「………おれの、…知り合いの話だけどさ……ソイツ、…好きな子が居るんだけど、相手は自分とは別な奴が…どうやら好きっぽくてさ。で、その子が好きだと思われる奴が、おれに話を持ち掛けてきた奴の友達。…………こんな時、どうすれば良いかって、相談受けたんだ。お前ならこの位の経験あるだろう、って。…………(ハァ〜)おれ、恋愛経験豊富じゃないし、異性とだって、……そこまで親密な関係を築いた事ほぼない。綾辻先輩や木虎は同じチームだし、ある程度信頼関係を築かないと色々支障が出るのと、……野々村は性格的に男子と同じ感覚で接してるし、市河さんは……そんな関係じゃない。彼女は、……アレかな？"共通する事柄によって結ばれた同志"的なので、そう言う感情をおれは抱いてない。だから、………相手の期待に答えたくても答えれない、でも何かアドバイスしなきゃって、考えてて………それで…」
(……スッ)【さっき時枝くんは言ったよね？無理と自覚して助けを求めるのも勇気だって。この手の事なら、佐鳥くんに聞くのが適任そうだけど…………多分身バレ恐れているよねその相談主の子。……私もさ、あんまり恋愛に関しては経験はないよ？ただ、……い、一応女の子だから興味はあって漫画とか他人から話を聞いたりして、その…………ちょっと独自の解釈をしているけど、…聞く？参考がてら】
「…………そう、だね。嫌じゃなければ鶴ヶ峰さんの考えを聞いてみたい、かな？(別に出水先輩を疑いはしないけど、恋愛感情に関しても彼女が抱く感覚は他とはまた違うかも知れないし、……やっぱり気になる)」

そう、【嘘ではないが、一部の詳細説明を省く】このパターンだ。これはどちらかと言えば柚紀がよく使う話し方で、時枝の場合は【色んな事実を組み合わせて話を作り説明する】であるが、結局は"話したくない事を一部伏せた"上での話し方となる。そして今回は【自分でなくとある人物からの恋愛相談】として話せば、柚紀は事情を察して追求はせず時枝にアドバイスしようとする。……強がっても仕方ないので素直にご教授を請えば、少し考える素振りをした上でこう切り出す

【その相談主さんはさ、……結局"好きな子とどうなりたい"のかな？両想いになりたいの？告白したいの？先ずはそれによってやっぱりアドバイスが変わるかな(・∀・)d】
「…………どうなんだろう、そこまで多分考えていない感じ、かな？話を聞いた限りでは何か"好きになったのは良いが、……好きになったからこそ相手の視線の先に自分じゃない誰かが居る"のに気づいて戸惑って、って感じだし」
【ふむふむ、先に続く道のりが険しくて戸惑っている感じだね(´-﹏-`；)ん〜っとね、……じゃあ先ずは"見ているだけじゃなくて少しずつ行動を起こしてみる"感じかな？例えば朝の挨拶や帰り際に頑張って挨拶をするの！人は意外と律儀だから、名付きで挨拶をされれれば必ず返事を返すなり相手を見る筈！向こうが自分を認識しているなら良いけど、話したことがないとかクラスが違うと、意外と"同学年の一人や同じクラスメート"的な感じで他の人に印象が埋もれてしまうし】
「……一応、顔見知りかな？会話もそこそこ出来るらしい。ただ、女の子がグイグイ動いている感じで、向こうも付き合いが長いせいと言うかこう、庇護欲を感じる子だから気にしてる感じ？彼奴がその子を大切にしているのは傍目からも分かるけど、……やっぱり言えないし聞けないよ普通はさ、"自分が好きな人がお前の事が好きみたい、お前はどうなんだ？"とか。少なくともおれはそう思った。だから、迷っている。……どうするべきなのか」

あくまでも相談主は別で、自分は知り得る情報や考えを交えながら話す事を意識している時枝。そのせいで視線が彷徨っているのを見て……柚紀は何となく分かってしまうのだ。彼が語る悩みを抱えている人の正体を。が、それを指摘するつもりもなく更に言葉を紡ぐ

【それは彼女の気持ちであって、彼の気持ちではないよ。最初に言ったでしょ？"その人とどうなりたいか"……例え"誰に何と言われようと譲れない想い"が行動理由となり、原動力となり、主軸となる。………そう願うのなら、そうなる努力をすればいい。行動を起こせば良い。…最初から失敗を恐れていては何も始まらない、失敗して傷つく事もあるけど、そこで目標を破棄したって良い。続けたって良い。それで後悔したって決めたのは自分であり、誰のせいにも出来ない。するべきではない。あくまでも自分の願いを叶える為に言動をしているのだから。…躓いて誰かに助力を求めても良いけど結局決めるのは自分。少なくとも私はそう(グ～)……思う、よ？う〜〜、お、お腹空いた〜(*μ_μ)】
「………(クスッ)寝ててご飯食べれなかったもんね。お弁当あるなら今鞄持ってくるから待ってて(……どう有りたいか、か。今はそんな明確な未来を描けない、でも……この気持ちも嘘じゃないけど、彼女の状況からしても口にするのは、逆に悩ませて危ないか。今は無理でも何時かその時が来るまで、おれがするべき事は…………佐鳥にも譲りたくない事、それは…多分)」

タブレットに表示された文字を見ている途中だが、空腹を知らせる音を聞いた以上一時休息を余儀なくされ、行動を起こしながら何となく考えを纏めている時枝。纏めて置いてある鞄の中から柚紀のを探し当てお弁当を探して手に持ち、恥ずかしげにしていた少女がお弁当を見た瞬間に瞳を輝かせる。それをバッチリ見られたアタフタする姿を見て、思わず笑みを溢す時枝を見て……更に恥ずかしそうにする柚紀であった