「頼りすぎも良くないが、何でも一人で出来ると思うのはただの傲慢に過ぎない。出来ないことを認めるのも一つの勇気だ。……鶴ヶ峰が今までどんな環境に居たかは俺には分からないが、少なくともボーダーでなら助けを求めれば誰か必ず答えてくれる。言実さんは勿論、諏訪や…必要なら俺も手を貸そう」
『…………(ｺﾞｼｺﾞｼ)えへへ、此処は本当にいい人が多いですね。頑張って来た甲斐がありました』

風間の話を終えた後、暫く沈黙が続いたが柚紀は目元に溜まっていた涙を拭うと、年齢相当にちゃんと見える嬉しそうな笑みを浮かべた。それを見た風間もフッと薄く笑みを浮かべ「そうか」と返した

『……よし、やりたい事が決まったから早速ですが風間さん、ご協力お願いします。そうなると必要な物は…………あ"っ、……う～、買いたいもの出来たけど勝手に動いたら言実さん達に怒られるし心配かけちゃう。…どうしよう』
「………(ﾊｧ~)お前、その手に持っているのはただの玩具じゃないだろ？」
『………あっ。……アハハハハ…そうでした』

いざ行動しようとする柚紀だったが、連絡もなしに待ち合わせ場所である此処を離れるのはあの時の二の舞になると踏み止まり、どうするかと本気で悩む姿を見た風間は、ため息を漏らしかなり呆れた表情と口調で柚紀の手元にある携帯の存在を指摘する。完全にスルーしていた柚紀は乾いた笑い声を出した後、先程ダウンロードしたアプリを起動させて早速言実宛のメッセージを打ち込む。
打つ速度は遅いが、何とか文面を完成させて念のために風間にチェックしてもらってから送信。内容は【買いたいものがあるので、風間さんと一緒に本屋さんに行ってきます】と打ち込んだ。連絡したのを確認すると「行くぞ」と、風間が動き始めたので慌ててついて行く

『か、風間さん待って下さい。言実さんからの返事がまだ…』
「問題ない。言実さんの事だ、メッセージに気付けばそれに合わせて行動をする筈た。重要な事なら返事を待ってから行動するべきだが、この程度なら返事を待つ必要はない。……慎重な事は悪くはないが鶴ヶ峰はその辺りの見極めがまだ甘いな」
『ぅ、……善処します』

返事を待つのは時間のムダと考えて行動に移る風間の言葉に納得し、更に改善点を指摘され少し落ち込む柚紀であった
因みに移動中に言実からの返信があった際の、バイブレーションと着信音に驚いた柚紀が携帯を落としてしまい、壊れたと思い泣きそうになった事も触れておこう(勿論、風間がすぐにサポートしたので泣くことは無かった)