「そう言えば、ご亭主が存命だった頃から小さな子や室内犬は家の中で飼われていたが、大型や外が好きな犬や猫は首輪を付けて自由にさせていた。躾がなっているからちゃんと帰って来る、…そのお陰で静樹さん経由とは別に旧ボーダーメンバーが先生達と関わるきっかけになった訳でしたね。……あの時の犬とは違うが、この子達も問題ない筈だと私は思う。現に…柚紀くんを心配はしているが二匹共縁側に上がろうとしない。……自分が汚れていたら家に彼女に迷惑が掛かる、そう判断したのだろう。彼等は差し詰め…」
「柚紀ちゃんの側まで来て顔を覗き込んでいる……少し怖い印象があって頭にミニ梟を乗せている方が、…"諏訪さん"。そして」
「離れた場所から待て状態で見守っている赤い首輪の子が……"嵐山さん"かな。確かにこの子達なら、鶴ヶ峰さんを任せても大丈夫そうだね」

此処の屋外犬は自由にさせている分、他人に迷惑を掛けない為に躾を厳しくしては居るがそれ以上に優しさを持っている。…それを知っている忍田は柚紀のボディーガード役に太鼓判を押し、更に症状が少し良くなったがまだ辛そうな柚紀に対する行動が、先程の"知り合いに例えるなら"と二人が当て嵌めると、信用信頼に値する人物達が該当した事により………二人もやっと納得したのであった
それを見ていた菫梟は恭犬の頭から時枝、佐鳥の肩に止まって各々軽く頬擦りすれば忍田の頭の上に止まって大人しくなったのである。それを見て老婦は嬉しそうに笑えば柚紀にティッシュを箱ごと渡して立ち上がらせる

「さて、それじゃあ少し柚紀ちゃんをお借りしていくよ。それと、……忍田くんがお世話になったあの子ならお店の方でお昼寝しているから、更に安心して頂戴。あ、そうそう。…二人に一寸したお願いしても、大丈夫かしら？」
「えっ？！！本部長がお世話になったとかスッゴク気になるけど……お婆ちゃん先生の頼みを聞くのが先だね！佐鳥達にお願いしたい事って何ですか？」
「とりあえず佐鳥くんにはこの紫の首輪をした子(槍犬)の遊び相手をお願いできないかい？庭先で皆で遊んで上げれば、きっと満足する筈よ。それと時枝くんには、その子(灰猫)を綺麗にして貰えないかしら？」
「構いませんが、…流石に台所じゃ無理ですね。浴室か……庭先とかになります。ですが猫は普通だと水が苦手ですし、水は何処から…」
「お水ならすぐそこにある庭の花や野菜に水を与える為の蛇口を使って頂戴。ホース付きだからそのまま使って構わないわ、それとウチの子達は水大丈夫だから、心配しなくて大丈夫よ。…タオルを多目に置いておくから、遊びがてら水浴びでも良いかもしれないわね～。それと忍田くんは……」

柚紀が居ない間、客人に値する三人が暇を弄ばない様に"お願い"を告げていく老婦。一先ず二人には動物の世話を、忍田には別件を頼もうとしたら菫梟が頭から飛び立ち、何やら大きく厚みのある本が並ぶ棚に止まれば、ある一冊の本を嘴で指し示す。それを見て老婦は皺が一段と深くなる程の嬉しそうに笑えばその本を抜き出してテーブルに置く

「……暇潰しにコレでも見ていて頂戴。本当は駄目だけど、この子(菫梟)が大丈夫と判断したのなら、問題ないわ。あの子並みに賢い子だからね。それと、さっきの笛を聞いて別の子が遅れて戻ってくるかも知れないから……その子達の相手を頼めないかしら？……お願い出来るかい？」
「はーい！！お任せ下さい！？……よし、皆遊ぶぞ～！！」
‐　ワン！わん！キャン！きゃん！　‐
「分かりました、それじゃあ毛並み綺麗にしようか。……君達も来る？水冷たくて気持ちいいよ？」
‐　ミャ～、ニャ～………ﾐｬｳ　‐
「了解しました先生、…彼女をお願い致します(ﾍﾟｺﾘ)」
「大丈夫だよ、……"患者さんに優しくする"のは医者の基本だからね。そうそう、…(コトン)この中にペット用のブラシや爪切り、ドライヤー何かが入っているから使っておくれ。……お前達は外から回ってお店にお入り、…直ぐにあたし達も行くからね」
‐　………ガゥ(ﾉﾛﾉﾛ)、…ワン！！(タタタタタッ)　‐

三人が了承したのを確認して行動に移す為に、ボディーガード役に任命された恭犬と勇犬に移動を促し動いたのを確認した老婦は埃のせいで充血した目をシバシバさせ涙目な状態で待っていた柚紀の手を引き、奥…お店のある方へと歩き出す。時折くしゃみがまだ出るので上手く話せない状態だが、見送る三人に軽く手を降りそのまま老婦と共に居間を後にするのであった