そんな三人から距離を置いた烏丸に出水が近づき話し掛ける

「よっ、京介！……俺達が居るのによく"来る気になった"なお前。………風間隊任務時の救援に俺達が辿り着いたのを見た瞬間に"お役御免"と言わんがばかりに、引き上げていっただろ？」
「……あの時はトリオン残量が少なかったのもですが、あくまで俺達は増援が来るまでの"繋ぎ"でしたので。で、今回に関しては冬島さんの頼みを聞いたのもありますが、"ただ運ぶ"だけなら"カメレオンを所持している"笹森に役目を譲りましたが……(ﾁﾗﾘ)迅さんから【"散布"があらかた終わったら合流しろ】と言われていましたので。因みに風間隊の二人は休息が必要と隊長が判断したらしく"集まり"には不参加でした」
「散布って、ナニかを撒いたのか？『コレだ(ポイッ)』(パシッ！‐　ﾁﾘﾝ、ﾘｰﾝ　‐)……鈴？……どう言う事だつる姐？？？」

【"元"太刀川隊】のメンバーが話している所に言実が掌サイズの"金銀の鈴を黒いリボンで括りワンセットにしたモノ"を太刀川に投げ渡す。更に同じ様なモノを迅そして……三輪にも投げ渡してから説明を開始する

『此処約一ヶ月のゲート発生率や亜種比率を統計した結果、やはり"この地域"が圧倒的に数値が高いのが判明した。が、他の地域でもゲートは発生するし亜種は出没もする。………些か方向音痴な柚紀に"全危険区域の地形"を覚えさせるのは効率悪いと結論付けた私は【どの地域でもあの子の能力を"一定以上及ぼす様にする"事に】方針を変えた。そこで作ったのがこの鈴だ。(‐　ﾁﾘｰﾝ　‐)これを放置区域含めた敵が出現しそうな範囲に散布させ、金色が"歌姫効果を拡散"、銀色が"効果抑制と害のあるモノを吸収する"……そんな役割を持つ』
「(ｽｯ)えっと、彼女の能力を拡散させる意図は分かりますが……抑制は必要ですか？」
『まぁ普通なら古寺の言う通りの疑問を抱くが、抑制対象は"歌姫だけでなく亜種と言った敵"も含まれる。………あの妨害型の電撃や超音波、今回の毒素を含むトリオンとかのな。が、銀色は"使い捨て"系で定期的に散布し直す必要があるが、……これで少しは戦いやすくなろう』

鈴を散布する理由と金銀の役割を話した辺りで古寺が挙手して疑問を問い掛ける。コレに対してこれも亜種対策の一貫だと返答をする。そして地上を左右に二人に挟まれた状態で観察しては時折鈴を鳴らしていた柚紀が、ナニやら浮かない表情で言実達の元へ駆け寄ってくる。……何故そんな表情をしているかを、このお方は検討がついているのだ

『その様子では、やはり"継承済み"の様だな』
『(ｺｸﾝ)……あのトリオンを止めないとアレは永遠に増殖し続ける。そして産み出された敵はトリオンを産み出している奴を守る壁になる。……"新たな核"を産み出されるまでどの位時間やトリオンが必要かが分からない以上、……(‐　シャ～ン　‐)…長期戦になればこちらが不利です。早急に二手に分けて敵を叩くべきですが、……割り振りに自信がないです私。三輪先輩はほぼ初対面ですし、烏丸くんや……迅さんが戦っている所を見たことないから。セットトリガーは……こっちは"迅さん"以外なら分かりますがランク戦と任務じゃこう、…戦い方違いそうだし(ｼｭﾝ)』
(男)「………(ジーー)」

柚紀の言い分を聞いて男子全員の色んな視線が迅に集まり、本人は"あ～、そうだね"と苦笑いを浮かべていた。迅の実力を知らない理由を言実なりに理解しており、"とりあえず今はそこそこ強いのが分かれば良い"と自己解決させれば、自ら仕切る事に

