学校から一番近い秘密経路から基地に一直線に向かう佐鳥、その道半ばに待ち構えていたのは

「あれ？当真さん？？えっと………おつるちゃんに頼まれてオレを待っていた、的な感じですか？」
「まぁな。思考力低下していてで何処に集合かを関係者に伝え忘れたってつる姐らしからぬミスをしてたから、隊長が強制的に休ませてその役目を引き継いだって訳だ。……アイツを基地外で療養させているから、必然的に負担は家族である姐さんにのしかかっている。手助けしてやりたいが、基地での噂や出来事が声消失の原因だ。そんな場所じゃ回復は望めねぇよな、やっぱり」
「っ！？………えっと、嵐山さんから"スナイパー限定で招集"と聞きましたが……一体ナニが判明したんですか？」
「………それは集合場所に着いてから話す。…奈良坂とかを待たせているからさっさと行くぞ」

いつの日かの様に冬島……ではなく当真が待ち構えており、言実の不在と名は出さないが"柚紀の療養は上手く行っておらず、苦戦している"的なニュアンスを匂わせる世間話をすれば何処かに向かい歩き出す。それを追うが向こうがかなり足早に動くのを見て、反射的に換装をして後を追う佐鳥。が、その頭の中は二人の鶴ヶ峰の事で頭が一杯で気づかなかったのだ。……冬島のスイッチボックスによってワープさせられていたのを。窓がないので同じ壁や床で意外と気づかれないものであり、柚紀が迷子になりやすい要因の一つであった。そして「着いたぜ、此処だ」と言われて中に入ったその先には

「……い、出水先輩と………嵐山さんっ！？ってか此処って…冬島隊の作戦室っ！！？えっ？ま、待って下さい！？何がどうなっているんですかっ！！？」
「………済まない賢。朝イチで連絡したあれはお前だけを基地に呼び出す嘘、だったんだ。こんな事を……仲間を騙す事なんて隊長としてはあるまじき行為なのは分かっている。だが、…………もう、そんな事を言ってられない状況にまで事態は悪化していると、理解してくれ」
「……佐鳥だけを呼び出す？じ、じゃあ出水先輩や当真さんが此処に居る理由って一体…………」
「そりゃあ、大馬鹿で阿呆で間抜けで男として最低な佐鳥をとっちめる為に決まっているだろ？って口で語るのも面倒だよな、……始めましょうか冬島さん」

トリオン体の出水と嵐山、奥の方にはパソコンを操作している冬島が待機していた。状況が飲み込めず、説明も満足にされないがまま作戦室から三人の姿が消える。行き先は……

〜冬島隊・トレーニングルーム〜
-　ｷｲｨｰﾝ　-
「(スタッ！)！！……此処は、❲市街地Ａを模したトレーニングルームだ。俺お手製のオリジナルステージでも良かったが、それだと"お互い戦いづらい"からな❳戦うって、何でそんな事する必要があるんですか？！」
「理由か？……お前が俺の有り難い忠告を無駄にしたからに他ならねぇよ！！佐鳥、俺はお前に言ったよな？【何時まで寂しい思いをさせるんだ？！とっととあの子に告白して幸せにしてやれ！！】って。それなのに、(キイィーン)……何であの子の、…柚紀ちゃんの側から離れた？！答えろ！！！(ドドドドド)」
「っ！？(ｷｲｨｰﾝ……ガガガッ！)さ、佐鳥にだって考えや事情がありま…「(ドーン)…それ、柚紀に話したか？話してねぇよなぁ〜、でなきゃ…あんな状態になる訳かねぇんだよ！！」くっ！？(シュウゥー)……ニ対一とか狡いですよっ！先輩として大人気無いとも思わないのですかっ！！？」

転送されるや否や出水に弾撃と問答をされて、それを回避する佐鳥だがそれを当真が許す筈も無く容赦ない事実と共にヘッドショットを決め打ちする。直ぐに再生された佐鳥は"完全に自分が不利な状況"だと訴えるが、それを聞く耳持たない出水は全攻撃発射体制のままこう返した

「卑怯？……まだ俺達だけなのを逆に感謝して欲しい位だぜ？本来ならお前を叩きのめしたいと感じているのは、風間さんを始めとして沢山居るんだ。特に野々村ちゃんがかなり不服だったらしくて納得させるのに苦労したんだからな？……ま、柚紀ちゃんは色んな人に可愛がられている、妹的な存在であり護ってあげたくなる子。そんな子がお前の"下らない意地かプライド"かは知らねぇが、ちょっとした配慮不足で"命の危機に瀕しているんだぞ"？これを普通怒らずにいられるか？！」
「(マズいっ！？隠れなきゃ蜂の巣だ！)(ダッ！！)そ、そこはオレの代わりって、とっきーに頼みました！なのに命の危機って、……とりまるや他にも皆居るのに、……"彼女は一人ぼっちじゃない"のに何でそんな事になっているんですかっ？！」
「(……プチン)(……キイィーン)何でって、…オイコラ佐鳥賢！！お前は誰かの代わりか？！もう一人自分と同じ容姿や性格の奴が居てあの子を護っていたのは……"好きになったのは"自分じゃないとか言うのか？………違うだろ？！！(ドドド！ドド！……トドドドド！…キイィーン)誰かに言われたからじゃなくてお前自身が鶴ヶ峰柚紀って少女を護りたいって感じたんだろ？！他の誰でもない自分が彼女の側に、隣に居たいと願ったんじゃないのか？！(ドドドドドド…)だから俺や米屋、終いには嵐山さんにすら嫉妬した！あの子が"好きになる確率が低い相手"だと分かっていたのに！！少なくとも今のあの子は……柚紀ちゃんが会いたがっているのは他の誰でもないお前だ！！！(ドドドドドド…)逃げずに何とか言いやがれ！！？そうやってずっと保身に走るのかよ？！なら、……逃げ道を塞いでやるよっ！！(キイィーン…)」

-　全攻撃追尾弾（フルアタックハウンド）！！　-

全攻撃の体制を取っていたが最初は時間差で数回に分けて放ったり、メインのみ・サブのみで撃っていたが中々当たらないのがじれったく感じて全攻撃…フルアタックを放つ出水。この時にハウンドを使ったのには理由がある。……佐鳥はイーグレットはおろかバックワームすら着用しておらず目視出来る範囲に居るのだ。それだけ彼は見た目以上に冷静さを失っており"佐鳥らしさ"が出せていないのだった。それを狙撃ポイントから観察している当真は"如何に本音を引き出すか"を模索していた。それと同時に"佐鳥の覚悟を確かめる手段"も講じている。……ある程度の言動を示して貰わなければ、言実を始めとするメンバー全員が納得しないのだ。責任重大である