっては最大級の地雷だったから、ロックが掛かっていたけど…………これで"全部見える様になる"かな?でもきっと、……普通に触れても読み取るのは無理な気がする。二宮さんとの対決時に自分のトラウマ体験のせいで私が具合悪くなったのを知っているから、きっとガードが硬くなる」
「だろうね。でも…………案外すぐにチャンスは来るかもよ?やっぱりあの二人ってどっか似てるんだよね〜。……当たって欲しくはないけどさ、……"多分柚紀ちゃん、ダウンするよ?"最大級の地雷…秘密がバレた事による精神的負荷や、嘘をついてしまった事による罪悪感と、……例のサイドエフェクトで自らに課した【嘘を付かない】を破った代償でね。………前に一度だけ言実がお兄さんと交わした約束を破った事があってさ、かなりの大怪我をして見舞いに言った時に【契約違反による代償だ】ってボヤいてた。あの時はサイドエフェクト的な能力はあくまでも二次元とかの話だって思って聞き流したけど………今となってはそうも言えなくなったし、柚紀ちゃんは黒トリガーを保有した事によりその能力も継承されている、らしいからね。ま、その看病は以前みたいに大人組が中心にやるだろうし、アレだけの内容を受信すればアンタだってダウンするのは必然。…………やるなとは言わないけど、読み取るのは受験終わってからにしな。万が一にもそれが原因で落ちたら、それこそ柚紀ちゃんの罪悪感半端ないよ?」
「………分かってます。フウちゃんから"ユズちゃんが天童寺財閥と繋がりがある"のは読み取ってましたし、調べたらかなりの……劣悪な環境に居たのは調査済みですので。だから、…私が今一番にしなきゃいけない事を最優先事項とします。ですが、彼女に助力を請われれば可能な限り手を貸します。この忌み嫌っていた能力をフル活用することになっても、私は構わない。それによって私が何か後遺症を抱いても、……彼女、柚紀を恨まないで下さいねヒナ先輩。そのリスクを承知の上で私は………彼女の専属オペレーターになるのを決めたんですから(ニコッ)」
「…………………………別に私は、シロが植物状態になったり、言実が死ななければ、それで良い。結局の所、私はただのヲタクにして生粋のハッカーでしかない。アンタ達みたいな不思議な能力を持たない、ごく普通の人間だ。だから、……本当の意味で"同じ立場にはなれない"のを知っている。そう理解してからは"最低ラインを設けるだけで、後は好き勝手にさせる"って決めた。ま、……私も自分の為に好き勝手にさせてもらうから文句は受け付けないよ?こんな神経してないと、……アンタ達とはやっていけないからね〜」
と、師弟関係にある二人がこんな会話を交わしていた。鶴ヶ峰の名を持つ親友が居たり、その彼女を支えるために専属オペレーターになるのを選んだ両者だが……【サイドエフェクトの有無】だけで考え方が大きく異なってしまうのは些か悲しいが、それで本人が納得しているのなら……と考え納得するしかないのだ