晩夏の陽炎
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ボーダー本部から引っ越しした三日後、柚紀はマンション周辺を探索していた。最寄りのお店(飲食店や食料品が売っているスーパー等)を調査し、携帯に広告チラシを見れるアプリをインストールして実際の値段を確かめたりして地理を頑張って覚えていた。因みに学校関連は言実と相談をして明日にでも実際に行く予定であり、制服や教科書を揃えるのも同日に済ませる手筈だ。そんな感じで散策していたが、未だに暑い季節でもありマンションから程近い公園にて一休み柚紀はしていた
『ふぅ~~、結構歩いたな~。流石に暑いや(パタパタ)む~、……薄手でも夏に長袖は無謀かな?言実さんに相談して日焼け止め買って貰おうかな?でもな~、………背中出さないとは言え、肌弱いせいなのか市販の日焼け止め、…合わなかったんだよな~。(…これも"体質"のせいかな?洗顔とか体洗うのもたま~に肌に合わないのあるからな~)ま、言実さんも"同じっぽい"からとりあえず聞いてみようっと(ゴクゴク)』
日陰にあるベンチに座りながらそんな事を考えつつ水分補給をする柚紀。…流石に歩き回れば汗が出るのは分かっていたので、あらかじめ用意をしていたのであった。因みに市販のスポーツ飲料水は些か濃く感じたので、粉末タイプを水多目にして作ったのを鞄に入れて持ち歩いていた。更に髪も水色のシュシュでポニーテイルにしており、鞄は勿論、屋上で迅から貰ったのを最近愛用していた
『(そう言えば太刀川さんに"お前の鞄だって、誰にでも分かるようにしろ"って言われたけど……必要ないよね?だって私の鞄を別の誰かが持っていたら、何か色々疑わそうだし、あのお弁当だって一部の人宛だし。……そう言えば)……夜、迷子になった時に菊地原くんにも心配かけちゃったんだっけ?迅さん同様、サイドエフェクト関連では特に何かとお世話になってるし、何かお礼しないと。………ナニがいいかな?』
水分補給をしながら、ふとそんな事を思い出した柚紀は"何をすれば相手が喜ぶか"を考えると、直ぐに候補が上がったので早速メッセージを送る事に。内容は………
【菊地原くん今日は。あのね、歌のバリエーションを増やそうと考えているんだけど、……オススメの曲やアーティストさん居ませんか?私だと女性ばっかりだから、出来れば男性が良いんだけど………先輩、ご助言下さい(。-人-。)】
こんな感じでだ。因みに顔文字は最初は全然使用していなかったし、最近覚えたてで他の知り合いとのやり取りにも使っていた。最初は驚かれるが"自分も使うから全然OK"的な感じで互いのコミュニケーションツールの一つになっていた。……自宅に帰っても言実はボーダーに呼び出しを受けて今は不在だし、急ぎやる事もないのでそのままのんびりしていると菊地原から返事が返ってきた
【いきなりそんな事言われても直ぐには出てこないよ?それに鶴ヶ峰が使うって事は例の……"歌姫"に使う訳でしょ?僕が好むのは聞いて元気になる様な曲じゃないから、用途に合ってなくない?ってか他人に曲の好みとか知られるのは僕嫌なんだけど。……まぁ、あくまでも男性歌手の曲を歌う練習に"だけ"に使うなら答えてあげなくもないよ?後……いつの間に顔文字マスターしたの?少し前まで使ってなかったでしょ?】
【あ、成る程!……考え不足でした、ごめんなさいです(/o\)………うん、練習曲にするよ。だから教えて下さい。顔文字に関しては主に"予測変換"の産物だよ、打つ早さもお陰で早くなりました(’-’*)♪あ、菊地原くんは私に合わせて無理に使わなくても大丈夫だよ?風間さんとか男性はそこまで多用しないって知っているから。女子以外だと佐鳥くん位だし、……あ、時枝くんもたまーーに使うかな?】
『送信っと!……そう言えば、最初は菊地原くんとは短文でやり取りしていたけど、今は大分長文になったな~。…………合わせてくれていたのかな?不馴れな私に……君も優しいよね?やっぱりサイドエフェクト持ちがあまり居ないから、かな?(私は二人しか知らないな~。……まだ数人居るらしいけど【少し難がある奴等だ、……もう少しボーダーに慣れたら会わせてやる】って言実さんに言われたら当分は無理かな~。)ハァ~……せめて女の子でサイドエフェクト持ちが居ればな~。………出来れば同級生で、…私の気持ちや考えを共感や理解してくれるさ。…………いい天気だな~……………あっ』
好みは分からないが菊地原の性格は熟知してきた柚紀は、あの文章なら文句を言いながらも何か良い曲を選定してくれるだろうと期待していた。……夏休み中、例の騒動にてお世話になった風間隊に対して菊地原の案で一曲プレゼントしていた。外国の曲だったそれは後に"許しを請う歌"と誰かに教わり、その辺りは信頼しているのだ。曲の選定に時間がかかると思い、ぼんやりと青空を見て色々考えを口にしながらふと、……思い出したのだ
‐ ……以前、此処とは違う公園で曇り空の下でだが、出会ったあの蒼い少女。…"もう一人の自分"とも思える彼女が友達で、……同じサイドエフェクト持ちなら、どれだけ嬉しい事なのだろう ‐
そんな事を考えていた柚紀だったが、新着の報せで我に返り、菊地原のメッセージを確認して早速曲を検索し、曲を聞きながら音階や歌詞を覚える。音階は男性歌手のせいかマスターするために何度も聞く事となり、その間他愛のないやり取りを菊地原と交わしていた。因みに歌詞は一発で覚えた……と言うより"何故か知っていた"のだった
そして音階も覚え終えたので試しに一回歌うことを告げれば【お代はその曲の視聴券でいいよ】と言われた後に連絡を打ち切れば……念のため傍目から見つけづらい樹の影に荷物を持って移動し、更に首に下げていたあの翠の石付きペンダンドを外してポケットにしまうと、最後に公園内や見える範囲に人が居ないのを確認して、目を瞑り呼吸を整えて…歌い始めたのだった
~ 僕は君を 信じたから もう裏切られる事はない
だってもし裏切られても それが解らないから
どうか 君じゃなく ならないで ~