そんなミニ三輪に迅が興味を持ったらしく「ねぇ、俺のも作って作って！！」と髪の毛を毟って柚紀に差し出す。少し躊躇したが、珍しい年相応…若しくは幼く見えるその姿にイヤとは言えず同じくミニ迅を作り出して迅に渡す。それからミニ同士が戯れ始めたのを横目に林藤が城戸に話し掛ける

「城戸さんの事だから"しらを切る"つもりだろうけど、……彼女は知ってるぜ？【旧時代のボーダーの方針や、近界民達との交流・交渉材料にトリオン体に関するノウハウをネタに使用し、そのやり取りは"翻訳機能を付ける前"から近界民と会話が出来ていた静樹さんがしていた】ってのをな。……文化も技術力も違う民族同士が交流を持つのは難しい。ならどうするか？………【相手が興味を持つナニかをネタにする】が一番って事だ。とは言え、旧時代は資金も不安定だったし静樹さんは医者やら父親としての役目もあってかなり多忙。更に言実ちゃんみたいな"ソフト系"が得意なエンジニアばっかで、基盤・基礎と言える"ハード系が得意な奴"はほぼ居なかった。……トリオン体が今くらいに実用化出来る様になったのは静樹さんや沢山の仲間を喪った後。……否定はさせねぇぞ？全て本当の事だからな」
「林藤さん貴方、……彼女に何処まで語ったのですか？まさか、………静樹さんの最後も全てを話したと言わないですよね？」
「一応躊躇はしたが柚紀ちゃんがソレを望み、俺はそれに答えたに過ぎない。だから怒るなよ忍田。……トリオン体に関するのはほぼ後付け的な話になったが、ほぼ自力で気づいてたぜ？最初は"静樹さんが居た時と今のボーダー方針は違う点"だけだったが、気になる事を話していくに連れて【静樹さんは"サイドエフェクト持ち"でその能力が強大だったが為に、黒トリガークラスのスペックの殆どを制御に回す必要があり、前線に立てなく裏方に徹する事になった。そしてその能力はどんなのであり"発動するトリガーは何か"も】……ま、本人が黒トリガーになっちまった今は推測でしかないが…………言実ちゃんなら、それが嘘か真か判断出来るだろ？」
『…………………………』

と、旧時代メンバーと言実の攻防戦が繰り広げられている中、鬼怒田と根津は柚紀が作ったミニトリオン体二人を別の思惑の元に観察をしていた。……本人達の友好度も反映されるらしく、ミニ三輪はミニ迅と関わっているのが嫌そうに見受けていたが、…いきなりミニ達が取っ組み合いの喧嘩を始めてしまう。それもセットトリガーも忠実に再現されておりミニ三輪は銃を構え、ミニ迅は風刃を構えていた。これには柚紀も慌てて『喧嘩は駄目っ！！』と仲裁に入るが"邪魔をするな"と言わんがばかりに銃弾と斬撃が柚紀に迫ってくる(ミニ達も柚紀に攻撃する気はなかったらしく、放ってから"しまった"と焦りと驚きの表情を浮かべていた)……かなりの至近距離にミニ達が居たせいで反応が出来ず、反射的に目を瞑り痛みを覚悟する柚紀。だが


-　……クイッ、(カターン)ズサーー！…ダンダン、ザシュッ！　-
「(シュン！)全く、自分の制御出来ないモノを創り出さないでよね。それで自分が怪我するとか洒落にならないよ？後………何でわざわざ鶴ヶ峰を抱えて距離を取ったんですか〜？…"風間さん"」
「……(シュン！)風刃の性能と例えあの弾丸がバイパーだったとしても"予想外な場所に移動すれば"攻撃が当たらないと思ったのと、咄嗟の判断でお前達に指示する暇がなかった。……後は一応建前上潜伏を命じられていたから"シールドで防ぐ"選択肢が俺には無かった訳だ。が、お前がそんな風に動くとは予想外だったぞ？"菊地原"」
『菊地原くんに、風間さんっ？！え？えっ？………じゃあ、歌川くんも居たり、するの？やっぱり』

室内に潜伏していた風間と菊地原のファインプレーで怪我を免れた柚紀は"二人が居るなら…"的な感覚で呼び掛ければ、歌川も姿を現す。風間隊が潜伏していた事に柚紀以外誰も驚きはしなかった。何故なら

「やっぱり風間隊を待機させていましたか。言実さんがこの場に同席するのは誰でも予想は出来ていただろうけど、……俺が干渉するのは予想外でしたよね？そして万が一"武力行使"に出た際、秀次だけじゃ俺と言実さんを抑えるのは不可能。風間さんだけでもいけなくはなかったですが"柚紀ちゃんがどう動くか未知数"、だから二人も招集した。ってな話は置いておいて、……丁度"嘘を見抜く専門家"が姿を現した事だし、色々言実さんに聞いてみましょうか。主に静樹さん関連の事をね」
「嘘を見抜く専門家とか言いますが、………言実さんが相手だとかなり難しいですよ？この人が呼吸や心拍数を変化する理由は鶴ヶ峰関連しかないし、その静樹氏に関しても嘘か真かを判断出来る第三者が居ないと結局は偽りか否かを判断するのは無理じゃないですか？」
『うむ、菊地原の言い分は一理あるな。ならば……【兄さんから柚紀が受け継いだモノ】を使うとするか。…………私の心配は不要だ、これが一番手っ取り早い故にな』

潜伏していた理由はさておき、迅の誘導の元に、この中で静樹はを一番知っているであろう言実に兄に関する事を訊ねる流れとなる。……城戸含めた上層部も反論せずに居るのでそのまま進行するが【言実の並外れた冷静さと答えを言実しか知らない状態な現時点で、それを逆手に取ったイカサマ】を危惧する菊地原。これに対して言実自ら柚紀に協力の元、予防対策を打ち出す。その方法は

『鶴ヶ峰言実。貴女は私がこの空間に居る間、嘘偽りを口にするのを禁止を命じます。もし"盟約を破れば暫くの間、その声を封じるさせて頂きますが宜しいですか？"』
『承知した。ならば"偽りを口にしなかった場合、今夜のおかず・酒のツマミ全てを柚紀、お前が作れ"。それが条件だ』
『(コクン)分かったよ言実さん。では双方の同意を得た事により
『今此処に盟約を結ぶ』
『『(スッ)盟約成立（アッシェンテ）』』

-　キイィーン………ガチャリ、ジャラジャラー　-