柚紀の気持ちを聞けたのは良いが、再び眠ってしまったのを見てやはり不安が拭えなさそうな中学生二人を見た言実は、嵐山と当真と一緒に昼食を摂るように指示をする。更に『柚紀が次に目覚めれば空腹で何か食べたがるだろう。…適当に見繕って来てくれ』と頼んだのだ
そして付き添いを指名された二人が、主に話し合いで説き伏せ納得させればラボを後にする。その後、言実含め残ったメンバーはほぼ同じタイミングでため息を漏らした

「あ～、うん。成る程な。……コレが原因で言実ちゃんが柚紀ちゃん用のトリオン体に"あんな機能"を要求した訳か～。…確かに必要だなこりゃ」
「意外と無茶しますからね彼女"も"。……柚紀ちゃんは俺に無理して欲しくない、…サイドエフェクトを自分にでなく別の事にって考えている。………言った筈何だけどな～、【君自身が俺にとって大切な子】だって。(ｺﾘｺﾘ)…どこまで気持ちを尊重すべきなんだろうな～」
「まぁ、色々視えちまうってのも大変だな迅。……とりあえず"命の危険性が高い"事案や"柚紀の泣いている姿"…この二つを注意すれば良くないか？で、……その場に柚紀の親しい奴が視えなければお前が動く的な感じでさ。…つる姐もそう思うだろ？」
『……更に言えば【エンブレム付きの服】未着用や【トリオン体】でない時は特に注意が必要だな。そう言う訳だ(…ウィーン)……まだ暫く服を借りる事になるが構わぬよな？………風間』
「「！！」」

色々言っているが全て柚紀に対する事であった。……行動力があるのは悪くないのだが、抱えている事情が事情なので全員が複雑な心情なのだった。そして言実が話している最中に廊下に通じるドアが開かれ、"ロックを解除した相手"に自然な流れで話しかけた事には、太刀川は勿論だが冬島も驚きを隠せない。…迅は視えていたので驚きはしなかった

「……何故驚かれないのですか？俺がこのラボの入り口のロック解除パスを知っている事に」
『簡単だ、……例の騒動の時に宇佐美にパスワードを教えた後変更をし忘れていたからな。…ま、流石に不用心だから後で変えるがな』
「……少し前なら鶴ヶ峰が居たから分からなくもないが、不用心過ぎるぜつる姐。因みにだが、………自宅のパスも"ラボと同じ"な訳……ねぇよな？」
『……当たり前だ諏訪。と言うより、…お前は知っていただろう？ラボのパスが"何を表しているのか"をな。自宅のは確かにラボのとは違うが……"方式は同じ"だ』

と、話ながら室内に入ってくる風間・諏訪の話を聞いて太刀川が「俺にも詳しく！！」と興味を示すが「今は任務優先だ」と風間が一蹴する。そして健やかに眠っている柚紀を見て二人もため息を漏らす

「見た所大丈夫そうだが、……目を覚ますのは暫く時間が掛かりそうか？あのガンナーのトリオン能力は幾分か低いからそこまで威力はねぇ筈だが…当たり所が、な」
『…………少し前、…寝ぼけた感じではあったが少しだけ会話は出来ておるから、意識が完全に戻るまでそう時間は掛かるまい。時に風間、……三輪はこの子について…何か言っていたか？』
「……米屋とスナイパーの二人は鶴ヶ峰を心配していましたが、三輪は特に。ただ、彼女が"貴女の姪"とは理解していました。…色んな点を考慮しても二人が仲良くなるのは………他の者よりは難しいかと、…何か共通点があれば別、ですが」
『………………城戸派のＡ級チーム"全員"がこれ以上柚紀と一定以上親しくなるのは、…避けるべきだな。……色々面倒な事になりそうだ』
(全)「………(ｺｸﾘ)」

柚紀が【正式なボーダー隊員でない点】や【存在事態に危険性を持つ点】更には【三輪と言実との関係性が他の隊員と"明らかに異なる点"】…これ等を考慮すると、二宮とは"別な意味"で要注意と認識するメンバーであった
その後、話がある程度纏まった所で昼食に出ていたメンバーが何やら立派なお重を持って戻って来た。食堂のおばちゃん達曰く「夏休みからコッチに来た言実ちゃんの姪っ子ちゃんかい？あの子礼儀正しいし、何時も【美味しかったです】って笑顔で言って……えっ？倒れた？お腹を空かせている？？………少しお待ち、イイモノ用意してあげるから！！？」と、隠れた人気者となっており"旬の食材たっぷりの秋御膳"を作って彼等に持たせたのだった。…ちょっとした"オマケ付き"で
そのオマケから漂う匂いに眠っていた腹ペコな柚紀が反応し

『(ｸﾝｸﾝ)……！！(ﾊﾟﾁｯ！ガバッ！！)焼き芋の薫りだっ！！？(…ｽﾞｷｯ)っ！！？(ﾎﾟﾌﾝ！！)うぅう～～、…頭痛い！お腹すいた！！寝転んだら皆さんの顔が見れない～～！！！(ｼﾞﾀﾊﾞﾀ)』
「『……………ハァ～』」
「ったり前だ！！脳天に弾受けたんだ痛いに決まってんだろ！？ってか腹減ったとかお前…朝飯何時に食ったんだ？『……朝の6時過ぎ』早っ！？でもそれなら流石に腹が空くな。それと、……ヨッと(ｸｲｯ…ストン)…っておい風間？！」
「……背もたれナシだと辛いだろ？俺に気にせず体重を掛けても平気だ、今はトリオン体だからでもあるが生身でも鶴ヶ峰を支えるの位、俺でも造作もない。………食べ終わったら事情聴取と、…説教受ける覚悟をしておく事だ」
『は、ハイ…です(あ、コレ逃げれない奴だ。怒られるのは嫌だけど今回は仕方ない、か。後は、……責任を感じているのかな風間さん。…"また"って)』

一先ず目覚めた柚紀に対して言実を含めたメンバーが色んな理由でため息を漏らす中、諏訪が代表して叱りつつ返答を返し、最後には寝ころんだままの柚紀の手を引っ張り上半身を起こしてやる。背後に隙間が出来た所に風間が座り込み背もたれと、…監視役を担う的な発言をする。それに対して独自的思考にて行動理由を推測する柚紀は、反論は示さなかった。表面でも内心でも、だ