初詣の舞踊
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
-
- -
それから屋台の裏側を通る様に歩き社務所に入る二人。そして中庭に面したとある一室に連れて来られ「失礼します、翡翠の君をお連れ致しました」と宮司が声を掛ければ「入れ」と女性の声が返ってくる。そして互いに目配りをした後に柚紀が扉を開いて中に入る。そこには……巫女装飾に冠や首飾りを施された黒髪の女性が鎮座していた。ある程度まで近くに行きその場で正座をした柚紀は、両手を床に付きそのまま額を付くほどまで頭を下げた後に『ご無沙汰しております、月様』と声を掛ければ「表を上げい、我が月花よ」と声と共に布が擦れる音が近づいてくるのでゆっくりと顔を上げれば、女性が直ぐそばに来て柚紀と同じ目線の高さにすれば
- ……サワッ -
「…………あまり、顔色が優れぬな。あの時そなたから笑みが消え失せ、生気も徐々に衰えて行く様を見た故に我はそなたを手放す決意をしたと言うのに、……これでは意味が無かろうに。………あの若い月影にお前を預けるのは軽率な判断だったやも知れぬな」
『……お言葉ですが月様、先代にして我が父と叔母を見比べるのはお門違いかと存じます。………父は幼少から"月影になるべくして教育を施されましたが"、叔母は"たかが数年でそれらの知識と実力を身に着けました"。それでも周囲に支える者が居なければ、簡単に綻びは生じます。………人は一人では生きていけませんから』
「………"守り人不足の件"か?確かに近年、心身ともに優れた若者が少なくそなたを護るのも一苦労故に月影を赦せと申したいのか?……ならば此処ではなく"あの里が無理なら以前過ごしていた街へ戻れば良い"。あそこなら数多の実力者が…『申し訳御座いませんが、私はこの地を離れる訳には行きません』……例のボーダーなる組織に所属したからか?」
『それもありますが、此処でなら"私は私らしく生きれます"。それに初めての友人が……親友が出来ましたし、私が危うくなれば………必ず助けてくれる、信用に値する方にも出会えました。だからこの地を私は離れたくないのです。分かって下さい、………月様』
「(……スクッ)なら、今この瞬間でもそなたの言葉が真実か、確かめさせてもらおう(……スウゥ)」
揺るがない柚紀の決意を確かめる為に、立ち上がった女性は持っていた扇を振り上げる。それに対して臆する事無い柚紀だが振り下ろされた扇が当たりそうになった瞬間、やはり怖くなって目を瞑ってしまう。そして次の瞬間
- ……クイッ、ガシッ!! -
「……アンタが月様か?見た目は普通の姉ちゃんみてーだが、まぁいっか。それより………俺のダチに何しようとしてたんだ?答え内容次第じゃ、女性だろうとタダじゃおかねぇぜ?」
『……(パチリ)えっ?ふ、フブキっ?!…どうして、なんで、……トリオン体??』
「ほぅ。まさか"結界"をすり抜けて来たのか?……何者だ小童?どうやって中に入って来た?」
「結界??……あ〜、だから嵐山さん達が外で立ち往生してた訳か。よく分かんねぇが俺にはソレ効かねぇみたいだわ。ま、何はともあれ(ドゴーン!!……パリィーン)…やっぱりレイジさんの拳で一撃KOだったな」
トリオン体のフブキが乱入して直ぐ様柚紀の肩を抱いて自分の方に引き寄せ、もう片方の手で扇を持つ女性手首を掴んでいた。……一応相手が女性なのであまり強く握っていないが、それも相手の言動次第と言った様子だ。そして嵐山・立ち往生の言葉を聞いて後ろを振り向けば確かに嵐山達も換装した状態で出入り口からコチラを見ていたが……横に反れた瞬間に木崎がいきなり現れ、拳を"見えない壁"に叩きつけて破壊したらしく柚紀の名を呼びながら室内に駆け込んでくると前衛三人が前を陣取り、佐鳥が柚紀の安否を確認する。そして三人とフブキが今にも女性に手を下しそうな雰囲気なのを察した柚紀が止めようとしたその時
- ジャリッ!! -
「待ちな!嵐山隊お三方とフブキ!!その嬢ちゃんに手を出しても意味はねぇ。……彼女は"器"だ。本来聞こえないカミサマの声を届ける為の写し身…依代に使われてるだけだ!!」
「ほぉう、……こうやって顔を合わせて話すのは久しいな"匠"よ。もしや、……この袴の小童は主の孫か?」
「フブキがワシの??……まぁ、そう言われても強くは否定せん!事実ソイツは"もう一人の孫娘"みたいなもんじゃからな〜。……いや、それなら柚紀もか?ガッハハハハハハ!!」
「もう爺さん!そんな事は良いから!!……早くその中身を取り出さなきゃ彼女の身が危険だ!!?アンタだって大事な舞手を失いたくはないだろ?!」
