「！？……どう言う事ですか、風間さん」
「……………荒船は野々村と戦った事がないのか？一度剣を交えた者なら、…いや村上やお前みたいに"剣一本で戦う者"には分からないか。……アイツは"二刀流も扱える実力者"だ。今まで何処か【実力をセーブしていたが】やっと本気を出す覚悟が出来たみたいだな」
「へぇ〜、それは凄いかも！……因みに陽菜さんもソレ知っていたんですか？」
「そりゃあ当たり前でしょ？あの子は私の愛弟子の幼馴染みだよ？ある程度の経歴は把握してるし………ってか彼女が習っている剣道…剣術だけど"一刀流と二刀流"があってさ〜、保護者の一人がボーダーに入れたくなかったらしくて"絶対に無理そうな両方を免許皆伝"を条件として提示したんだけど……、見事にそれをクリアしちゃったんだよね〜。マジで凄いよあの子」

もう一人の……フブキ専属の解説者状態となりつつある風間と、ボーダー隊員の情報ならお任せあれ！な巽によって色々明かされている一方で、軽くトラウマ再発させてしまった柚紀周辺はそれどころでは無かった。大きなスクリーンいっぱいに例の姿が映し出されたせいか、未だに怯えており出水が諌めても中々意識が浮上しないのだ。………そこに"自分を楽しませてくれるであろう新人の試合"を見に来ていたこの方が近寄り

-　………ヒョイ、ｷﾞｭｯ……ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ　-
「落ち着け柚紀、大丈夫だ。彼奴……鋼がお前を理由もなしに攻撃を、手を上げたりなんかしねぇよ。(ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ)もしそんな事をしたら野々村が許さねぇだろうし、つる姐だって徹底的に打ちのめすさ。ってか二人とも生身だろうとトリオン体だろうと野郎に絶対容赦ないだろうし、普通に強いよなぁ〜(ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ)ま、……当たり前なんだけどな。因みにだが………何でそこまで怖がる？過去に何があったんだ？？」
「「た、太刀川さんっ？！！」」

トリオン体の太刀川が出水から柚紀を強奪し抱きかかえると、言い聞かせる傍らでトラウマの真相を訊ねる。色んな理由で驚く二人をそっちのけに、【村上もだが……今はフブキよりも確実に強い】太刀川の存在を認識した影響で恐怖による強張りが徐々に薄れていき、"モドキ使用"になるが太刀川に理由を告げる。それは

-　幼い頃、親戚の家に遊びに行き誤って高価な品を台無しにしてしまった。何時もは温厚である家主は"酒に酔うと性格が激変して乱暴者となり"、ソレを知った事により暴力を受けて重症を負って……死にかけた。だから"明らかに背の高いのや鍛えられた体付きで巨体の男性は苦手"でありあの人を彷彿させる"何時も温和な人"や"同じ位の年齢……上層部の人"には無意識に警戒してしまう　-

それを聞いて内心複雑な気持ちになる太刀川だが「そうだったのか、そりゃ仕方ないな」と否定せず受け入れるのだった。……柚紀が何と話したか気になる二人に((後で話すから今は我慢しろ))と内部通話で話を付ければ、とりあえず近くのソファーに腰を降ろして膝上に柚紀を"横向き"にして乗せる。……フードのせいで顔が見えないのが気に食わないのか取り外し頭を撫でていると、同じく観戦していた諏訪笹森の二人がやって来て柚紀達に飲み物を渡す。そして「……大丈夫か？」と笹森が控え目に訊ねれば、貰った飲み物を一口飲み小さく頷いたのを確認し、米屋がタブレットを返した所で太刀川にこう切り出す

「……所で太刀川さん。…俺の聞き間違えじゃなければ【野々村ちゃんが二刀流の使い手だって事を知っています】的な発言されてましたが、……………何でですか？俺や弾バカはそこそこランク戦を彼女としてますが、……そんな仕草やら話は聞いた事ないですよ？」
「ん？……(ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ)………そりゃあ"忍田さん"経由ってのが一番の理由だな。……俺の弧月の腕前は忍田さん仕込だ、その忍田さんに剣を教えたのが……どうやら野々村の親父らしくてな、(ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ)で、その娘であるアイツとつる姐とのバトルを見れば、……生身でも剣を触っている奴だって分かった訳。因みにあの人も護身として剣もソコソコ扱えて、たまぁーに忍田さんと手合わせしてるぜ？あ！直接本人には聞いてねぇし、二刀流を扱える的な情報提供者は風間さんな！？忍田さんも弧月は一本しか使わねぇし」
「…………………もしかしてアンタ、…太刀川さんは"待っていたんですか"？【野々村ちゃんが本気を……二刀流を使って戦うのを】。だからランク戦を申し込んだりしなかった。……作物が食べ頃になるのを熟すのを待つ的な理由で」
「あ〜………それもあったが、忍田さんやつる姐に【無闇に野々村と接触するな、下手するとアイツが"やっかみ被害"に遭う。野々村本人は気にしなさそうだが、下手すれば柚紀が"自分のせいで"と勘違いする可能性がある。後は"同じ戦闘スタイル"だろうから師弟と勘違いする隊員が出てこないとも限らない】だとさ。(ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ)イヤイヤ、当たり前だろ？所謂"同釜同士"何だからさ」
【…………それを言うなら同門同士、だよ？太刀川さん】

先程の太刀川発言や、出水がずっと気になっていたいた戦闘大好きな上司が何故フブキと戦わない理由を本人から語られる。それに関しては口を挟まない柚紀だが、意味合いが違う言葉は律儀に訂正する。それを見て(何とか持ちこたえたか)と安堵する諏訪は【弧月に鍔を付けない理由や剣道と剣術は何が違うのか】を柚紀に問う。これに対して先に答えたのは偶然にも巽であった

「どうせだから色々野々村ちゃんに付いて語っちゃおうか！！嘘じゃ無ければ話しても本人は怒らないからね〜。……あの子があれだけ強いのは忍田本部長と"兄妹弟子"の関係ってのが一番の理由かな？ま、剣を振るっている年数は………どっちが上かは分からないから割愛。で、習得している剣技は【攻守に優れた一刀流と攻撃特化の二刀流】があり、野々村ちゃんがずっと弧月一本だったのは"守り重視"な考えをしていたから。……ま、それじゃ駄目だって分かったから二本目を抜いた訳。因みに鍔を付けないのは"剣の使い分け"らしいよ？鍔有り……竹刀を使うのは専ら"剣道教室の生徒の相手"であり"剣術の門下生との稽古時は木刀"で幾分かは本気を出すらしい。木刀が当たれば竹刀の比じゃない程痛いらしいけど、きちんと寸止めするから問題ないらしいよ？何せ……免許皆伝の条件が【真剣を用いて皆伝者に勝つ事】だからね〜。相当の技術や腕が無きゃこんなのできっこない。本部長は基礎を習って後は独学に近いけど、……野々村ちゃんは正真正銘この手法で条件をクリアして、今此処に居るって訳だよ」