「…それで、この娘が一体何者だ？」
『焦らないでよ城戸さん、そんなのこの子の名前を聞けば一発で理解するさ。……そう言う訳だから柚紀、座ったままで構わないから挨拶』
『え？あ、…その……鶴ヶ峰柚紀とい、言います。…き、旧姓で本当は別の苗字ですが、……こっちの方が…分かりやすいかと思いましてその……言実さんとの関係…とか』
「「「「「！！！？」」」」」
「…これでやっと話が進む」

最重要項目である柚紀の事を問われれば、自分で言うより本人の口から言った方が良いと考え姪に名乗りを促す。話の内容から何となく旧姓の方が良いと察して正面の城戸が怖くて少し俯いたまま名乗れば、鶴ヶ峰の苗字が出た時点で各々驚きを示し、事前に聞いていた忍田だけ会議の進捗が出て安堵

「旧姓とは言え鶴ヶ峰と言う事は、彼女と君は…」
『柚紀は私の姪だ。そしてこれが何を意味するか、……流石に分かるよな、お二方？』

「それはどう言う事かね？この子が言実君の姪である以上の、何か重要な事実があるのですか？…城戸司令？？林藤支部長？」
「………」

唐沢と根津は言実が何を言いたいのか理解出来ておらず、城戸と林藤は正確に意図を理解し複雑な表情を浮かべ、鬼怒田は何か思い当たる事があるのかそのまま黙り込む。そんな上層部の中で一番冷静な忍田が話を進める

「鬼怒田室長、何か思い当たる事がお有りなら発言してみては如何か？」
「…開発部にはトリガーやトリオン体、近界等に対する調査・研究・実験結果を纏めた資料が古いものを含め、多数保存されておる。勿論研究者として優秀な言実君が纏めた資料があるのは当然じゃが……これらの根源に相当する資料を作成した者の中に鶴ヶ峰の名が多数確認されている。制作時期からして言実君は有り得ぬ……つまり、だ」
「まぁそうだよなー。俺達と言実ちゃんは旧世代からの付き合いで家族構成も把握済み、こうなると答えは一つしかないな？城戸さん」
「……あの男の娘がそれか？」
『？？？』

当事者である柚紀が一番理解が出来ておらず、不安そうに言実を見上げて表情を窺う。視線に気付けば安心させる為に頭を一撫でした手を姪の肩に乗せ、自慢気な口調で正体を明かす

『秘密にするつもりもないから説明しよう。…この子は私の兄して、今のボーダー技術の礎を確立させた旧ボーダー時代を代表するエンジニアにして医学者、鶴ヶ峰静樹の一人娘だ。そしてその兄の推測が正しければ……この子はかなり特殊にして強力なサイドエフェクトの持ち主の可能性が極めて高い』