そんな菊地原の皮肉含めた言葉を聞いて『(クスッ)じゃあもう一曲歌ったらお邪魔しようかな？……支部に移動で寂しいのは分かるけど、冷たくしたら駄目だよ？地味に落ち込んでたよ宇佐美先輩』と柚紀なりの解釈をする。佐鳥達も宇佐美が玉狛に移動するのは知っており、時枝はだから作戦室を出て来たと察するのであった。そしてラストの曲選定を済ませればお約束と化している"メロディが流れる携帯を笹森に預け"、四人から距離を取り……歌い始める

〜　一人にしないで
淡く甘く、彩って…
もう離さないで
君は僕の生命…　〜

柚紀が好みそうなスローテンポな曲に加えて歌い出しの歌詞を聞いて四人の表情が複雑なモノとなる。それを一番に振り切った笹森が"自分達にだけ柚紀の歌が聞こえた理由"を内部通話で訊ねる。すると、一番最初に答えたのは意外にも…

〜　「どうして、ねぇどうして　キミの願いは
哀しみの雨に打たれながら咲いているの?」　〜

((そんなの鶴ヶ峰のサイドエフェクトが原因に決まっているでしょ？ナニ今更な事を聞いてくるのさ？))
((菊地原っ？！おま、それトリオン体なの？！？何でフツーの服を着てるのさ？紛らわしいから！！！))
((ウルサイな〜、僕には僕の事情があるの。それを他人に話す理由はない。…………で、何で特定の人にしか聴こえないかは二人に聞いてよ。…僕はサイドエフェクトの関係上お前と状況やら条件が異なるからね))
((みたいだね。以前市河さんが【柚紀さん相手限定だけど、通常とは異なる…真逆な事がとある条件下で能力が発動してしまう】って行ってたから、お前もそうなんだろうね。で、……佐鳥もどうしてかちゃんと理解出来てる？分かっているなら笹森に説明して上げてよ))

〜　もう大事なもの　傷つけたくない
その静かな微笑（えがお）を　ただ守りたい…　〜

菊地原の言い分には佐鳥も納得したが、時枝に説明を丸投げされた事には内部通話で文句をつける。が((彼女が好きならこの位ちゃんと理解出来てるだろ？解釈間違えは悲しませる元になるよ))と鋭い指摘をされてしまう。……確かに間違えた解釈は少女を悲しませる…笑顔が消える原因にも成りかねないので、渋々解説と解釈が間違えじゃないかの答え合わせを兼ねて話し始める

〜　その手を伸ばして…孤独さえ壊すほどに
終焉の時も
君が居るなら
怖くないよ
君は僕を照らす
唯ひとつの光　〜

((先ず、全員に聞こえなかった理由は簡単！……今の柚紀はあの石を持っていない。後は耳のアレがあるからサイドエフェクトの効果も最低限にまで抑えられている。…これは笹森にも理解出来るだろ？))
((……まぁ、それは流石にね。…………そっか、ゲート騒動時もウチと荒船隊の合同任務時もあの石を持っていたから、生身でもアレだけの事が出来たんだな。……ん？じゃあ、俺達が聞こえたのは何でだ？トリオン体だから、じゃないよな？小荒井達もそうだし))
((それは柚紀のサイドエフェクトが発動する条件が関係するよ！笹森は【あの能力が最大限に発揮される条件】って、ナニか分かってる？))

一番のサビ・間奏のタイミングでシンキングタイムを設けるが笹森は全く分からない様子。これに対しで((佐鳥も柚紀の歌を堪能したいから説明はとっきー先生、ヨロシク！))と二番が始まるタイミングで匙投げをする佐鳥に呆れながらも役目を引き継ぐ

〜　「ねぇ　キミはその瞳で何を見てるの?」
「出逢いは別れを連れてくる宿命なの?」　〜

((歌姫使用時を例に説明すると彼女も戦闘員も【脅威となる敵を倒す】って言う同じ目的を持って行動しているだろう？だけど、プライベート時は違うよな？………何故彼女は歌を歌う？))
((そ、それは………趣味と言うか、歌が好きだから、だよな？それがどう関係するんだよ？？))

〜　でも感じるすべては
繰り返しじゃない
さぁ信じよう
一緒にあの未来へ、羽ばたこう…　〜

((………まだ分からないの？差や解釈の違いあれど【好きって共通の感情が彼女の歌声を届ける鍵】だ。因みに【互いの想いの強さのバランスが取れていれば"初聴…初めて聴く曲だろうとはっきり聞こえるし"、偏っていれば途切れ途切れだったり聞こえない】。後は互いの信頼関係が一定以上満たしており、どんな事でも知りたい・この人には知ってほしいと思わなきゃ石やトリオン体なしだと彼女は普通の女の子と何も変わらない。つまりはその場に居なければ柚紀の歌…声は届かない。ま、彼女が不安で制御が疎かになった場合、それは当て嵌まらないけどね))

時枝の説明を黙って聞いている笹森は何かに気づいたらしく柚紀を一瞥後、真剣な表情で時枝に言おうとする。それに気づいた菊地原が((その表情を彼女が見たら多分怖がるよ？後、……大切な事を話すなら相手の顔を真っ直ぐ見ながら話すのが普通でしょ？))と指摘され、柚紀には背を向ける形になるが時枝と真正面から対峙し……確信を得る為にある事を訊ねる。それは……

〜　僕はここにいる　君と今見つめ合って
こんなに儚く
過ぎる一秒が
永遠なの
君と出逢うために
僕は生まれてきた…

ありがとう…、ありがとう…
まだ　伝えきれてないよ
幸せだよ…、幸せだよ…
その腕に擁かれて散りたい
どうか奏でていて、
何度季節を数えても、
『離れないよ』
この涙はそう、「…約束」　〜

((その物言いからして、時枝もそうなんだよな？お前も彼女が……………鶴ヶ峰が好きって事で間違えないか？今までそれっぽいなとは思ってたけど、性格的な事や彼女のトラウマとか複雑な事情があったから、……何か聞くに聞けなくてさ。菊地原は分からないけど、(チラッ)佐鳥も……だよな？))
((………………ま、笹森にはちゃんと言うべきか。……うん、おれは彼女が…柚紀が好きだよ。勿論恋愛的な意味でね。それでどうしたいかとか具体的な未来図は描けていないけど、………おれ以外の誰かが彼女の隣に居るのは嫌だって気持ちはある。それだけは、譲れない。))
((お〜！充らしい答えだね〜。佐鳥は隣に居るだけじゃ物足りないよ？オレは……彼女に笑っていて欲しい、幸せにした。可能なら過去の呪縛から解き放ってあげたい！最後の一つはオレ一人じゃ無理なのは分かるから、とりあえず悪化させない様にするかな？で、……菊地原は？))
((何で僕まで話す必要あるのさ？………その手の感情を全く抱いていない、とは言わないけど……多分向こうがその感情を僕に抱く事はないってのはオトで分かってる。だけど……自分の安寧の為にも、サイドエフェクトの先輩としても後輩を見守るべきとは考えてる。だからもし、……彼女の信頼を裏切る様な事をして傷つけたり泣かしたら…………僕が横から掻っ攫うから覚悟しててよ？))