53.労いの曲
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
時折、佐鳥と時枝が柚紀の様子を見に来たりして暫くしない内に、騒動に気づいた交番勤務の警察官が広場に現れた。その理由は駅の近くには大抵事件等があった時の為に交番が設置されている事が多く、此処も例に漏れずであったからである。その対応を嵐山と時枝が勤める事になり、佐鳥はお役御免になった。警察官の人数が少ない事もあるが、……話す人数が多いと"矛盾"が発生する可能性があるからだ
人ごみに紛れて換装を解き、生身に戻った佐鳥は未だにトリオン体のまま警戒をしている熊谷……顔色が優れない柚紀の元へ
「熊谷先輩お疲れ様です、……佐鳥は邪魔になりそうなので此方に来たのですが、…柚紀ちゃんの様子はどうですか?」
「佐鳥かい、……幾分か良くなった様には見えるけどあれだけの反応を示したんだ。実際に大丈夫かの判断が難しいね、あたしは分からないけど…アンタなら分かるんじゃないかい?」
視線を柚紀に向けながらそう告げる熊谷、……自分より互いに信用信頼している佐鳥…"達"なら隠すのが上手いこの少女の心情を、心を救えると思ったのだ。モール内で迅が柚紀にやった様に
そんな熊谷の言葉に答える為に、自分がしたい事をする方が理由としては比率が多いが、兎に角ベンチに座っている柚紀の元へ近づく佐鳥。それにオペレーター二人が先に気づいたが、何も言わずただ軽く頷くだけで声を掛けたりはしなかった。佐鳥の存在に気づいた柚紀が、気持ちを隠す可能性があるのを小佐野は今までの経験から、加賀美は何処か他人を気にする柚紀の言動を見たからだ
「!!佐鳥先輩っ!?お疲れ様です!!……あちらはもう大丈夫なのですか?」
「お疲れ日浦ちゃん!……警察の人まで出てきちゃったから佐鳥のやることがなくなったからね~。…嵐山さんやとっきーみたいに上手く立ち回り出来る自信がなくてさ、だから…………(スッ)佐鳥に出来ることをやりに来た訳。(サワッ)……まだ辛そうだね、…ちゃんと気づいてあげれなくてゴメンね?」
日浦の声で佐鳥の存在に気づいた柚紀だが、色んな理由からソチラを見れず俯いたままの状態で二人の会話を聞いていた。その理由は理解出来ていない佐鳥だが、"柚紀の顔が見たい"ただそれだけの理由で正面でしゃがみこみ、更にもう癖になりつつある"控え目ながら相手の顔に手を触れる"行動を取れば、流石の柚紀も自然と佐鳥に視線を向ける。そして力無く笑みを浮かべながら口を開く
『……仕方ないよ。だって本当に不審者が居るって事、佐鳥くんは気づいてなかったでしょ?これだけ人が居れば分からないのも当然、だよ?』
「……でも少し考えればその可能性に佐鳥でも気づけた筈だ。…ボーダー内ですら、君は色んな理由で"常に視線を集めていた"からね。あのエンブレム付きの服は"犯罪抑制"の効果もあった、だからずっと使っていた。…自衛目的の為に、……違う?」
「「「!!」」」
「(口調からして"実際には見ていない"みたいだけど、理解しているみたいね。あの服の効果を………コレって全員共通の認識事項なのかしら?でもあの米屋も"防犯ブザー"とも言っていたわよね?…ま、少なくとも"柚紀の身を守るモノ"とか"後ろ楯"が分かれば問題ないわね)」
似た内容を今日言実達は話していたが、経験者である熊谷を抜かした女子達は知らなかった事なので驚きを隠せない様子だ。使用理由を指摘され困った表情をする柚紀を見て"アタリ"と判断した佐鳥も、複雑な表情を浮かべてしまう。…自分が思っている以上に彼女に対して危害を加える事柄が多いと痛感したからである
そんな佐鳥の表情を見たくないと思った柚紀が取った行動は……
‐ サワッ ‐
「!!?(パッ)えっ、あ、ち、ちょっと柚紀ちゃんっ?!何で、また……」
『ん~、…仕返し的な?……佐鳥くんはあまり考えすぎるのは良くないよ。あ、考えるなって意味じゃないよ?"感じるがままに行動"した方が、佐鳥くんらしいから。慣れないことをするのは、誰だって大変だもん。…ね?(スッ)』
「……柚紀ちゃんがそれで良いと思っているなら、その気持ちを佐鳥は尊重するよ。あ!でも、駄目だって思った事はちゃんと口出ししたり注意したり、…するからね?」
『………それが佐鳥くん自身が決めた事、判断した事なら私は何も言わない。きっとそれは……("私の為"の行動だって分かっているから)』
佐鳥は何時だって自らの気持ちを偽ること無く、素直で真っ直ぐな人だと柚紀は分かっているから、彼に対して疑う心は一切持たない。対して佐鳥は柚紀が一途で頑固な性格なのを今までの経験から学んでいる事もあり、尚且つ自分の感覚を信じている。…互いを信用信頼しているからこそ、そのままで居る事を願っているのだ
因みにだが……"二人の空間"的になりそうなのを女の勘で察知した日浦は、佐鳥が屈んだ辺りから然り気無くベンチから離れてオペレーター二人の元へ近づく退避をして成り行きを見守っていた。勿論熊谷も警戒を継続させつつ、だ