『棟梁さんに、迅さんまでっ!!?って、そんな事より……お願いです月様っ!その方を解放してあげて下さい!!依代の適性があったとしても訓練や……それこそ私が気づかない程の高度な結界を構築させる何で無茶をしたら、……その人の身が持たない!最悪…彼女が死んでしまうっ!!そんなの、……嫌です(ポタポタ、ポタポタ)』
「「「「「えっ?!」」」」」
女性……ユエなるお方をよく知っている風に語る棟梁と、未来が視えてる迅以外は柚紀の発した言葉に驚きや動揺を隠せないでいる。一方、ユエは「死にはしない」と断言した後に、些かバツの悪そうな表情でこう告げる
「だって、……境内に来たのに月花が我に会わずにに帰ろうとした。夕刻に来ると約束はしたが、そなたは幼き頃から病弱じゃったから、……もしかしたら容態がいきなり急変して来ぬかも知れん。だから、この娘の肉体を借りた。さすれば必ず我の元に来てくれると分かっておった。……優しい子じゃからな、お前は。舞手の体に負担となるのは承知していた。が、……祭事から離れ"封印を施された"お前と言葉を交わす手段を、我はコレしか思いつかなかった。………赦してくれ月花、我とてお前を泣かしたくないし、……淋しかったんだ。我を依代なして見聞き出来る者は、……もう殆ど居らぬのだよ(ツゥー……)」
「(ハァ〜)……本来、それが普通の筈だが偶然なのか奇跡なのか…ソレが出来ちまう奴がアンタを祀る神社の関係者や信者に居ちまった。そのせいで"ヒトに近づき過ぎて、ヒトの温もりを暖かさや優しさを覚えちまった"、……カミサマだって感情はあるんだ。だからよ(…クルッ)何とかならねぇか?お前さんだって可愛い姪っ子が泣くのは嫌だろ?違うか?……月影・鶴ヶ峰言実」
- シャリ、シャリ……ザクッ………パサッ -
「!(クルッ)…………言実、さん?……その格好は、一体…」
男は誰でも女の涙には弱いらしく、棟梁ですら複雑な表情を浮かべていた。そして自分にはどうしようもないので潔くさじを投げるのだ。……二人の涙を止める術を持つであろう、"護神の心得を受け継いでいる存在に"。足音を聞いて振り返った木崎が見たのは、濃紺のロングコートを身に纏い、腰には弧月と異なる二振りの日本刀を携え……眼鏡を付けていない言実がそこに居たのだった
- -
それから屋台の裏側を通る様に歩き社務所に入る二人。そして中庭に面したとある一室に連れて来られ「失礼します、翡翠の君をお連れ致しました」と宮司が声を掛ければ「入れ」と女性の声が返ってくる。そして互いに目配りをした後に柚紀が扉を開いて中に入る。そこには……巫女装飾に冠や首飾りを施された黒髪の女性が鎮座していた。ある程度まで近くに行きその場で正座をした柚紀は、両手を床に付きそのまま額を付くほどまで頭を下げた後に『ご無沙汰しております、月様』と声を掛ければ「表を上げい、我が月花よ」と声と共に布が擦れる音が近づいてくるのでゆっくりと顔を上げれば、女性が直ぐそばに来て柚紀と同じ目線の高さにすれば
- ……サワッ -
「…………あまり、顔色が優れぬな。あの時そなたから笑みが消え失せ、生気も徐々に衰えて行く様を見た故に我はそなたを手放す決意をしたと言うのに、……これでは意味が無かろうに。………あの若い月影にお前を預けるのは軽率な判断だったやも知れぬな」
『……お言葉ですが月様、先代にして我が父と叔母を見比べるのはお門違いかと存じます。………父は幼少から"月影になるべくして教育を施されましたが"、叔母は"たかが数年でそれらの知識と実力を身に着けました"。それでも周囲に支える者が居なければ、簡単に綻びは生じます。………人は一人では生きていけませんから』
「………"守り人不足の件"か?確かに近年、心身ともに優れた若者が少なくそなたを護るのも一苦労故に月影を赦せと申したいのか?……ならば此処ではなく"あの里が無理なら以前過ごしていた街へ戻れば良い"。あそこなら数多の実力者が…『申し訳御座いませんが、私はこの地を離れる訳には行きません』……例のボーダーなる組織に所属したからか?」
『それもありますが、此処でなら"私は私らしく生きれます"。それに初めての友人が……親友が出来ましたし、私が危うくなれば………必ず助けてくれる、信用に値する方にも出会えました。だからこの地を私は離れたくないのです。分かって下さい、………月様』
「(……スクッ)なら、今この瞬間でもそなたの言葉が真実か、確かめさせてもらおう(……スウゥ)」
