60.迷訂の曲
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……柚紀先輩大丈夫かな?何だかとても辛そうに私は見えましたが…先生」
『………今日一日で色んな事が有りすぎた故に、流石に負担も多かっただろう。だが、柚紀も学校に行けば今回みたいに朝から晩まで誰かと共に行動をするのも余儀なくされる。…少しだけ"保険"を増やすべき、かもな』
「その方が良いかも知れません。…俺達は一般人より"特殊な生活"をしていますから鶴ヶ峰の事情をさほど抵抗なく受け入れて居ますが、言実さん……"保険"も大事ですが、やはり"改善"も視野に入れて行動すべきかと」
『……それも分かっておる。だがそう簡単な事ではない、…一気に事を進めれば必ずあの子への負担が掛かる。焦りは禁物だ、でなければ…………チッ、…周囲に被害が出てからでは遅い故にな』
暫く誰もが無言でいた中、日浦がポツリと柚紀が心配で言実に訊ねた。柚紀の渾名の辺りから晩酌の手を止めていた言実が、残っていたお酒を一気に飲み干した後に見解を口にすれば、荒船が"ずっと後手は良くない"と些か辛口な見解を口にされ、少し苛立った口調で返答する。一方で時枝は自分の見知らぬ所で柚紀に何があったのかが気になり、知っていそうな笹森に訊ねる事に
「笹森、今日彼女に一体ナニがあったんだ?……あの広場で大まかな事は聞いた、だけど…(アレだけじゃない筈だ、でなければ鶴ヶ峰さんが"自分は他の人と違う"と認めただけで、あそこまで辛そうになる訳が)」
「…………多分、時枝が知りたい事を俺は知っている。だけどさ、…鶴ヶ峰本人がお前に教えていない事を他人である俺が話すべきじゃない(俺だってそんな事されるの、嫌だから。多分鶴ヶ峰だって……)」
「ま、今回は日佐人の言い分が正しい…かな?……さっきのゲーム風な感じ言うなら"謎を解く為、説明に必要なピースが今現在足りていない"って感じ(敏いとっきーに犬飼先輩の……二宮隊関連の事を話したらどんな行動をするか分からない。…柚紀ちゃんが関わると何時通りでなくなっちゃうからな~。……"恋の力"は凄いわ)」
時枝の問いに、笹森は複雑な表情をさせながらも解答を拒否をし、それを擁護するかの様に小佐野が口を挟む。少し考えた後に「…分かりました」と自分を納得させてそのまま引き下がる。そんな時枝と、苛立ちを露にする言実を見て諏訪が小さく溜め息をし
「(つる姐は…まぁ、どうにでもなるし……太刀川に経験を積ませる為に、このままでも良いが、アッチは……)……(スクッ…スタスタ)」
「?!諏訪さん?どちらに?」
「……(スッ)煙草切らしたから買ってくるだけだ、…姐さんのもついでに買ってきてやるよ。…もう無いから吸ってない訳だろ?丁度まだ鶴ヶ峰から頼まれた時の封筒、所持したままだしな。ってか……コンビニこの辺りにあったか??」
「!…確か少し歩きますがありましたよ?……おれで良ければ案内しましょうか?」
席から立ち上がり個室を出ようとする諏訪を堤が声を掛けると、空の煙草ケースを見せて外出理由を話すと追加購入や言実が苛立っている理由の"一つ"を口にし、更に少しだけ懸念材料をを漏らせば、"予想通り"時枝が反応し同伴を申し入れる
「おぅ頼むわ時枝。そんな訳だお前等、……この人の事頼むぜ?多分このままだと確実に酔い潰れる。好奇心でソレをみたいとか思うなよ?…………最終的に後悔するのは確実にお前等だから。…嵐山、適当に相手してやってくれ。普段くらいの量だが、…黙ったままだと酔いが回っちまうしな。じゃあ行ってくる(スタスタ)」
「成る程、…分かりました諏訪さん。……充も少し外の空気を吸ってくると良いよ。…朝から仕事だったし、此処でも…周囲を常に気にしていただろ?気分転換、しておいで」
「……分かりました、そうします」
諏訪は言実に対する注意点を述べるとさっさと個室を後にした。ソレに続くように時枝も出ようとしたが、嵐山の言葉に見送られる形となってしまった。…流石隊長を務めるだけあり、部下の様子はお見通しな訳だった
少し歩いた先に諏訪が止まって待っていた、…煙草を咥えた状態で。それを見て時枝は察したのだ、"あれは自分を連れ出すためにわざとした"のだと
「……おれに何か用ですか?芝居打ってまであの場から連れ出す理由は無い気がしますが?」
「んぁ?……俺の煙草が無くなったのは本当だし、姐さんも無くなりそうなのも本当だぜ?ただ、別に無くても問題ねぇが、あった方が良いと思ってな。俺も姐さんもそこまでヘビースモーカーじゃねぇが彼奴等は知らなかった訳だし。で、お前をあの場から連れ出したのは俺の独断だ。……似てるからな、お前と鶴ヶ峰は」
ある程度近くまで時枝が来たのを確認して、ゆっくり歩きながら問いに答える諏訪。ただ、この内容は言実から厳命された事に反するが……フォローする必要があると判断したからだ。…現時点で柚紀を分かってくれる"同性で同年代の友達"が居ないのと同じく、時枝にも居ないのだ………"同性で同年代、尚且つボーダー隊員で柚紀の事を気兼ねなく話せる者"が、……佐鳥でない誰かが。因みに佐鳥には恋敵的な位置に居るが笹森がそれに該当する。更にこんな行動をした理由には太刀川が嵐山に助言したのを目撃したからでもあり、【厳命はされだが、柚紀の為に動けば結局言実は本気では怒らない】そう改めて考えたからだ