それから検査室の隔離は言実と木虎・シロは一日のみで済み、柚紀と嵐山も更に一日で基地内でなら自由に動き回る許可が出た。尤も嵐山は検査室から出れる様になると言実に頼み込んでトリオン体を使用条件で一時帰宅をしていた。やはり家族が心配だった様子だ。そしてインフラ整備も徐々に進み、隊員達も自宅に戻り始めた頃

『えっと、………初めまして、ですよね？ちゃんと会うのも通信で会話した記憶もないですし。………………鶴ヶ峰柚紀です。その、……女王討伐に発展したあの時、多大なご迷惑をお掛けしてスミマセンでした！！(ペコッ)後、お訪ねするのもかなり遅くなってしまって……ごめんなさい(シュン)』
「………………気にしてないからそんなに落ち込まなくて大丈夫よ。米屋くんから【貴女なら必ずウチに訪ねに来るから待っててくれ】って言われたたし、……三輪くんが言実さんとの仲が、アレだったから時間が掛かるのは分かっていたもの。……まだ名乗ってなかったわね、私は月見蓮。この三輪隊でオペレーターを勤めているわ。後はそうね、……………元東塾の生徒でありあの太刀川くんの幼馴染み兼戦術の師でもあるわ。そう言う意味でなら章平くんも弟子的なポジションかしら？」
『へっ？？！あ、……あ〜そっか。あの戦闘狂な太刀川さんが意外と戦局見えてるのって月見先輩のお陰か〜！後、古寺くんとはよく戦術に関する事で話が盛り上がります！！なら、先輩に対しても同じ様な事を話せば良いのかな？(コテン)』
「………(ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ)女の子相手なら戦術とかよりもっと楽しげな会話が私はしたいわね。例えば……このお土産にくれた和菓子の事とか」

かなり前から柚紀もだが月見も志願していた二人の対面が果たされたのであった。因みに同席しているのは三輪と米屋の二人で、スナイパー組は所謂"鈴撒き"に参加していて不在であった。そして問題なく話が進み和やかな雰囲気となった、その時

-　コンコン　-
「こんにちは、橘高と藤丸です。蓮に呼ばれて来ました」
「！………今開けます。(ピッ、ピッピッ…-　ウィーン　-)どうぞ、ですが今は来客中ですよ？」
「うんなの知ってるわよ！私達もその来客の子目当てで来たんだから！！で、噂の歌姫ちゃんが………………意外と小さいわね。つる姐さんがあの身長だし、噂の"髪の毛が長い"女子は姐さんと同じ位のって聞いたけど」
「あ〜、………それ野々村ちゃんと内容ごっちゃになってますよ？姪である柚紀ちゃんは今でこそそれなりの髪の長さですが、ちょっと前と言うより噂が流れてた頃は肩……鎖骨辺りまでしか無かったので。…………でも蓮さん、なんでお二人を呼んだんですか？？」

月見と同級生でオペレーターの橘高羽矢と藤丸ののが手土産持参でやって来たのだ。どうやら二人共目的は柚紀に会う事らしく、橘高はジーっと見つめ、藤丸は予想していたイメージがフブキと混ざってしまっており些か複雑な表情をしていた。そしてそんな二人とは名前も存在も知らなかった柚紀が反射的に自分の後ろに隠れた姿を見て、……再度自然な流れで頭を撫でて落ち着かせる

「(ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ)大丈夫よ柚紀ちゃん、二人とも私の友人だからそんなに警戒する必要はないわ。で、二人は頼んだモノちゃんと持ってきたのかしら？」
「えぇ！！と言うより(…カサッ)蓮からこんなお願いをされるなんて予想外だったわ。ナニに使うの？」
「うんなの"きる以外にあるのか？"……あ、私のお題は楽だったし選ぶのも面倒だったから"定番から限定のチョコ菓子"を手当り次第買ってきたから、(ドン！)お前達も食べてくれ！！」
「………ご丁寧にどうも。(お菓子は兎も角、きるものって何だ？……髪でも切る為の散髪セットか？たがその場合言実さんの許可が必要にならないのか？)……鶴ヶ峰は平気なのか？」
『(ｶｻｯ……チラリ)えっと、まぁ、はい。その……こっちに来てから何度も経験してますし、慣れましたから大丈夫です。痛くないし私も、ちょっぴり楽しみな事なので』
「…………………………なら良いが」

と、ただ会うだけではなく別の目的地もあるらしい様子だ。そしてそのまま奥にある和室に四人は姿を消す。女子同士ではあるし柚紀も平気そうだからと考える男子二人だが「おーこう改めて見るとかなり長いなー。……いっその事思いっきり短くするか？」「でもやり過ぎると結構スースーするし、慣れてないと違和感半端ないよ？」「………柚紀ちゃんはどうしたい？」『えっと、……先輩達にお任せします』的な会話が聞こえてくると、やはり色々心配になり…二人ともこっそり覗きに行き、会話内容を理解すれば「紛らわしい会話は止めて下さい！何か心臓に悪いッスから！！」と米屋が苦言を呈し、女性四人が意味が分からず不思議そうにする中「………ちゃんと内容を確認しなかったコチラの非ですから気にしないで下さい」と、些かお疲れな口調で話を打ち切る三輪を心配する柚紀であった
そして和室での女子会が終わり四人が出てくると、月見が当初の目的であり太刀川と協力条件として呈示された"トリオン製の花火"のお披露目。その頃にはスナイパー二人も帰ってきており色々"丁度良い時間"となりお開きとなったのであった。因みに"きる"のは後日改めてとなり、藤丸が持参したチョコ菓子は流石に三輪隊だけでは食べ切れない量が残ったので各自で分割して持ち帰る事となった