佐鳥の発言を聞いて再び全員の表情が変化した、…のたが、些か違いが現れた。諏訪・荒船・笹森に半崎は"驚いては居るが何か考える仕草"をしている。残りのメンバーはただ単に驚愕している風に見受けられる。何故か分からず首を傾げている佐鳥に、半崎が恐る恐る口を開いた

「あ～、えっとさ、……あくまでも推測の話だけどさ、………鶴ヶ峰が雨が嫌いな理由ってさ【その日に親を亡くしたから、若しくは報せが来たから】じゃないかな？……聞いちゃったんだ俺、"親はどうしているのか？"ってさ。そしたら【交通事故で亡くした】って言ったんだよ。で、……その後色々人付き合いで苦労して、………辛くなったから頼りになる言実さんの元を夏休みに訪ねた的なのを、聞いたんッスよ移動中に」
「「「「！！？」」」」
「成る程、…原因はそれか、基地に到着した際に、抱きついた、鶴ヶ峰が、言実さんに、………辛くない訳がない、見たからな、歓迎会でも、親の話になったら、…辛そうにしていた」

半崎の話を聞いて、これまた色んな反応を示す中、更に穂刈の発言を聞いて【完全に重度のトラウマ案件】と認識した佐鳥は半崎を無意識に睨み付けようとしたが、……色々思うことがあり何とか留まったのだ。険悪な雰囲気になれば眠っている柚紀が目覚めないとも限らないし、半崎は知り合って間もないのだから"素朴な疑問"が出てきても仕方ない。ここまでは自らの体験・失敗談だ。そして一番気になったのは

「(親が交通事故で死んでいる？……違うよね？母親は存命だし、父親の死因は少なからずボーダー関係の事案だ。ってか交通事故なら)…………交通事故で親を亡くしたのは確か、おつるちゃんの両親、…柚紀ちゃんの祖父母の筈だよ？ってかもし本当に死亡した理由に車が関わっているなら……【迎えに来た諏訪さんの車に彼女が乗る筈がない】。トラウマを甦らせる事を自らする訳がないよ、多分。でも……まぁ、そうか。…だからおつるちゃんは"車を持たない"のかもね。バイクを愛用してるのは、少なからず抵抗があるから…なのかも知れないや」
「ま、待って佐鳥くんっ！！情報量が多すぎるよっ？！順番に説明して欲しいかな？……【どこまでが確定事項で、何処までが推測の域】なの？」
「………少なくても"鶴ヶ峰は車が平気な点"と"つる姐が車を持ちたがらない点"は当たりだろうな。…車に関しては【確かに車があれば色々楽だが小回りが効かないし、バイク以上に維持が面倒だから】とは言っていたが…………(ハァ～)流石にその可能性には、気づかなかった。あの人と外で会う理由はほぼ"飲み関係"だ、あまり深くプライベートに関わることはほぼないに等しい。…ま、"トラブルに巻き込まれて"的なのはあったが、あの時も大体バイクで駆けつけてたな」

佐鳥の発言に今度は"全員"同じ様な反応を示した。が、理解が追い付かない加賀美が代表して訊ねると、一番鶴ヶ峰の二人に詳しい諏訪が口を開く。内容を聞いて誰も異義を唱えない中、笹森が挙手した後に口を開く

「じゃあさ、何で鶴ヶ峰はそんな嘘を俺達に言ったんだよ？…親が死んでいるのも嘘だって言うのか？」
「(ﾌﾙﾌﾙ)親が死んでいるのは本当だよ。…初日に聞いちゃったんだ"二人の関係性について"を。で、……二人を結ぶ人物、つまりは柚紀ちゃんのお父さんでおつるちゃんのお兄さんが亡くなっているのを聞いた。…お母さんは出てきてなかったけど、……どう、なんだろ？聞いたことないから、母親に関する話は彼女から、一度も。……聞けないよ、あんな辛そうで泣きそうな表情した彼女にっ！………嫌われたく、ないからオレ」
「なら、何で死因を偽る意味があるんだ？いや、……コレに関しては何となく理由は分からなくもない。恐らく鶴ヶ峰は"死に目に…遺体をちゃんと見ていない可能性"がある。知っているのは【親が死んだ事実のみであり、詳細が分からない】。…そもそも、【何時親を亡くしたか】……佐鳥は知っているか？」
「(ﾌﾙﾌﾙ)……何年前とか、詳しくは聞いてない、です。ただ、少なくても【おつるちゃんが働く前】だと思います。…………多分、おつるちゃんだって両親を亡くして色々苦労した、…それを柚紀ちゃんにも同じ経験を強いることは、しないっ絶対にっ！！でもあの人は頭が良いから【学生のままでは彼女を養えない】…と同時に思うと思います。…うん、そうだよねきっと」