『(ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ)ま、気にするな。四六時中一緒に居ても分からぬ事も多数ある故にな、これも仕方ないさ。(ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ、ｽｯ)……太刀川、迅、そして三輪。……お前達は風上に居るであろう女王………もう一体の亜種を潰せ。それと奈良坂は三人に追随しろ。但し【敵を倒すのが目的でなく"安全装置"としての監視がメイン】だ。毒素を含むトリオンを可視化させ、三人が被りそうになれば(…ポイッ)コレを起動させて足元にでも打ち込め。鈴を持たせておる故に柚紀が鳴らせば一定距離のトリオンは浄化されるが、……風は予測が難しい。"保険"はあるに越した事なかろうて。……必ず一定距離を保てよ？お前がトリオンを浴びれば高確率で全滅すると、肝に命じてな』
「(パシッ！…ｷｲｨﾝ)……銀製の銃、ですか？『弾はシルバーブレットだ』(ｼｭｳｩ)……使わせて頂きますが、後程返却に伺います。コレは本来"持ってはならないトリガー"ですから」
「……………」
『……不満か三輪。…一応あれはお前の銃のホルスターにセット出来るようにはしてある。たが、お前は既に弾トリガーを二つセットしておるだろう？…………"ボーダーが定めたルールに反してまで敵を倒したい"と思うなら、私は止めぬ。…決めるのはお前だ。……奈良坂(ポイッ)……使わぬとは思うが"念のため"もって行け』

女王の実力は未知数だが、隊長二人に迅なら問題ないと判断し更に"大局を見据える必要がある"のでその役目を奈良坂を指名した後に"サポートの為に"と銀錫弾が射てる個別トリガー(銃の形状はイーグレットと同型)を渡す言実。それが不服と表情に現れといる三輪に気づき"ルールを破ってまで憎い敵を倒したいか"と問い掛けた後に、予備のトリガーも奈良坂に託すと太刀川を先頭に移動を開始したのだった
その四人をお見送りする柚紀は火打石が如く、姿が見えるまでの間はずっと鈴を鳴らしまくっていた。そして見えなくなり、ふと視線を下に向けると……小さな悲鳴を上げたかと思えば『居なくなれ～居なくなれ～』と涙目で鳴らし続けていた。……心なしか音が小さく弱々しく感じた言実以外のメンバーが地上を見て………複雑な表情を浮かべていた

‐　ｼｬﾝｼｬﾝ、ｼｬﾝｼｬﾝ　‐
「……さっきより増えているね。後、心なしか………でかくなっているし((あ、おれは視覚支援切ったけど佐鳥は継続させておいてよ？多分奈良坂先輩と同じ役目を担うだろうから))」
‐　ｼｬﾝｼｬﾝ、ｼｬﾝｼｬﾝ　‐
「……敵が白っぽい装甲だからまだマシだけど…これが黒だったら完璧にアウトな光景かも((とっきーの裏切り者～！！黒い霧みたいな中でアレが蠢いているんだよ？！……完全にアイツを彷彿させるから～！！？))……柚紀ちゃん、大丈夫？」
『うぅうぅぅ～～。(‐　ｼｬﾝｼｬﾝ、ｼｬﾝｼｬﾝ　‐)わ、私さ、動物とか昆虫は大体平気なんだけど、……蛇と黒光りのアレだけは苦手なんだよね。(‐　ｼｬﾝｼｬﾝ、ｼｬﾝｼｬﾝ、ｼｬﾝｼｬﾝ　‐)だから鋭い目付きや細めた目とか苦手。それと常に清潔さを保つようにしているから、……アレを初めて見た時は無我夢中で掃除したな～(‐　ｼｬﾝｼｬﾝ、ｼｬﾝｼｬﾝ、ｼｬﾝｼｬﾝｼｬﾝｼｬﾝ　‐)』
「(あ、ウチの作戦室も定期的に掃除しなきゃヤバいかも)ま、無理して見る必要はないって！？俺ととっきーが熱消毒して死滅させるからさ(ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ)……所で姐さん、迅さんが京介をわざわざ呼んだ理由、分かりますか？」

そんな感じで見ている四人とは別に、途中参加の烏丸に亜種の特性について古寺が説明をしている。……何故情報共有が不十分な彼が必要なのかと出水に問われ、言実はこう推測した

『恐らく"保険"だろうな。出水もかなりトリオンを消費しているだろう？……無いとは思いたいが、高火力で一気に潰す必要があった時にお前がガス欠になれば詰む。……迅達は女王の元に行くまで"邪魔をする亜種軍団"を相手にするのは確定しておる。…あちらが時間が掛かる可能性がある以上、"切り札"は多いに越した事はない故にな』