～警戒区域内～

‐　キイィーーン！！！　‐
「ぐっ！？(ｼﾞﾘ、ｼﾞﾘ)…鶴ヶ峰っ！！？(ﾋﾟｼｯ、ﾋﾟｼﾋﾟｼ、ﾋﾟｼﾋﾟｼ)」
「(ガシッ！)無理をするな菊地原っ！？彼女の叫び声もだが、…このトリオン粒子の勢いが凄くて無闇に近づくのは危険だ！？それにしても(ﾋﾟｼｯ)まるで、…カマイタチの様な切れ味だ(ﾋﾟｼﾋﾟｼﾋﾟｼ)」
「……いや、どちらかと言うと…(ﾋﾟｼｯ)かなりの高さのある滝にて滝壺に水やモノが落ちる際に発生する水流や水飛沫には(ﾋﾟｼﾋﾟｼ)かなりの破壊力や威力を秘めていると言われている。アレみたいな感じだな(ﾋﾟｼﾋﾟｼ)(その証拠に……鶴ヶ峰の腕を切り落とした敵はトリオン粒子に、…飲み込まれて姿が消えている。一時離脱もあるが、…恐らく"消滅"したのだろう)((…市河、情報共有を解除しろ！！今の状態じゃ逆効果だ！！陽菜さん、…どうしますか？))(ﾋﾟｼﾋﾟｼ)」

光輝くトリオン粒子を呻きながら勢いよく放出続ける柚紀に、離れた位置に居ても飛び火による損傷を受けており近づきたくても色んな理由で近寄れない風間達。…【腕を切断した亜種モッドがいつの間にか消えている理由】を独自に解釈している風間は、先ずはシロに聴覚情報の共有を解かせ、巽に指示を仰ぐのだが

〔ちょっ！？ナニこのトリオン反応はっ！！？…あのゲート大量発生時に放出されたのと比較にもならないからっ！！？(ｶﾀｶﾀｶﾀｶﾀ…)あっ、シロ！？アンタも極力パソコンに触るんじゃないよ！？(ｶﾀｶﾀｶﾀｶﾀ…)(にしても、あの時は"精神的に限界が来て"あーなったけど、今回は肉体的な理由も含まれてる。それだけで、こんなに数値に違いが出るのっ？？！)(ｶﾀｶﾀｶﾀ、…ﾋﾟﾀﾘ)…もしかして………言実は分かっていたの？あの子が痛みを伴う一定以上の怪我をすれば大変な事になると。…だからあれだけ念入りにチェックや対策を講じていた？〕
‐　バチ、ﾊﾞﾁﾊﾞﾁﾊﾞﾁ、…ﾊﾞﾁﾊﾞﾁﾊﾞﾁﾊﾞﾁ　‐
〔それは後で本人に聞いてください！！今は！！っっ！？全警戒区域内にてゲート発生！？特に風間隊の居る地域のゲート生成率が異常に急上昇！！？コレ……下手しなくても"夏休みの騒動の再来"ですよヒナ先輩っ！！このままじゃ……"他の地域担当部隊が全滅しかねません"！！！〕
〔ん？？えっ！！み、皆気をつけて！？…た、確かに夏休みの騒動時も"柚紀ちゃん目掛けて敵が集まる"傾向はありましたが、あれは一部の地域でしかなかったに……コレ下手したら【警戒区域全域に存在する敵全部】…柚紀ちゃんに引き寄せられてる？亜種も含まれている可能性があるのに、この数を三人で対処するのは流石に無理ですよ陽菜さん！！〕
〔ま、待って待って！！幾ら私でもこの状況を一人で捌くのは無理だって！！？あ～もうっ！？ヘルプミー、マイフレンドー！神様仏様言実様～！！？〕

オペレーターとしては巽も宇佐美も、…シロも腕前は良いのだがやはり"所属"が違うせいで着目する箇所に差が生じてしまい、情報が錯綜。更にこの事態を乗り切る手立てが全く浮かばない巽がお手上げ状態となり、思わず助けを請う状況に。"痛覚ON"の件はつい先程発覚したので、作戦室でなく開発部門に直行しているであろう"頼りになる唯一無二の親友"に
……そんな中

‐　………ウィーン、…ﾊｻﾞｯ…………臨時接続　‐
《嫌な予感がして此方に来てみれば、やはり"かなり最悪の状況"の様だな。……此処からの指揮は私が執る！？…ヒナ！！"忍田さん及び太刀川隊と冬島隊、ついでに二宮隊"に緊急招集を掛けろ！！"夏の悪夢が再来した"……これで重大性が伝わる筈だ！？〔(ﾊﾟｱｧｧ)言実っ！？私の窮地を察知してくれたんだね～！！ぅうう～～、持つべきはやはり友だね～〕感動する暇があるなら手を動かせ！……風間、柚紀はどんな感じだ？…ナニが遭った？》
「っ！？……亜種の奇襲を受けて片腕を切断、…痛覚がある状態なのを鶴ヶ峰は認識しておらず痛みによってトリオンコントロールが不可能に陥り、可視状態のトリオンを大量に放出を続けています。錯乱状態だからかは不明ですが俺達もトリオンによる攻撃を受けてしまい、…近づけない状況です」
《っ！？？……状況は理解した。…シロ、トリオン体の個人コードから今あの子が身に付けているトリオン体の設定を外部から操作可能か？通信は繋げれる筈だ。でなければ直ぐに何時もとは別のトリオン体と気づかれる可能性がある故にな、…どうだ？》
〔………出来なくはない、ですが…今の精神が不安定のユズちゃんのトリオン体設定を操作するのは、………私も"感情とかに引っ張られる可能性"があるので、難しいかと。あっ！このままじゃユズちゃんのトリオン残量が"任務続行不可能領域に"入っちゃう！！？〕

白衣…でなく正隊員用のトリオン体の姿で颯爽と現れた言実が現状の建て直しに掛かる。先ずは【足りない人員補給】の為に"とある条件の元"巽に招集を掛けさせる。…友人同士のやり取りは何時もとは変わらず、次に現場の声を聞くために隊長の風間に訊ねれば、偽りなく手短に要点を絞って説明される。それであらかたの現状を把握し、直ぐに打開策を今度はシロに依頼するが、数日前に倒れた理由が理由なので"柚紀が落ち着かないと無理"と曖昧に返答する。それらを聞いて考える仕草を取る言実だが、"自分で自分の尻拭い"をさせれない事態になるのは避けたいと此方にも思考を回す。更に

〔柚紀ちゃんも心配ですが、敵どうしますか？さいわい風間さん達周辺に発生したゲートから出てきた敵は柚紀ちゃんのトリオンのお掛けで身動きが取れないみたいですが…別方向からも接近しています！自由に動けないこの状況じゃ！！〕
〔……とりあえず指名した人には通知送ったけど、多分直ぐには来れないよ？やる事が山積みだ、…どうする言実？〕

宇佐美の懸念する声を聞いて更に思考を回転させる言実。……元々"禍根となった者を問い質す"のが一番の目的なのだが、この状況では直ぐには無理と分かっているのだ。そして現場に居るのは柚紀や風間達"だけ"ではないし、状況は夏の時とは違う。……故に

《……忍田さんが来るまで私は此処に居るが、防衛任務に就いている全隊員を気にする必要がある。(…あまりコチラに関わらない様にしていたのが仇になったな)……その地域の現場の指揮は、…お前がしろ！！……迅！！？》