6.決断の曲~自分らしくあれ~(71.
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「なぁ時枝、あの子について聞いても良いか?……あたしの視線に気づく程の子なら、たかが中学生には負けない気がするが?…お前達同様ボーダーに所属しているんだろ?」
「…………彼女とはまだ一ヶ月程の付き合いしかない、だから武芸の腕も予測の範疇でしかない。…おれは偶然、その一端を見たけど……例え実際に相手を退けるだけの腕があっても、………恐らく鶴ヶ峰さんは使わない、いや……"使えないんだよ"きっと」
急いでいる二人だが先生に見つかり「校内では走るなっ!!」と怒られてしまい歩く速度を早めて玄関に向かっていた。……お陰で少しだけ冷静さを取り戻した野々村女子が気になる事を時枝に訊ね、返答内容を聞き表情が険しくなる
「なんでさ?武芸とは人を倒すのと同時に"己れを守る"手段を磨いた技術に過ぎないだろ?……あの子なら使い道を誤ることもないと、あたしは思うが?」
「………………それは否定しない、だが野々村。……彼女は市河さんと同じ、"自分の為に"その能力を振るう子じゃないんだ。彼女は常に"他人の為・誰かの為"に動き尽くそうとする。誰かに誉められる事を目的とせず影から支える……それを当たり前だと考える思考が根強い反面、自分を蔑ろにする・他人を優先する……自己犠牲な考えも、ね」
「!!?……ナニソレ?何でイマドキの子がそんな古風思考に育つんだ?!まるで内助の功みたいな…原因は何だ?親か?育った環境か??……いや、それでも周囲が気づく筈だ。何故誰も何もしなかったんだ?!」
玄関に到着して靴を履き替えながら更なる疑問に対して柚紀の性格考察を語る時枝。それに対する野々村女子の反応を見て改めて感じてしまう。……あの少女が如何に"普通とは無縁の生活をしていたか"を
「……彼女には居なかったんだ、君達みたいな関係を築ける者が。…幼い頃から過疎化した山奥の町で生まれ育ったと聞いた、そして同じ年頃の子は居ないに等しく周囲にはかなりの年上ばかりだと。だから礼儀作法やマナーやモラルが同じ年頃の子に比べれば出来ていたり、頭の回転が早かったりする。だが、今どきの文化や流行には疎く勉強は英語だけ平均台の学力………更にあの容姿だ。そんな子が、学校で"浮かない"訳がないでしょ?」
「………………勉強は兎も角、つまりはあの子は"優しすぎて自己防衛がちゃんと出来ない子"なのは分かる。だが、佐鳥の不登校やお前の尋常でない程の焦り、後気になったのは委員長の"男子が苦手"発言。……これは一体ナニを意味する?」
「………………………彼女、鶴ヶ峰さんは……【対人関係のトラウマ持ち】何だよっ。それも重度のね。…それの主な原因は【年上で男性】なのは本人から聞いたし更には【長身・威圧感がある人や傲慢な者・自己中心的思考な言動や人物】なんかも苦手なのは見ていれば分かる。そんな相手や関連性のある事態に見舞われた場合、彼女は安全な場所に無意識に隠れようとしたり、危険なモノから距離を置こうとする。……屋上で彼女が野々村の後ろに隠れたのは佐鳥の大きな声に驚いたからだ。そして、鶴ヶ峰さんの場合トラウマが再発すれば本人はおろか他人にまで悪影響が出る。最悪……命に関わる程のね」
「!!?」
佐鳥に頼まれた通りに、屋上から見えない箇所を重点的に見回りながら話を続ける。生まれ育った環境等は自分の推測なので、外れても自分責任と考える時枝だったが、更なる疑問を問われれば"軽度"とは言え幼馴染みが同じ様な経験をしているのを知っている野々村女子なら……そう思い時枝は【自分達が此処まで柚紀を心配し気に掛ける根本的で建前的な理由】を語り始める。流石の内容に顔色が変わるが更に食い下がってくる
「命に関わるって……なら何で三門市にあの子が来たんだよ!!此処がネイバーに侵略されていて危険なんだぞ?!幾らボーダーが平和を守っているからって絶対安全じゃないっ!!!無闇に精神的な負荷を掛ける必要なんてっ!?」
「……(フルフル)"逆"なんだよ野々村、…三門市でなければ被害が確実に出てしまう。彼女は……
~リーンリーン
リーンリーン
リーンリーン~
‐ ………けてっ!…………………時枝くんっ ‐
!!(鈴の音?それも電子音的だし普通の鈴ではこんな大きく聞こえない。つまりコレは……何より生身だけど聴こえたあの声はっ)っ!?(シュン!)アラートが発動した!!……こっちかっ!!?(ダッ!)」
「あ、おい待て時枝っ!!話の途中だろっ!?(ダッ!)(にしてもアラート…警告音……つまりは防犯ブザーが発動した訳なんだろうが、…持っていたか?そんなのをあの子は??少なくとも分かりづらくなっている筈だ、所持しているのを知れば)……餓鬼じゃあるまいし、手出ししないだろうな。…影でコソコソ動く様な輩なら、身バレだって恐れる筈だ」
説明の最中聞こえてきたアラート音と微かに聴こえたあの少女の声。それらに反応した時枝は、反射的にトリオン体に換装をすれば音源に向かって走り出していた。それに遅れながら続く野々村女子はこんな愚かな行為をした者達に憐れみを感じた。…"この町において敵に回してはいけない者達"、…彼等の逆鱗に触れたのだからその証拠に……
「……彼女はボーダーが保護対象に定めている子だ。悪いけど、これ以上危害を加えるのはボーダー隊員として見過ごせないね」
「そうでなくても、……彼女を怖がらせたり嫌がる事をする人を佐鳥は…………オレは容赦しない!!?例え女の子同士でも、…多勢に無勢……虐めは良くないよ?」
遅れて辿り着いた現場では、袋小路になっている校舎裏で複数の男女に追い詰められた柚紀、そして……その少女を背後に庇い守るかのように真っ正面から対峙する赤い服を着た二人。その表情はあの時枝ですら怒りを露にさせているし、女子に対する口調は比較的穏やかな佐鳥も表情は真剣そのものであった