「(……まさか、本当に不審者を見つけていたのか鶴ヶ峰は。それに諏訪さんも気づいて、更にそいつが犯罪に手を出したから追跡に動いたって訳だ。…さて、俺達はどう動く？)」

荒船は内部通信を聞いて諏訪隊が動いた要因を把握する一方で、改めて柚紀の洞察力の凄さを感じつつ、自分達のこの後の行動を模索する。荒船も怪しい奴は見つけていたのだが

「((どうする、荒船、…見つけていた、俺も、……気になる奴を、だが、動かない、あの発言のせいか？言実さんの、任務と言う))」
「((お！流石穂刈だな！あの人ごみの中から…柚紀を見つけ出しただけの事はある。……俺も目星をつけていた輩が居たが、つる姐の"演技"を真に受けてビビっちまったみてぇでよ～。……こりゃあ俺達の仕事無くねぇ？))」
「((だが、何か行動を起こす必要があるだろう。そうでないと一般人に不審に思われる。最悪、……鶴ヶ峰が被害を受けていた事が))…！………成る程、…だから言実さんはあんな伝言をしたのか。なら……(ｷｮﾛｷｮﾛ)」
「荒船？どう言う事だ？」

軽く周囲を警戒しつつ内部通信で話していた三人だったが、荒船が言実の意図を理解すれば説明する間もなく"ナニかを探し始める"。穂刈はとりあえず成り行きを見守り、当真はと言えば

「……そこの椿柄の浴衣を着たお嬢さん、…誰かを探しているのか？あ、俺はボーダーの人間で、嵐山隊の任務の手伝いをしている者だ。この時期は色々危なっかしいからな～、…ま、パトロール隊って感じだな」
「え？あ、あの、……その(ﾓｼﾞﾓｼﾞ)」

荒船より早く言実の意図を理解していた当真は、既に行動を開始していた。…柚紀と同じ位の年齢の女の子にしゃがみこんで何やら話しかけているその風景は、柚紀本人と話している姿を彷彿させる。それを見て穂刈もやっと理解したのだ。……言実の言葉の意味を

「……こんな成りだがれっきとしたボーダー隊員だから安心しろ。(ｽｯ)…大丈夫だ、俺達は君に危害を加えたりはしない。何か不安や気になることがあるなら言ってみてくれ((つまりは、モール内で鶴ヶ峰に対してやった事を此処でも行動をしろって事だ。多少内容や行動理由が変わるが、結局は同じ事の繰り返しになる))」
「……と、友達が、見つからなくて。…先に来ている、筈なのに、あの子も浴衣だから…見つけ、られない事……ないのに」
「成る程な、因みにどんな柄の浴衣か分かるか？後あれば写真とか見せてくれると助かる。…俺達はそこそこ前からこの広場に居るから、……もしかすると見ているかも知れない((で、今回"も"人探しになりそうだな。柚紀みたいな容姿に特徴が無くても、浴衣姿なら探しやすいだろう？…アイツは"無意識"に、"目立たなくしようとしている"一面もあるが、……あんなの普通の中学生はしないから楽勝だって！！)) 」
「えっと、…確か牡丹柄のを着るって、言ってました。写真は、……流石に見せるのに、その…抵抗が………(ｷﾞｭｯ)」
「必要はない、無理をする、せめて、教えてくれないか？……その子の特徴を、詳しく((確かにやったな、似た事を、モール内で、それと、とりあえず、任せる、対応は、……怖がらせそうだからな、俺だと、容姿的にも、この話し方にも))」

少女が緊張ぎみなのを見抜いた荒船は、安心させる為にしゃがんで目線を低くし出来るだけ口調や表情を気をつけて話し掛ける。それを見て話し出した少女に、当真は下手な刺激を与えないように荒船より後ろに下がって話しをしつつ、周囲を見渡して浴衣の女子をチェックする。更に少しだけ話した女子に対して、今度は穂刈が意見を述べるが、自らの容姿や話し方が他人からどう印象付けるかを自覚しているので、あまり関わらない様にして探すのに専念する
それから少女が途切れ途切れに友達の特徴を語り出し、三人は該当する子を見ていないか記憶を手繰る。…すると、穂刈が反応を示し荒船を含めて何やら確認を兼ねて訪ね始めた。それを横目で気にしつつ、当真は"次の行動の為の準備"に取り掛かる

「(さて、万が一の対策しておくか。そうだな～)…！………おーい、とっきー。ちょっと来てくれないか？」
「(ﾀﾀﾀﾀｯ)はい、どうかしましたか？当真さん」
「今から言う特徴の子を見つけたら、俺達の誰かに報せてくれ。…迷子探しに此処から離れる事になりそうだ((早めに戻る、その間……(ﾁﾗｯ)柚紀を頼むぞ？お前も、知ってるだろ？アイツは今日…))」
「分かりました、念の為に佐鳥にも伝えます。…女子なら彼奴の方が見てますからね((！……そうでしたね。…数値的には問題なかったですが、それだけでは正確な状態把握は無理に等しい。…特に彼女の場合は隠すのが上手いので、一層注意します))」
「宜しく頼む。…嵐山さんは忙しそうで無理だろうからお前等が頼りだ、……"見逃すなよ？"」
「(ｺｸﾝ)」

呼び寄せた時枝と二重の会話を済ませると、荒船達も女子との確認が済んだらしくそのまま行動を開始した。それを見送った時枝は、そのままの足取りで……未だに顔色が良くない柚紀の元に向かうのだった