「たぁいちょ～！顔真っ赤にしてぶっ倒れたって事は、もしかしなくても【ステージ３】ですか？」
〔あぁ。それも理由が理由だ、あまり猶予がねぇが此方も準備が整ってねぇ！！とりあえず歩きながら此方に来い！準備が出来次第ワープさせる！？〕
「当真了解！……米屋、悪いが此処で姐さん待っててくれねぇか？【柚紀がステージ３の状況】って話せばそれで事の事態を理解する筈だ。巽の姐さんに伝言を頼みたいが………あの人は解析に手一杯だ。……頼めるか？」
「ま、まぁその位なら別に(ｶﾞｼｶﾞｼ)……俺が居ても多分役に立たない、と思いますしメディカルチェックも済んでますからね。………あ、京介は受ける必要があるジャンか？！(クイッ…ｼﾞｬﾗ)ほれ、行った行った！特に柚紀ちゃんと臨時接続状態だったんだ、何か影響があったら一大事だしな～。場所は前にチェック受けた場所らしいぞ～迷子になるなよ～(ﾌﾘﾌﾘ)」

米屋の言い分を聞いて「俺は鶴ヶ峰じゃありませんから大丈夫ですよ」と反論しながらも素直に行動を開始する烏丸。そして残った嵐山隊二人に関しては「ついて来るのは良いが、あまり"俺達"に触らない様に」と当真から注意事項を告げてから目的地に歩き出し、米屋はそれを見送ったのだった。さて嵐山が真ん中の状態で並んで歩く三人だが、やはり辛そうにしている柚紀が心配な二人は気になる事を当真に訊ねる

「あ、あの……毎回ではない、ですよね？現場に出た鶴ヶ峰先輩がこんな状態になるのは。もしそうならお姉様やフブキ先輩が許す訳がありませんし、………嵐山先輩達だって、そうですよね？」
「あぁ。……以前のトリオン体はベイルアウト機能が付いていなくて"無傷なら"例えトリオン量が"使用可能領域"をオーバーしても、サイドエフェクト……【自己暗示】を施して持たせていた。で、安全な場所に来たら気が抜けて眠ってしまう。理由は【使い過ぎたトリオンの回復】する為にだ、だから早ければ数時間で目を覚ます。因みに前回から使用しているのにはベイルアウト機能が付いたが………彼女が現場から離れがたい状況だったせいで生身で無理を強いられる。と言うか、柚紀ちゃんが倒れる理由は【セーフティ…使用量制御を掛けるのが難しい生身でサイドエフェクトを使用した】一択だ。(ﾊｧ~)だからトリオン体を使用しているのに、これでは意味がないな。………此処までは俺も分かるが当真、…【何故今回柚紀ちゃんは"熱を出した"？】生身で激しく動いたから、……"だけじゃない"よな？」
「………やっぱ嵐山さんは気づきますよね～。……理由は【柚紀の袖を二の腕付近まで上げれば、多分分かりますよ？】あ！！熱は出しているのは本当だから無闇に触らないで下さいよ？！！万が一な事が起きたら……泣きますよコイツ」

木虎の素朴な疑問に対して嵐山が【木虎が詳しく知らないのを前提に】見知った知識や経験を含めて解説をするが、今回の柚紀の状況や症状が今までとは些か異なり疑問を抱く。これに対して"あくまでも接触禁止の上で"分かるであろう方法を示す当真。……【トリオン体なら兎も角、生身の自分が何故…】そう思いながら和装で捲りやすくなっている袖を肩近くまで上げて……二人は驚愕する

「……………えっ？……この"肌が紫の変色している"理由って、まさかっ！！」
「……柚紀ちゃんが毒性のトリオンを体内に取り込んでいるのを意味する。たが何で………いや、【彼女の特殊な体質を考えればこうなってしまうのは仕方ない事】なのかもな。彼女ですらこうなっているなら……生身の俺達は【側に居るのすら危険】があるのも頷けるな」
「！！？……確か、時枝先輩が【先輩が敵に狙われやすい特殊な体質】と話されていましたが、それは"トリオン量が多いのを示す"と、私は思っていました。……他にも要因があるのですか？」

服の下に隠れていた皮膚(肩から二の腕辺り)にトリオン体の時に現れていた変色反応が出ていたのだった。流石の事態に嵐山も顔色を変えてしまうが、よく考えれば柚紀には、…柚紀"だけは"注意が居る事を失念していたのだった。それが何か分からない木虎に、当真が分かりやすく説明を始める

「そうだな～、……とりあえず木虎は柚紀のサイドエフェクトがどんなのか知っているか？」
「……"歌姫"と呼ばれて居ますし、これが先輩とサイドエフェクトを指す渾名…通称と嵐山先輩に聞きましたが、歌っていなくてもその能力を使えていらっしゃるし、先程能力の名称が【強化暗示】と窺った点からして…………こう、【先輩が思い描いた事象を現実にさせる】のが本来の能力、ですか？」
「ま、大体正解だな。ただ一つ付け加えると柚紀の能力は【トリオンを用いて自他共に影響を与えるから、相手もトリオンを持つモノ限定】に効果が出る訳だ。……でだ、その影響を他人に及ぼすには【ある程度トリオン操作が生身でも出来る必要】と【他人に影響を与える為に自分のトリオンを放出する必要】もある。これがトリオン体なら通信機能や感覚共有をベースに他人に能力の恩恵を与えれる様なシステムを組めば問題ない。……………此処までは理解できたか？」
「…………とりあえずは」
「で、いきなり話が変わるが中学生の木虎は"呼吸"について、きちんと説明出来るか？」
「………馬鹿にしてますか？その位分かりますよ！！呼吸とは【呼気と吸気】【空気を吸って酸素を取り込み、不必要な二酸化炭素を排出するガス交換】を指す言葉です。(ｷﾞﾛｯ)……コレが先輩の皮膚色の変化と何が関係するんですか？」

最初は真面目に話していた当真がいきなり話が変えてかなり不機嫌そうにする木虎。これを何も言わずに傍観している嵐山は"その意図を察し"、複雑な表情を浮かべている。それを横目で見つつ冬島から〔用意が出来たから呼び寄せるぞ？〕と連絡が入るが「数分だけ待ってください」とキリが悪い所で説明を打ち切るべきじゃないと判断した当真が、ほんの少しだけ転送を先伸ばしにする。そして「関係大有りだ」と断言した上でこう話を繋げる

「柚紀は【生身でもトリオンが操れて、更には放出が可能】と極めて稀な体質の持ち主で、この体質があるからこそ他人に能力の恩恵を与えられる。さて、呼吸が吸って吐いてがワンセットなら【放出はナニとセット】だ？……これが変色及び発熱の原因だ。因みに変色が二の腕付近に出たのは……あまり薄着をしない柚紀が"異変があっても他人にバレない場所"と認識しているからだろうな。ま、そこは保護者にでも聞いてくれ。……悪いが時間切れだ、この後どうするかは二人で決めてくれ」

‐　シュン！！　‐

そう言い残して足元に冬島隊のエンブレムが現れたと思えば、二人は一瞬にして姿が消えたのだった。嵐山は"二人の転送先に心当たりがあるが"確信はなく、現場に居合わせた者に聞きたい事が出来たので元着た道を引き返す事に。木虎はこれに関しては反対しなかった、……行き先に【自分の知りたいことを知るあの人が居る】のを理解しているからだ