初お目見えの舞踊
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‐ シャン……シャンシャン ‐
柚紀が言実に軽く目配りをし、それに答えるかの様に縁側に出ると忍田に預けていた龍笛を受け取り構えると立ったまま演奏を始め、それに合わせてゆっくりと最初は動き出す柚紀。残り四人は縁側に座りそれらを見聞きし、……詳しくは知らない三人でも両方下手だとは思えなかった
「………柚紀ちゃんがさ、…歌っていると自然に体が動き出すのって、コレが理由かな?歌も楽器演奏もだけど……躍りも好き、なんだよね?多分……」
「……今のテレビで見る歌を生業にするアーティストやグループも歌や演奏、ダンスを使用しているから変じゃないけど、……彼女はその分野には疎い筈なのに」
「歌も楽器演奏も…踊りも、昔から用途は違うとしても存在していた。神聖な儀式から一般的な娯楽としてもね。だけど、……何故これだけの事を出来る子をあの里は…………そうでなければ、出会えなかったけど…でも、あんな思いを彼女はしなくて、済んだ筈なのに」
「あの里???……それは柚紀くんや言実くん、そして…静樹さんが生まれ育った山奥にある町の事ですか?先生、…貴女は何をご存じなのですか?あの静樹さんですら、私達に出会う以前の事を詳しく語ることはありませんでした」
老婦の意味深な発言に流石の忍田も気になってしまった様子だ。そして然り気無く学生二人が柚紀の舞に看取れているのを確認して、二人して琴の置かれた室内に下がる。それを横目で見た時枝だが、……どちらが優先か判断しこのまま見物を選択したのだった。さて、少し遠目ながら柚紀の舞とは演奏する言実を見つめながら老婦は口を開く
「鶴ヶ峰の子達が生まれ育ったのは、昔ながらの仕来たりや風習が根強く残る町。だから本来は女子供が里の外に出ることは……滅多にない筈なのよ。でも言実ちゃんは幼い時にご両親を亡くしており、静樹くんはその頃には研修医ながら外で働いていた。…一時期は里の親戚の家に預けられていたけど、……【このままでは良くない】と判断した静樹くんが里から連れ出して、あたし達に預けた。でも、柚紀ちゃんは勝手が違うわ。……高齢化が進む里において奉納舞を舞える子はかなり重要で貴重な存在。奏者は年寄りでも良くても舞手はやはりそれなりの体力を有するもの、…若いに越したことがないわ」
「ならば柚紀くんも【理由があって生まれ故郷を離れた】、そう言う訳ですね。……原因は一体…」
「……(フルフル)それを訊ねようとしたら、彼女は動揺してしまいあの状態になってしまった。あの里が原因か、…里から連れ出した者かは分かりませんが…………これだけは分かります。あの子の、…いえあの子達の過去を不用意に詮索してはいけません、何時かは必要になるとしても、それを許されるのは…彼女達が認め彼女達を大切に想うもののみ。……中途半端な信頼や気持ちでは結局、…傷付くのは双方共となってしまうでしょうからね。あの子達の事情は特別過ぎますが、他の子達も似たり寄ったりです。……それを肝に命じなさい、…ボーダーの忍田本部長殿。そして可能なら、…彼にもそう伝えて頂戴」
「……………分かりました先生、……必ずあの人にも伝えます」
‐ ……ブイ ‐
‐ ……クゥ~ン ‐
‐ ……ミャ~ ‐
‐ ………ピッ ‐
本当に短かったらしく、二人が話している間に踊りは終わり、縁側に戻ってきた柚紀を佐鳥を初めとした人や動物達に暖かく出迎えられていた。あの言実も見るからに表情が朗らかなものとなっていた。それらを見つめる忍田と老婦のを心配してか碧兎・小柴・子トラ、そして菫梟が側に寄ってくると"大丈夫?元気出して"と言いたげにすり寄ってくるのを各々反応を返せば、集団の輪に二匹と二羽を連れて合流する二人であった
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それから少しだけ話をした後にお暇する事になった五人だが、時間と場所的な理由で佐鳥と時枝は此処で別れる事になり、忍田は女性二人を車でマンションまで送り届ける事となった。因みにバイクはそのままで明日老婦に頼んだ書類を取りに来るついでに言実が回収する事となったので放置している。車を見送り老婦にも挨拶をして帰路に付く二人。……すると
「(…フ~)……日佐人は何も言わなかったが、やっぱりお前等は一緒だったか。ま、少し考えれば(クシャッ)分かることだけどな。…悪いが話がある、歩きながらで構わねぇから付き合ってもらうぜ佐鳥、…時枝」
「「……諏訪さん」」
道端にて煙草を吹かしながら一人待っていた諏訪が二人に声を掛けたのであった