‐　ベイルアウトまでカウント開始します　‐

‐　ド！ ド！ ド！ ド！ ド！ ド！ ド！ ド！ 　‐
『へ、へあっ？！！(えっと、……何だろう？何か烏丸くんが変化したんだけどっ！！それも体だけじゃなくて銃もだし！？こ、これもトリガー？？？)パワーアップする特殊なトリガー、かな？(シャーン)……コレ、"持ち手長くならないかな～"………なんてね
‐　……ニュルルルル　‐
……あ、出来た！(ドン！‐　シャーーン！　‐)………(ｸﾙｸﾙｸﾙ、パシッ！‐　ｼｬﾗｼｬﾗｼｬﾗｼｬﾗ、…シャーン！　‐)(…ニヤリ)コレなら、"私も戦える"かな？』

試作品トリガー・ガイストを起動させた烏丸は変形した銃にて四方……風上方向に発砲する。何も居ない様に見えるが、次々に隠密型が倒されて姿を現す。それを見て【自分の為に切り札を切ってくれた彼に報いたい。…"負けられない"】と、感じた柚紀は"せめて生身でも自衛が出来れば"と願望を口にすると、持ち手が伸びてまるで錫杖の様な形態になり、少しだけ驚いた後に軽く振り回してみて"イケそう"と感じれば、歌の続きを紡ぎ出す

～　緑白（うすみどり）色の幻が
　この星の悲しみを優しく包む
　同じ運命をたどるかと
　遥か彼方から
　唄声がひびく　～

「待て待て待て待て！！？京介のアレは何だよ！！武器もだが何か体の一部が変化しているし、歌姫なしで火力も上がっていやがる！で、柚紀ちゃんは何か槍バカを彷彿させる姿になっているし、……どうなっているんスか？？！姐さんっ！！！」
《…木崎の全武装（フルアームズ）、小南の双月及び接続器（コネクター）機能。そしてアレが烏丸専用の玉狛トリガーだ。……出水なら、二人と一緒に亜種討伐の際に見たことがあろう？》
「あーー、……成る程。…だから迅さんは京介を此処に呼んだ。【生身で歌うお姫様の安全確保の為には妥協は許されない】ですからね。小南は兎も角、レイジさんは……多分怖がりますよね？あの巨体ですから」

佐鳥達は勿論だが、流石の出水も切り札を使った姿を見るのは初めてらしく驚きを隠せずにいた。そして"それを林藤から聞いていた"言実は冷静に解説しながらサポートを継続していた。その説明を聞いて烏丸派遣の理由を出水なりの考えで察する。それを聞いて(レイジさんと柚紀ちゃんは顔合わせ済み、だけどな～)と考える佐鳥と、(……もしかして彼女が持つアレは玉狛独自技術によるもの？)とまだ"明確でない"石の正体を推測する時枝である。……勿論三人とも戦いながら、である。………因みに歌いながら小さな敵を手に持つ錫杖で鈍器の如く倒して一波乱あるのは……この後すぐである

‐　‐　‐
‐　‐
‐

‐　遥か彼方から　歌声が響く　‐
「お？！やっと二番が聞こえてきたな～。一番が終わって二番が始まるまでのあの"妙な間"があると決まって敵がアイツにちょっかいをかけて来やがる。(ザシュッ！)……さっさと歌えば良いんだが、まぁ……歌にこだわりや思い入れがある柚紀には無理な話だよなコレ」
「ですね～。……多分"何事もなければ"柚紀ちゃんは将来有名な歌手になっていたと俺は思いますよ？ま、(ザン！！)……彼女は歌い続けるよ？理由は何であれ、【歌は彼女の心、そのもの】だからね。……(ｸﾙｯ)大丈夫か秀次、ずっと黙り混んだままだが………ナニかあの子について聞きたいこと、あるだろ？」
「……………歌姫の正体が言実さんの姪で、始業式の騒動で誤射事件の被害者なのは、流石に分か…たが、………ならは何故だ？！【何故サイドエフェクトを用いて自ら敵を葬ろうとしない】？！！出来る筈だ！！司令にそれの有無を訊ねられた言実さんは……"肯定した"と言うのにっ！！！(それだけでなく、あの人の兄が彼女の父親なら、…ネイバーは"親の仇"の筈だ！？憎くはないのか？)」

さて、女王討伐に向かっていた三人(四人)にも柚紀の歌声は届いていた。因みに言実が持たせた鈴が音源かと思われたが奈良坂にも聞こえており"何時もの原理か"と納得する面々。そんな中、間奏が妙に長いのを気にしていた太刀川が今日の経験則から導き出した疑念を口にし、迅は"こればかりは仕方ない"と戦いながら話す。そんな二人の後ろを片腕を無くしたままの三輪が追随しており、あの少女に疑問を抱いているのが表情から読み取った迅が話すように促す。その口から出てきた言葉に、太刀川も……迅ですら顔色を変えるのだった。そんな一瞬の隙にいつの間にか敵に囲まれており視覚支援を受けている奈良坂の瞳には【毒性のトリオンが三人の周囲に立ち込めている】のが見えてしまい、どちらを射つかを躊躇ってしまう。そんな中、強風が吹きトリオンの津波が起きたのを見て「上から来るぞ！」の奈良坂の声で反射的に上を見ると

～　あきらめるには
　まだ早すぎる
　折り重なった
　光に希望のせて　～

「……メテオラ！！」
‐　ド！ド！ド！ド！　‐
「「！！？/おっ？！」」
「なっ？！こ、小南っ！！？何でお前が此処に居るんだよ？！お前はレイジさんと【風下で待機】って俺言ったよな？！」

メテオラと共に空から降りてきた緑色でショーヘアーの玉狛支部Ａ級女性隊員・小南桐絵が周囲の敵を一掃したのだった。敵の心配が無くなりシルバーブレットで津波を食い止めるが、完全には無理で「左右に別れろ！？」の声に三輪と太刀川、そして迅と小南で左右に散る。その間を生温い風が通り抜け〔標的はすぐそこです〕とオペレーターからの通信が入るが玉狛二人には入らず、……何やら揉め始める

～　そしていつか届く夢を
　今静かに感じよう
　君の決意　僕の迷い
　めぐり逢いが指し示す　～

「ちょっと迅っ！？レイジさんから聞いたわよっ！！！件の噂の……【歌姫があの静樹さんの娘】だって！！何で教えてくれなかったのよ！！？」
「あ～、……お前に言ったら絶対に【玉狛支部に呼べ】って言うだろ？今はタイミング的に良くなくてな～。ってかお前柚紀ちゃんは平気なのか？言実さんがボーダーに来た時は最初かなり嫌っていただろ？……だから直ぐに会わせようとしなかった、あの子に異性だけでなく同性にまで苦手意識を植え付ける訳にはいかないからね」
「……准が言っていた【人見知りで特に男が苦手な妹みたいな知り合いが出来た】って言うのがその子な訳ね。…………まぁ良いわ！あのデカイ敵を倒せば大腕降ってその柚紀ちゃんに会いに行けるって訳だもんね！ほら、さっさと行くわよ！！」

～　道標（みち）を信じて
　I live with facing my destiny.　～

と、太刀川達の知らない所で話が進み、太刀川達も迅達が知らない間に状況が変化するが、歌に導かれる様に合流して……女王が居るであろう建物を見つめるのであった