「(シュゥー)お疲れ様です当真さん。……三人は一体何をされていたのですか？」
「よっ、そっちこそ護衛…お守りご苦労さんだったな、くま。別に大したことしてないぞ？(ｸﾙｯ)なぁ？」

当真が戻ってきたので、換装を解きながら挨拶をする熊谷だが、ずっと柚紀の護衛に徹していた為、当真達の行動理由がイマイチ知らない様子。それに対して何時もの様に飄々とした態度で話しつつ、後ろの二人に話を降る。それを受けた二人が詳細を話し出す

「していないな、大したことは、…やっただけだ、同じ事を、あの時と」
「そう言う事だ。何をしたかは……(ﾁﾗｯ)鶴ヶ峰なら予想が出来ていると思うから、合わせて聞いてみろ」

具体的には言わないが、佐鳥以外は今日モール内にて体験した事なので言わなくても察しが付くだろうと考えたのと、……荒船は柚紀が佐鳥に"何かを隠している"ではないかと推測した為、説明を敢えてせずに丸投げを選んだ。その二人の発言で柚紀に視線が集まりそうになった時

「先輩達は人探しに行っていたんですよ、…その様子だと無事に解決したみたいですね、良かったです」
「「「「「「？！？」」」」」」
『あ！！時枝くん！対応お疲れ様、それと……何で当真先輩達のやった事、知っているの？』

声のした方に全員の視線が集まった。その先に居たのは換装を解きいつの間にか此方に来ていた時枝だった。気がついていなかったメンバーは驚き、柚紀・佐鳥・当真・そして荒船は存在に気づいたので驚かず、「とっきー、オツカレ～！！」と佐鳥は気楽に声を掛け、それに対して軽く手を降って反応を示すと先ずは柚紀に視線を向ける

「当真さんに頼まれたからだよ、探している子と万が一"入れ違い"になった時の事を考えてね。…警察の人にその事を話していないって事は、"事件性なし"で"身内の問題"だった……って所ですね」
「(ドサッ)流石とっきー！正解だ！！いや～、お前さんも周囲を見る目や洞察力は柚紀に負けず劣らずだから、白羽の矢を勝手に立てさせて貰った訳だ。…あの時はコイツに頼めない状況だったからな(ﾎﾟﾝ)」
「…頼んでいたら人を見る目を流石に疑いますよ？ただ、……性格的な理由と前科がありますから無いとは一概にとは言えませんからね。荒船先輩達が彼女と知り合ったのも、それが原因じゃないですか？」

時枝の話内容に満足そうにしつつ、当真は柚紀の隣に堂々と座り頭に手を置く。一応髪型をセットしているのを気遣い、何時もみたいに撫でるつもりはない様子だ。その気遣いにうっすら笑みを浮かべたが、……時枝の正論的な指摘を聞き、否定できない内容なだけに些か困った表情をする。それを見た荒船は時枝の言い分が事実と結論付けると、目を細める

「当真お前、以前にも鶴ヶ峰に何かやらかしたのか？ったく、(ｶｼﾞｶｼﾞ)……それじゃあ言実さんから"警告3に近い2"を食らうのも当たり前だぞ？あの人の事だ、絶対鶴ヶ峰に関することには敏感で甘い考えはしない筈。…現に自ら元凶を追い掛けて行かれたし」
「お～、荒船先輩も理論派だから説得力あるな～。それと当真さん、……ソレ諏訪さん知らない事だよね？知っていたら多分、今日連絡してないんじゃないかな～？な～んか風の噂でだけど、…太刀川さんも似た様な事してコッチはセコム案件になったって話ですよ～？」
「待て待て待て！！太刀川さんの件は完全にアウトゾーンだったが、俺のはつる姐や隊長監修の元での奴だから全然違うって？！……柚紀！とっきー！佐鳥！！何とか言ってくれ～！！俺は無実だってさ～！！！」

荒船の言い分や、小佐野の脅迫気味な尋問に流石の当真も部が悪いと判断して、当事者である三人に弁護を要求する。それを見て笹森は(今日はデジャブに感じる回数が多いな～)と、苦笑いを浮かべると何となく"この後の結末"が読めてしまった。そして柚紀関係で、この様に助けを求めた風景を見ている二人の取った行動はと言うと……

‐　ガシッ！(ガシッ！)、……ドスン！！　‐
「フゥ、…とりあえずこれで大丈夫かな？(ｽﾄﾝ)当真さんには悪いけど、柚紀ちゃんから離れてもらいまーす。……反論は認めません！！(ﾍﾞ~)」
「はあぁ？！！どういう意味だよ佐鳥！！それに……とっきーも何同じ事をしやがるんだよ！！？説明しろよ！説明！！」
「説明も何も(ｽﾄﾝ)……太刀川さんの件を知っているならご存じの筈です。あの人が自らの不利な状況を打開しようと彼女に助けを求めた、…その結果どんな状況になり、どんな結末を迎えたかを。全ての状況は一致していませんが、アレは鶴ヶ峰さんにとっては嫌な体験になる訳です。……それを再び思い出させる様な状態なりそうなのを見過ごす程、…おれ達は甘くないですよ？」

二人掛りで当真と柚紀の間を、人一人分開けると満足そうな表情をした佐鳥は再び柚紀の右隣に座れば、挑発的な態度を取る。それを聞いた当真は、不機嫌なのを露にしながら佐鳥と同じ行動をした時枝に矛先を向け……軽く睨み付ける。その視線を無視し背中合わせになるが柚紀の左隣に、当真との間に時枝は座り表情は変わらないが口調は真剣なもので……明らかに柚紀を守ろうとしているのだった。それに対して柚紀は申し訳なく感じつつも、何処か安心していて……嬉しそうな笑みを浮かべていた