57.和解の曲〜赤星一等星編〜(122.
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
寒くなってきて暗くなるのも早くなってきた中、帰宅途中の嵐山は公園で一人黄昏れていた。太刀川隊含めた三チームによる遠征任務が数日前となり、亜種問題も含めて今のうちに鋭気を養う為に今日は非番でボーダー隊員の同級生も含めて勉強に勤しんだ帰りである。が、そこには迅の姿が無かった
「迅の奴、やっぱり大学には行かないつもりか?……ま、ボーダー的にもサイドエフェクトを十二分に活用するには学生としての縛りはない方が良いのは分かるが、…………これは本人が納得しているなら俺がとやかく言う資格は無い、それは分かるが(ハァ〜)」
確かにこの街を守るボーダー隊員としては間違えではないだろうが、迅悠一としての一人の人間の人生としてコレはどうなのかと思わず考えてしまったのだ。そして、それとは別にある事も脳裏を掠めていた
「…………そう言えば最近、柚紀ちゃんが不安定過ぎるとか言ってアイツ学校を頻繁にサボっているが、…大丈夫か?卒業出来るかも危うくないか(……流石にもう傍観者でいる訳にもいかないよな)……コレは賢や充の問題だから本当は手や口を出したくないんだがな〜(ハァ〜)」
「ん?……嵐山さん??そんな所でナニしてるんですか?」
「!?……野々村ちゃん!?どうしてこんな所に?賢達と同じ中学って事は君が住んでいるのはこの地域じゃないよな?」
「まぁ、そうですね。俺が此処に居る理由は少し先にある剣道道場に顔出しして、その帰りな感じです。それはそうと、……何か顔色が優れないですが、疲れ………いや、何か悩んでいますよね?シロやユズも精神的に疲弊してると似たような表情を浮かべているんですよね〜。……あの佐鳥の馬鹿がナニかやらかしましたか?」
制服姿のフブキが通り掛かり嵐山に話し掛けるのだった。反射的に笑顔を浮かべるが、感覚派であり隠し事を良くする親友二人が居るフブキには見破られてしまう。その口調や表情や雰囲気から"誤魔化すのは無理"と判断した嵐山が事情を話そうとした、その時
- シュ、シュシュ……シュッ!! -
「ん?!今、何か…「カゲ先輩に、諏訪さんに村上に……当真先輩か?何でトリオン体何だよ?」!……君は生身でも動体視力は良いみたいだな。だが、なんで街中でトリオン体(- シュン! -)……野々村ちゃん?」
「こちら野々村。えっと……シロか陽菜さんか、若しくは忍田さん、誰か応答願います」
❲ハロー、巽お姉さんだよー。どうしたのさフブキ、いきなり換装して通信何かしてきてさ〜。イレギュラーなゲートが発生した訳でもないでしょうに❳
「……街中で俺以外のトリオン体になって疾走している奴を見掛けた。ってかあの面子、…………今の時間ユズと飯食っている筈だろ?ナニが起きたんだよ陽菜さん、見た感じ肝心のアイツは居なかったぜ?」
「!!?」
ナニかが通過したのは分かったが、誰かは判断出来なかった嵐山に対してフブキはきっちり見分けており更に今からそのメンバーと合流予定であった点を踏まえて、……只事でないと判断すれば迷わず換装して情報提供を求める。そして対応してくれた巽から話を聞けば、表情を明らかに曇らせる嵐山を一瞥してこう口にする
「……すみません嵐山さん、何かヤバイ事になっているみたいなので俺は行きますユズの元へ。つる姐が動いているらしいし、俺にお呼びが掛かった訳じゃない。けど………マブダチがピンチなのを知ってノウノウとしていられる性格じゃないんでね俺は。貴方が何で迷われているから知りませんが、もしその要因にユズが関係するなら、……会って話をするべきだ。"その内"とか後回しにしていたら、………何時か後悔しますよ?俺がそうでしたから(ペコリ……ダッ!)」
「………野々村ちゃん、君は……………(ダッ!!)」
嵐山を見ずに淡々と話すフブキ。一瞬見えたその表情は"強い決意と少しの後悔"が滲み出ていた。そんな彼女を見送り、生い立ちを思い出しながら考えを巡らせていた嵐山だが、何かを決意すると荷物を持って走り出し公園を後にする。そして携帯を取り出して誰かに電話を掛ける。相手は勿論
「迅っ!!俺だ!?教えてくれっ!……何処に行けばあの子、…柚紀ちゃんに会えるんだ!!?」
❲いきなりお前からの電話自体珍しいのに、内容がまさかの柚紀ちゃんに関するとか………今じゃないと駄目か?❳
「!………やっぱり、かなり厄介な事になっているみたいだな。少し前なら【お前が動いているなら、忙しいなら】と引き下がっていたが、……俺はお前の代わりじゃない!俺自身があの子を護りたいと今ならはっきり言える。それに、……もう傍観者でいれる程甘い状況では無くなりつつある。…あの日、お前から忠告をしたのはこの事を指していたと今なら理解出来る。どれだけ猶予があるか分からない以上、一刻一秒も無駄にはしたくない。頼むから教えてくれっ!!?」
"今は"良くても"次の瞬間"にはどうなっているかなんて、普通は分からない。だが嵐山は忠告…警告を既に迅から受けていたのだ。柚紀がこの三門市に来た初日に【自分より嵐山が大変な事になる、そして柚紀のサイドエフェクトは未来すら覆す可能性を秘めている】と。木虎の加入や亜種問題のせいで忘れていた事を悔やむ嵐山だが、……まだ間に合うとも感じていた。柚紀が生きている限りは、と。だから友人であり一番状況を把握しているであろう迅に珍しく頼み込む。………自分の背中を押してくれたあの少女みたいに後悔をしない為にも