揺るがない柚紀の決意を確かめる為に、立ち上がった女性は持っていた扇を振り上げる。それに対して臆する事無い柚紀だが振り下ろされた扇が当たりそうになった瞬間、やはり怖くなって目を瞑ってしまう。そして次の瞬間
- ……クイッ、ガシッ!! -
「……アンタが月様か?見た目は普通の姉ちゃんみてーだが、まぁいっか。それより………俺のダチに何しようとしてたんだ?答え内容次第じゃ、女性だろうとタダじゃおかねぇぜ?」
『……(パチリ)えっ?ふ、フブキっ?!…どうして、なんで、……トリオン体??』
「ほぅ。まさか"結界"をすり抜けて来たのか?……何者だ小童?どうやって中に入って来た?」
「結界??……あ〜、だから嵐山さん達が外で立ち往生してた訳か。よく分かんねぇが俺にはソレ効かねぇみたいだわ。ま、何はともあれ(ドゴーン!!……パリィーン)…やっぱりレイジさんの拳で一撃KOだったな」
トリオン体のフブキが乱入して直ぐ様柚紀の肩を抱いて自分の方に引き寄せ、もう片方の手で扇を持つ女性手首を掴んでいた。……一応相手が女性なのであまり強く握っていないが、それも相手の言動次第と言った様子だ。そして嵐山・立ち往生の言葉を聞いて後ろを振り向けば確かに嵐山達も換装した状態で出入り口からコチラを見ていたが……横に反れた瞬間に木崎がいきなり現れ、拳を"見えない壁"に叩きつけて破壊したらしく柚紀の名を呼びながら室内に駆け込んでくると前衛三人が前を陣取り、佐鳥が柚紀の安否を確認する。そして三人とフブキが今にも女性に手を下しそうな雰囲気なのを察した柚紀が止めようとしたその時
- ジャリッ!! -
「待ちな!嵐山隊お三方とフブキ!!その嬢ちゃんに手を出しても意味はねぇ。……彼女は"器"だ。本来聞こえないカミサマの声を届ける為の写し身…依代に使われてるだけだ!!」
「ほぉう、……こうやって顔を合わせて話すのは久しいな"匠"よ。もしや、……この袴の小童は主の孫か?」
「フブキがワシの??……まぁ、そう言われても強くは否定せん!事実ソイツは"もう一人の孫娘"みたいなもんじゃからな〜。……いや、それなら柚紀もか?ガッハハハハハハ!!」
「もう爺さん!そんな事は良いから!!……早くその中身を取り出さなきゃ彼女の身が危険だ!!?アンタだって大事な舞手を失いたくはないだろ?!」
『棟梁さんに、迅さんまでっ!!?って、そんな事より……お願いです月様っ!その方を解放してあげて下さい!!依代の適性があったとしても訓練や……それこそ私が気づかない程の高度な結界を構築させる何で無茶をしたら、……その人の身が持たない!最悪…彼女が死んでしまうっ!!そんなの、……嫌です(ポタポタ、ポタポタ)』
「「「「「えっ?!」」」」」
女性……ユエなるお方をよく知っている風に語る棟梁と、未来が視えてる迅以外は柚紀の発した言葉に驚きや動揺を隠せないでいる。一方、ユエは「死にはしない」と断言した後に、些かバツの悪そうな表情でこう告げる
「だって、……境内に来たのに月花が我に会わずにに帰ろうとした。夕刻に来ると約束はしたが、そなたは幼き頃から病弱じゃったから、……もしかしたら容態がいきなり急変して来ぬかも知れん。だから、この娘の肉体を借りた。さすれば必ず我の元に来てくれると分かっておった。……優しい子じゃからな、お前は。舞手の体に負担となるのは承知していた。が、……祭事から離れ"封印を施された"お前と言葉を交わす手段を、我はコレしか思いつかなかった。………赦してくれ月花、我とてお前を泣かしたくないし、……淋しかったんだ。我を依代なして見聞き出来る者は、……もう殆ど居らぬのだよ(ツゥー……)」
「(ハァ〜)……本来、それが普通の筈だが偶然なのか奇跡なのか…ソレが出来ちまう奴がアンタを祀る神社の関係者や信者に居ちまった。そのせいで"ヒトに近づき過ぎて、ヒトの温もりを暖かさや優しさを覚えちまった"、……カミサマだって感情はあるんだ。だからよ(…クルッ)何とかならねぇか?お前さんだって可愛い姪っ子が泣くのは嫌だろ?違うか?……月影・鶴ヶ峰言実」
- シャリ、シャリ……ザクッ………パサッ -
「!(クルッ)…………言実、さん?……その格好は、一体…」
男は誰でも女の涙には弱いらしく、棟梁ですら複雑な表情を浮かべていた。そして自分にはどうしようもないので潔くさじを投げるのだ。……二人の涙を止める術を持つであろう、"護神の心得を受け継いでいる存在に"。足音を聞いて振り返った木崎が見たのは、濃紺のロングコートを身に纏い、腰には弧月と異なる二振りの日本刀を携え……眼鏡を付けていない言実がそこに居たのだった