ゆっくりと、でもはっきりとした口調で二人を一瞥しながら質問をする柚紀。因みに体向きは佐鳥達に対してはやや後ろ向きな状態なので……目に光がないのは見えていない。が、フブキは分かっていた。……あれよりは軽度だがシロがコンタクトの下ではあんな目をしているのだから。が、今はそれを指摘する事ではないので口を噤んでいると『じゃあ、コッチのフブキから。次はコッチね』…柚紀が順番を指名して来たのだ。片方では無く、両方を

「(ガシガシ)……別に大した理由じゃないだろ？"俺以外にネイバー被害者が出ない様にしたい"って思う奴なんてよ。……嵐山さんだって、そんな感じで隊員募集で記者会見してたしな。………次、ソッチだけど(…ニヤリ)"同じ事を言う"のはナシだぜ？」
「……………………"この街に残るきっかけ"が欲しかったからだ。……あの時のシロを一人にさせれるかって！………親戚が嫌いって訳じゃねぇが、この街とはそれなりに離れているから簡単に会いにこれねぇ。やっぱり生まれ故郷を……思い出の地を離れるのは忍びねぇよ」
『……………それじゃあ、次。……同じ順番で答えてくれるかな？それを聞いたら……偽物がどちらなのか分かるから』
「…………………………一番に、頂点に立つ事だ。まだあの太刀川さんや忍田さんには遠く及ばないが、……お前を守るにはそれ相応の実力を示して権力を手に入れる必要があるからな。別に権利さえ貰えるなら一番にならなくても良いから、これじゃあ目標にしちゃ曖昧か？そうだなぁ〜………マスタークラス、元より一人前と認めて貰う事。これが今の目的だ」
「マスタークラスかぁ〜……(ガシガシ)…ま、確かにそれが一番身近な目的"だった"が、……(…スッ)お生憎今は違うんだよな〜。……なんか明白な時期は知らねぇがどうも"オールラウンダー基準"が変更されるらしい。今は6000だろ？それが8000になるんだとさ。理由は"オールラウンダーを名乗る割には扱うトリガーに差があるのは如何なモノか"って上層部で議題になったらしい。………もう少し難しくする必要があるだろうな…例の騒動の主犯であったスコーピオン使いの野郎だって、一応オールラウンダーらしいが…………ガンナーとしての腕前はそこまでの実力は無かったしな。で、そんな事より今の目的だろ？………"ダチの支えになる事"だ。これにはシロも含まれてる。……俺は二人みてぇな能力はない。だが、ないからこそ支えになれる。具体的に言うとしたら、"特別な事はしねぇ事だ"。……特別扱いせず他の奴と同等の接し方をするだけだ。…つまり怒る時はきっちり叱るから、…………泣くなよユズ。お前に泣かれると、俺だろうと色んな奴の反感買うのは明白だし、……あの二人を特に敵に回すのは御免だ」
-　ザーザーザー、パチパチパタパチ…　-

本格的に雨が降り始めた状態、雨避けでもあるシールドを解かずに二人の言い分を聞いていた柚紀。……ゲートも開く気配もなく敵を殲滅し終えた三輪達もそんなやり取りを見守っていた。………分からないのだ、やはりどちがフブキ本人なのかが。二人の答えは確かにフブキらしいモノだ。が、"オールラウンダーの基準変更"を隊長二人も知らない情報なので、それを一隊員であるフブキが何故……そんな疑問が横切り【長々と語ったコチラがニセモノか】と疑念を抱いた。その時

