放課後、教室掃除をする柚紀を待つために廊下で時枝と市河女子が待っていると、佐鳥と……少しお疲れな様子の野々村女子が合流して何やら話をしていた。…"色んな理由"で気になる柚紀だったが、わざわざ教えて貰っている身なので掃除に集中する事に。そんな様子を遠目から見ていた野々村女子が、ポツリと独り言の様に呟いた

「……たかが掃除なのに一生懸命にして、…あんなイイコなら……あたしみたいな"女らしくない一面持ち"と仲良くする必要、なくない？」
「！？……風音ちゃん、…君が柚紀ちゃんも"市河ちゃんと同じ目に遇う可能性"を危惧しているのは知ってるよ？だけどさ、……友達って"似た者同士"なパターンもあれば"ナニかが逆な同士"ってのもあるでしょ？オレを例に上げれば前者が笹森で、後者がとっきー的な感じ！……君がそれを望むならオレは協力するよ？」
「そ、そうだよノンちゃん！絶対鶴ヶ峰さんと仲良くなれるよ！！学校でも……"ボーダーでもさ"！！」
「………んん？ボーダー？！えっ？ま、待って待って！！…………風音ちゃん、君、…"やっと"ボーダーに入れるのっ？！！」

柚紀を嫌っている様子がない野々村女子との間を取り持とうとした佐鳥と市河女子だが、予想外な発言に驚きを隠せない。流石に周囲の目線が集まるのを感じた時枝が頭を叩く"フリ"をしつつ「知らなかったの？」と呆れた口調で説明をし始めた

「野々村は数日後の新人入隊式で、正式に入るのが決定しているよ？ホジションはアタッカーだから、佐鳥は知らないのも仕方ないけどね。……おれは仮入隊期間中に"有能な人材が居る"って聞いて様子を見に行った時に偶然接触してさ、その時に言われたんだよ【所属歴が長いのにさん付けで呼ばれるは違和感があるから呼び捨てにしろ】ってね」
「……兄が剣術を習っていて、…あたしも一応やっている。……"今も"な。武芸において実力がものを言う、更に年齢問わず上下関係には厳しい世界だ。なら、同学年の時枝も先輩に値する。だから頼んだだけだ」
「剣術………なら、有能説や始業式の時に鶴ヶ峰さんが言っていたのは間違えじゃなかったんだね。野々村さ、彼女の視線に気づいたでしょ？それで"格闘系"の経験者じゃないかって本人は勘づいていたから」
「………は？なんで、…分かったの？」

野々村女子本人から語られた事を聞き、"自分が知らなかった事"を柚紀は感覚若しくは今までの経験から推測し、見事に以前言い当てていたのを時枝の口から語られる。指摘されて明らかに驚く野々村女子に加えて「相変わらずだよね～」と納得する佐鳥。……その中で無反応な市河女子が何かを思い出してこう口にした

「あ！ヒナ先輩に以前聞いたことがある！【鶴ヶ峰家の者は大体が整った容姿やスタイルに加えて色合いも目立つ者ばかり。遺伝だから仕方ないが…身を守る為にも男女問わず最低限の護身術を習得する事】……こんな家訓持ちだと。…実際、言実さんは生身でもお強いですね。…以前助けて頂きましたから。で、………多分鶴ヶ峰さんも"いざという時"には戦える方かと」
「わぁ～、十分にあり得そう。何せ……あの二人は似た者同士だもんね～。」
「(…あの個室で二人の動きを封じたのを、佐鳥は知らないんだっけ？)……そうだね、彼女自身"今まで"その手の経験している。…でも男女問わず"今でも"自ら仲良くしようと出来るのは……"保険"があるからだろうね」

二人は"生身での"言実の実力は知らないが、市河女子が嘘を言っているとは思っていないのもだが佐鳥は感覚的に、時枝は子どもである柚紀があんな動きが出来るなら…と考えるのと同時に"重度のトラウマ持ち"ながら他人と……自分達と…"異性"と仲良くしようとする柚紀が、心配でもあった。何故なら彼女は

‐　ﾀﾀﾀﾀﾀ、タタタタタ　‐
「良かった！まだ居てくれて！！ハァハァ……手を貸して佐鳥くん！！野々村さんっ！！このままじゃ、鶴ヶ峰さんがっ！？？っ！……ハァハァ、ハァハァ」
「だ、大丈夫？委員長？？そ、それで鶴ヶ峰さんは？……ゴミ捨て場に案内しに一緒に教室出ていったのは私は見てたけど、どうして一緒じゃ…………………まさかっ？！？…また、あの人達が？！？！」
「「えっ！？」」
「……あんっの、妄想主義者達めっ！！…お昼に釘刺しした筈だ！！？"二人に手出ししたら、今度こそ容赦しない"って！！……貴女がこうやって助けを求めてきたって事は相手が"多勢に無勢"か、……(ﾁﾗｯ)熱狂的なボーダーファン、後考えられるのは……"男子が混じっていた"から、か？」

柚紀と共に行動していた委員長が慌てた様子で走って戻ってくると、隣のクラスである佐鳥と野々村女子に助力を請う。そして幼馴染みに助けを求めたのを見て市河女子は"以前自分が体験した事態の再来"を危惧し、その可能性を含め"佐鳥にも"助力を申し出た理由を自分なりに推測する。……剣術を習う自分ならあらかたの事は一人で何とか出来るのを、委員長も知っているからだ。そして、今あの緑色の髪を持つ少女が陥っている状況はと言うと

「………野々村さんの予想が、…"全部正解"だよ。…ウチ以外の生徒で、野々村さんや佐鳥くん達のファンだって有名で人騒がせな人達と、……容姿的に目立つ鶴ヶ峰さんの事が地味に"噂"になっちゃってるみたいで、彼女に興味を持った男子が何人かが共謀して。……最初は無視しようとしたけど、道塞ぐし威圧的な態度や、言葉にも行動にも荒っぽさがあって。…彼女を逃がそうとしたら『用があるのは自分にだ。だから貴女は逃げて……助けを呼んできて』って！……お願い！！鶴ヶ峰さんを助けてっ！？外に向かったのまでは知っているけど…彼女を何処に連れて行ったのかまでは分からないのっ？！！でも、絶対ヤバいからっ！？だって彼女………"男子が苦手"でしょ？ゴミ多いから当番の男子に案内任せようとしたら彼女が明らかに嫌がったもの！！…違う？時枝くんっ？？！」