暫く口喧嘩していた二人たが当真が

「もうお前との口喧嘩に飽きたから、穂刈と少し話をして来る。…お前はくま辺りにでも慰めて貰え～」
『むう～、別に凹んだりしてないから余計なお世話です！！……先輩と喧嘩、…しないで下さいよ？』
「しねぇ～よ。…お前と言い合って"色々"すっきりしたからな(ｸｼｬﾘ)……そんな訳だ、穂刈。…ちょい移動するぞ」
「あ、あぁ」

離れていく当真に舌を出して邪険に扱っている様に見える柚紀だが、内心では(何時もの先輩だから、大丈夫か)と安心して二人を見送る。当真と穂刈は室内だが四人とは距離を置いて先に口を開いたのは

「あ～、……悪かった…な？変に殺気立っちまってさ、アイツが言っていた通り"俺らしくない"所を見せちまったし…(ﾁﾗｯ)アイツらにも悪いことしたな。……アレだな、何時もなら"この役割の奴"がほぼ必ず柚紀の側に居る感覚なんだが、今は居ねぇから…一番理解してる俺がって思っちまった。…アイツを取り巻く事情が、そうさせたんだろうな」
「いや、…知らないからな、俺は、鶴ヶ峰の事を、まだな、詳しくは…」
「ま、それもそうだな。……そんな穂刈にアッチで話した情報の共有だ」

何時もの感じて互いに話している二人、買い出し組で話をした【柚紀への接し方】【禁句】そして【柚紀自身が特殊な存在】、…ついでに柚紀がポジションを言い当てられた辺りから盗み聞きしていて"禁句"を発しそうになったから中に入ってきた事等を話した当真。更に

「アッチでは具体的にどんな風に特殊な存在に付いてかを説明する前に、荒船が"禁句"を口にしたから説明してなかったが、…スナイパーで言う【感覚派】と【理論派】……両方の素質持ち何だよ柚紀は。性格的に本質は前者の筈だ。だが、…今までの生活していた環境が後者の素質を育てた。俺はそう見ている……だから、アイツを見誤るんだよ皆」
「分かる、理屈や、凄さは、…だが、聞く、一つ、……話した、俺に、何故？言えば良いだろ、戻ってきたら、荒船達にも」
「ん？そうだなー、……穂刈に話した理由は単に"アレ"だな(ｸｲｯ)」
「？」

当真の言い分を疑わない穂刈は、ならば今この場で話す必要性を訊ねる。それに対して当真は親指で誰かを指し示す。その先に居たのは柚紀と話している

「笹森？」
「あぁ、…お前だって笹森が柚紀に惚れてるのは流石に気づいてるだろ？だが、"野郎に対してのトラウマ持ち"にして色んな事情持ちなアイツを落とすのは、どう考えたって笹森一人じゃ無理だ。…手助けがあってもバチは当たらねぇさ、逆に変な事をして柚紀を悲しませる方が一大事……"警告３"発令する可能性大、だな。多分だが、小佐野が加賀美を連れ出したのも同じ意図じゃないか？お前は笹森と仲が良いから、協力させる腹づもりでよ」
「協力は、しなくもない、別に、たが、卑怯じゃないか？…多勢に無勢は」

勿論穂刈も笹森が抱く気持ちには気づいていた。だが、これは言ってしまえば笹森個人の問題だ。諏訪隊全員が笹森の味方なのは良いとして、そこに自隊が干渉して問題はないのかが些か腑に落ちない様子。…別に柚紀本人と笹森が釣り合わない等は考えていない

「あ～……多分問題ねぇよ？ってか笹森の場合は、既に一人じゃどうしようもねぇ状況に居るって言っても過言じゃねぇ。因みに柚紀との仲があの通りだから、問題はそこじゃねぇ。…………居るんだよ、恋敵が。それもかなりの強敵がな」
「そ、そうなのか？たが、可笑しくもない、あの見た目に、あの性格だ、不思議でもない、だが、守られていた、エンブレム付きの服や、隊長達に、あの子は、…あったのか、機会が、近づく」

本人は知らないかも知れないがボーダー隊員から見れば、簡単には近づけない程完璧な布陣において柚紀は守られている。…理由を知れば"仕方ない"と思うが、ただの"恋心"だけであれらを突破する気には……そんな風に考えている穂刈に対して当真はこう断言した

「それが居るんだよ、つる姐を抜かせば言葉通り"柚紀の側に最も近い位置に居る奴等"がな。…そいつ等がアイツに対して"その手の感情持ち"なのは不明だが…それらしい兆候はあった。ま、"アイツ等の性格的に"って考えもあるが………それを抜きにしても、信頼度は自他共に一番だろう。…柚紀本人もそうな筈だ、反応見りゃ一発で分かる。アイツはつる姐とは違って、今じゃ感情が顔に出やすいからな」