-　パチン、ｼｭﾝ、ｷｲｨｰﾝ……ボタボタボタ、…パチパチパタパチ…　-
『(…ｸｽｯ)……珍しいね、フブキが長々と話すなんて。後……そんな事考えてたんだ。ちょっと意外かな？それとさ、オールラウンダーの件、……誰から聞いたの？(クルッ、コテン)』
「………陽菜さんだ。"オールラウンダーの基準変わるからもしボーダーでの具体的な目標を立てるなら、ポイント五桁にした方が目的地が変わったりしない"だとさ。ってか別に俺はポイント何か気にしねぇ、そりゃあ勝てたら嬉しいが"俺の敵はあくまでも誰かに危害を加える輩"だ。仲間……志が同じの奴らじゃねぇ。ってか、…………何時から気付いてた？俺がホンモノだって」
『………(…スッ)ヒ・ミ・ツ。気づけたのはそれこそサイドエフェクト有りきだからさ、フブキは真似できないよ？(…ニコッ)……そろそろ、帰ろう。もう、…限、界……(……フラッ)』
「「「「「「柚紀(っ！？/ちゃんっ！！/)鶴ヶ峰/(先輩っ？！！？/っ！！)ユズっ！？！」」」」」」
-　ダッ！！　-

自らに施していたシールドを解き、片方のフブキに付属させた柚紀は雨に当たっているフブキを見据えながら最終確認をする。……それを聞いて満足したのか柔らかな笑みを浮かべたその瞬間、その場に崩れ掛ける少女目掛けて"六人"が駆け出す。そして

-　使用者の異変検知　セーフティ発動　-
-　……変更点認識　"トリオン体自動解除します"　-
-　……ビュウン！！……ダキッ！…キイィーン、バチバチバチバチ…　-
-　スウゥ……………ドーン！……ガコン！！………ドスンっ！！　-

「なっ？！(バチャーン！！)こ、コレはっ！レッドバレットか？！！…………いきなり何しやがるんだよ！三輪先輩！？」
「………今、どの角度・方角から打たれたか認識してないのかお前。位置的に俺がお前にレッドバレットを打つのは不可能だ。……射線上にこの馬鹿が居るからな。それに、弾の速度はかなり遅くなっていたからホンモノの野々村なら、…"恐らく弧月で薙ぎ払っているぞ"？」
「つーか、固定シールドで閉じ込められて"何もしなかった時点でアンタがニセモノ確定"なんだよ。……このフブキちゃんが"雨に打たれている親友を見て平然としてる訳かねぇ"………だろ？」
「………正直言って速攻で駆け寄って雨避けになりたかったが❲合図が出るまで待て❳って陽菜さんから通信が入ったから仕方なく我慢してた。ってかさり気なく"フブキ呼び"スンナ！それを許すのは同性のダチだけだ！！これは先輩だろうと、譲れねぇからな！！？因みに俺ならシールドぶち破ってただろうな〜。……陽菜さんから❲あのシールドは見掛け倒しだ❳って待てついでに聞いたからな。ってか、何でユズはベイルアウトしなかったんだ？」
「それは後で説明するとして…
-　ズシリ！！　-
っ！！………賢、柚紀ちゃんを頼む！？………三輪、そのニセモノの対処を頼んでも良いか？流石に気を失ったこの子を雨の中に居させる訳には行かない」

限界を迎えて柚紀のトリオン体に仕込まれたセーフティが発動した。…までは誰もが予想通りだったが換装が解除された少女が濡れている地面に倒れ込む前にテレポートしてきた嵐山が受け止め、コンマ一秒ほど遅れて飛んで来た時枝がシールドを雨避け代わりに使用する。佐鳥も木虎にシールドで雨を防いでもらいながら駆け寄り嵐山から柚紀を託される
そしてシールド内で状況について行けない偽フブキは"奈良坂が放ったレッドバレット狙撃"により動きを制限され、濡れた地面に叩きつけられる。そんな相手を冷ややかな眼差しで見下ろす三輪と米屋、に加えて米屋の声掛けに反応するフブキも気になるのか柚紀ではなく、ニセモノの側に。因みに村上は"負傷しているフブキ"に追随する形で後ろに控えている。……………そう、ニセモノはあろう事か村上と共に来た太刀にて手合わせをしていた方のフブキだったのだ