「(神の子に、巫女に……い、生贄っ？！！本当にどんな環境で彼女は育ったんだよ！！？って、……過去に起きた事は変えれないし悔やんでも仕方ない、か)……(ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ)………そう、だね。お兄ちゃんも痛いのは見るのも受けるのも嫌だよ。だから"柚紀ちゃんと同じ"だね！！……(ｺﾂﾝ)大丈夫、君が望まない限り特別扱いはしないよ。柚紀ちゃんは柚紀ちゃん、………(フワッ)泣き虫で物知りな可愛い一人の女の子、だよ？」
『…………………………(ポン！……ギュッ！！)』

頬に手を当てて放出されたトリオンで怪我の治療をする小柚紀の発言に、流石の佐鳥も驚きや怒りを感じてしまうが……幼くても柚紀に変わりない少女が自分の雰囲気の変化を察知してしまうかもと、何とか冷静さを保ち"この年齢の子は自分の言い分を肯定されたい、後は褒めると凄く嬉しそうにする"と、佐鳥自身の経験から言葉を選ぶのだ。そのお陰で子柚紀は泣き止むが、最後の言葉を放つ際に浮かべた【自分に向けられた慈愛に満ちた佐鳥の笑み】を見て……顔を赤らめる胸元に顔を埋める。その反応を見て(あれ？この反応って……)と、何かを言おうとしたその時

-　ドタドタドタ…ドタドタドタ…ドタドタドタ……　-
-　未確認のトリオン反応があったのはこの辺りか？　-
-　間違いありません！……この時間帯は隊員の大半はまだ学校。我々が対処するしかない　-
-　万が一を考えて護身用トリガーを使用しろ、戦闘経験のある者は訓練生用のトリガーを使用許可する！　-
-　鶴ヶ峰チーフや寺島チーフの手を借りずともこの位の問題、自分達で対処してみせるぞ！！？　-
「！！(何だ？何だ？？複数の人が、……コッチに向かってきてるのか？-　ビクッ！！…ギュッ！！！…ｶﾞﾀｶﾞﾀ　-)！！……(ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ)((……ヒナ姐、状況はどうな……))って、確か今は通信系駄目になってるんだっけか？………ま、どうにかなるか！(…ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ)大丈夫、お兄ちゃんが居るからね〜(……スタスタスタ)」

何やら騒がしくなって来たのを察知し、話し声も聞こえてきた佐鳥は一瞬"この少女をやって来るであろうエンジニア達に引き渡すべきか？"と考えたが、明らかに小柚紀が怯えて自分に縋ってきているのを見てその考えは消去される。……少女を戻す方法も未定で、連絡が取れないので増援も見込めない。だが、対抗手段は全く無い訳ではない。………とりあえず、場が悪いので少しだけ移動をする。……息苦しさや息切れがしないのを感じながら、"間合いを見誤らない様に"気をつけつつ
そして暫くするとエンジニア団体を目視で確認出来るようになればうさちゃんぼうしを小柚紀に被せ更に佐鳥が着ているジャケットを羽織らせると、コチラから話し掛ける

「あれ？皆さんお揃いでどうされたんですか？？それも、何だかお疲れな感じもしますが大丈夫ですか？？？………あ、佐鳥達と違って生身だから運動不足が祟ったんですかね？駄目ですよ、そんなんじゃ！！インドア派な皆さんでもきちんとした食事や睡眠、運動は大切です！？……寺島さんはアレですが、おつるちゃんは気を使っているみたいですからね〜。って、そんな話は置いておいて………ご用件、窺います。こんな所にナニをしに来たんですか？」
「君は嵐山隊の、………君こそ何故こんな時間に基地に居るんだい？まだ学校、だろ？普通」
「あ〜、えっとですね〜………オレ、幼稚園に通う妹が居るんですが、そこから【妹さんが熱を出した】って連絡が入ったんですよ。……ウチ、共働きで今かなり多忙な状態でして仕方なく迎えに行ったまでは良かったんですが……自宅の鍵を忘れてきちゃって、家に連れて帰れなくて仕方なく此処に連れてきたんです。で、丁度お昼時でお腹が空いたって言われて食堂に連れて行こうとしたら、熱が上がったらしくて寒がっちゃって………どうしようかって時に貴方達がいらっしゃった感じです。……で、佐鳥にご用…って訳じゃないなら失礼します。この子に栄養のあるモノ食べさせなきゃいけないので！ナニが良いかは夏休み中に柚紀ちゃんの看護で勉強済みですから大丈夫です……多分。では！(スタスタスタ……)」
「ま、待ちなさい佐鳥隊員！！……我々はこのエリアで発生した"未登録のトリオン反応"の調査に来た！そしてレーダーからして……(…スッ)"その抱えている子"が根源と断言出来る。悪いがその子をコチラに渡してもらおうか？後、君のは正隊員用のトリガーだから感じていないかも知れないが、………今、この空間はとても不可思議で放置してはならない状況となっている。その手の事を調べるのが我々エンジニアの仕事だ、だから原因究明の為にも"君が妹さんと偽るその子を"コチラに。……嘘をつくならもっと工夫をする事だな。……髪色が幾ら何でも違い過ぎる」

そんな攻防戦を繰り広げる佐鳥は"自分の言葉選び"に少しだけ後悔をした。【食堂へ向かう途中、ではなくその帰り】にすればスムーズに作戦室に逃げ込めたと言うのに。が、咄嗟に作り出した設定を今更変えるわけにも行かないのでこのままどう凌ぐかを、小柚紀を気にしながら模索する。……うっすらと顔が赤く、少し呼吸が荒くなってきた気がする佐鳥は"長期戦は不利"と判断したのだ。そして次に発する言葉を選べば

「………まぁ、確かにこの子は佐鳥の妹じゃないのは認めますよ？ですが、体調が優れないってのは本当です。看病もですが、"幼女若しくは妹の世話をした事のある隊員や職員"なんて限られている。………あ！！嵐山さんが居ましたが、確か大学入試に直結するテストが…とかで今は勉学優先ですから、仕方ないですよね。後は…………とりまるが居ますが、アイツはボーダー以外にもバイトしてますし、一応所属は玉狛になるのかもう？……簡単に呼び出せないって訳です！！！その分、佐鳥も高校受験控えてますがサイアク"ボーダー推薦"がありますから平気です！！と、言うより………(ポンポン)この子のお世話を"少しでも危害を加え兼ねない貴方達に"、任せるつもりはオレにはない。そんなの…………おつるちゃんが認める訳がないんだから」