『だって、……申し訳なくて、…私が三門市に来た日からずっと、…お世話になってる、守られてる、………貴方はちゃんと言ってくれた"私の味方になる"って、…でも時折……不安になる、……迷惑じゃないのか、負担になってないか、…仕方なく関わっているんじゃないか、……そう思わずにはいられない、……信用してくれているのは分かるよ？だけど貴方に……秘密にしている事がある、…それが言えないのが………もどかしい、そんな自分が嫌になる、……もう、疑いたくない…………嫌われたく…ないのに』
「！((ねぇ、とっきー。まさか迅さんの狙いって…))」
「…((コレをおれ達に聞かせる事、だろうね。初日から会っているのは"おれ達も同じ"だ、…つまりは))」
‐　今彼女が話した気持ちを自分達にも抱いている可能性が高い事を意味する　‐

迅の意図を理解した二人は、思わず顔を赤くさせていた。…全てが当てはまるとは考えていないが、自分達をあんな風に思ってくれている事に嬉しいのは勿論なのだが……解釈の仕方次第では"とんでもない事を言われている"事にも気づいたのだ。柚紀のあの言い分はまるで…

「(ま、こんな所かな？さて、仕上げに……)(スッ)…所で柚紀ちゃん。……二人の事忘れてはいないよね？それだけ近くに居るのに気付いていない訳じゃない筈だ。後さ、今の言葉……二人にも当てはまっているって気づいてる？全てじゃないにしても………俺が何を言いたいか、流石に理解できたよね？(ﾆﾔﾘ)」
『！！！(ｷｮﾛ…ｷｮﾛ)……っ！？(相手の姿を認識できなかったり、…集中すると、安心だと思うと、周りが見えなくなる癖)……直さなきゃ駄目かなやっぱり。……ってか迅さん！！嵌めるなんて酷いじゃないですか～』
「でも、こうでもしないと気づけないでしょ？"色々"ね？……否定はさせないよ？君が俺を"自分の状況に重ねて見ている"のと同じで、俺も"君が抱いている悩みや気持ちを経験している"…似ているから分かっちゃう、そうでしょ？特に"色んな意味で重要性の高い特殊なサイドエフェクト持ち"な点までそっくりだ。……柚紀ちゃんと俺は"鏡のような関係"…丁度今の立ち位置みたいな感じね。で、横の二人が俺に取っての"嵐山やボス"みたいな存在かな？………後は自分で考えな、君なら答えを見つけ出せるから。それと、…【一度でも自分の気持ちを偽れば後悔する日が必ず来る】……俺が昔静樹さんに言われた言葉だよ」
『？！…何でお父さんの名前を？それ反則だから！！……否定できなくなっちゃうよ』

立ち上がった迅の指摘で視界に入っていなかったとは言え、肩触れ合う程の距離に二人が居たことを認識すると、自分の悪い癖が出ていた事に気づき……"色んな理由"で顔を赤くする柚紀は難癖をつけるが、年の功なだけあり軽くいなされ更なる追い討ちを食らい、止めとばかりに父親の名前を出されて抵抗を諦める柚紀。それを満足そうに迅が見ていた時

‐　ガチャ……キイィィ　‐
『全く何時まで居るつ……何でこんなにも人がおるのだ？(佐鳥は兎も角、迅に時枝まで？……どうなっている？"二人なら兎も角、三人だと当て嵌まらぬ筈だぞ？")』
『「「言実さんっ！？/おつるちゃん？！」」』

まさか言実が屋上に来るとは思っていなかった三人は、各々の理由で焦っていた。"全ては把握していない"が、困っているのには気づいた迅が、言実に近づきながら何時もの口調で話しかける

「どうも言実さん、相変わらずクールビューティーで何よりです。……久しぶりに逢えた事ですし、ちょっと俺に付き合ってもらえませんか？…柚紀ちゃんの事で話しておきたい内容があります」
『！！じ、迅さんっ？？！(な、何を言実さんに話すの？…色々有りすぎて分からないけど、何かヤバい気がする。止めないと！！)(スクッ………クラリッ)っ！！！？』
「ワワワッ！？！(ダキッ)…柚紀ちゃん、大丈夫？いきなり立っちゃ駄目だよ！！？」
「昨日の事もあるけど、屋上でも色々話をしていた際に感情の起伏が激しかったからね。…鶴ヶ峰さんはどうやら"精神的な負荷が肉体にも反映されやすい"みたいだね。後普通に考えれば"逆も有り得る"かな？……(スッ)とりあえず無理しないで、大丈夫だから」

座っていた状態からいきなり立ち上がった柚紀は"足がもつれてしまい"バランスを崩す。迅を追いかけようと"佐鳥が座っている側"を通ろうとした事もあり、佐鳥が助けようと伸ばした腕が"お腹回りを包むような形"で巻きつき柚紀を支える。遅れて動いた時枝は、ふらついた原因を"臆測ながら"話しつつ"片手と肩"に自分の手を置き柚紀の体勢を整える。……そして二人に触られても柚紀は嫌な顔をせず、申し訳なさそうにしつつ"何処か嬉しそうとも"見えた

『う、うん。…心配かけてごめんね二人とも。……迅さん、余計なこと話したら怒るからね？』
「大丈夫、大丈夫。…悪いようにはしないから。で、……どうしますか？言実さん」
『……………お前に付き合ってやるよ迅、…済まないが二人とも暫く柚紀を頼む。気分が良くなったら、ラボまで送ってくれ……嵐山には私が事情を説明しておく故、心配するな』
「「え？？」」

何やらナニかを察したらしい言実は、三人が止める間もなくそのまま迅を引き連れて屋上を後にした。ドアが閉まる際に見えた迅の意味深な笑みを見て、色々嫌な予感を拭えない柚紀は深くため息を漏らした