42.集合の曲
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『うぅ~、…おサノ先輩も加賀美先輩も何処にいらっしゃるのか分からないよ~』
柚紀は不安そうな表情をして広い通路に出て、時折足を止めつつ周囲を見渡していた。以前来たときはそこまで服装に頓着していなかったので言実の勧めもあり某大型チェーン店で済ませたが、あれから色々あり普通の女の子並にはファッションに多少は興味を持つようになった。その為、気になるお店があれはフラリと無意識に店内に入って物色しているせいで、二人と離れ離れになる始末だ。因みに那須隊二人の時は、日浦も柚紀と同じ様に気になるものがあれば飛び付くらしく、熊谷が呆れつつ慣れた手付きで二人を制御していた
「(えっと、とりあえず階移動は駄目って、くま先輩と約束したから、このフロアに居れば何時か見つけられるかな?後は言実さんが『何かあれば必ず言え』って言われたから、やっぱり連絡しないと……連絡?)……あ、そっか。こう言う時にこそ携帯を使えば良いのか!」
そして小佐野の予想通り、携帯の存在を忘れていた柚紀は鞄から携帯を取り出して操作を始めた。歩きながらは危険なので吹き抜け側に寄って立ち止まって画面を懸命に見て、誰にどんな内容を送るべきか真剣に悩んでいるせいで、自分に忍び寄る"魔の手"に気付いていない。後もう二、三歩で柚紀に触れる位置まで来たその時
‐ ギュッ!? グイッ!! ‐
『っ!?(クルッ)………え?』
「っは、……はぁ…はぁ……よ、良かった。…はぁ…はぁ……な、何とか…まに…あった。………はぁ~……さ、探したよ、鶴ヶ峰っ」
『…さ、笹森くん??な、何で此処に居るの?それに…探したって私をですか?でも……どうして?』
いきなり携帯を持っていない方の手首を掴まれて、後方に引かれたのでそちらを見れば、汗だくで肩で呼吸をしている笹森が居て吃驚する柚紀。そして口振りからして、自分を探していた事に疑問を抱き首を傾げる
一方の笹森は、疲れながらも柚紀の肩越しに向こう側を見ればコチラに近づいてきていた男二人組と目が合い、軽く睨み付ければ相手は舌打ちをして離れていった。とりあえずこれでひと安心となり、呼吸を整えつつ柚紀の質問に答える
「俺、ボーダーの先輩達と買い物に来てたんだけど、そしたら…おサノ先輩と加賀美先輩に偶然さっき会ってさ。……はぁ~、…話を聞くと鶴ヶ峰が、……お前が居なくなったって聞いて、それで…」
『もしかして私を探してくれてたの?えっと、…そこまで慌てる必要あるかな?』
「っ!!…(ガクンッ)……お前さ~、…もう少し警戒しろよな~。以前此処でどんな思いをしたか忘れた訳じゃないだろ?……俺やおサノ先輩は諏訪さんから聞いてる。だから…心配した鶴ヶ峰のことを、先輩も………俺も」
『あっ……』
焦って探しに来てくれた笹森が不思議で首を傾げる柚紀を見て、思わず怒鳴りそうになったのを何とか抑えたが逆に脱力してしまい、腕を掴んだまましゃがみこんだ笹森は、俯いたまま自分の気持ちを素直に白状する。それを聞いてハッと気が付いた柚紀は申し訳なくなった。どう返せばいいかと悩んだ末に、携帯を鞄に戻して代わりにハンカチを取り出せば、屈んで同じ目線となり未だ流れている笹森の汗を吹きながら柚紀は答えた
『……ごめんなさい、忘れていた訳じゃないの。ただ、…最近ずっと基地に居て………あれだけ男性が多い空間に長期間居ても、…嫌な思い…そんなにしてなかった、から。しても必ず…皆さんが助けてくれるって、何処か慢心してしまって……駄目だね私。…それが当たり前じゃ、ないのに』
「……その人が嫌がることはしない、困っている人が居たら助ける。誰にとっても当たり前な事だよ?だから、……鶴ヶ峰もそう思って大丈夫だよ。それに俺は……約束、したし。困っていたら助けるって」
『……うん、…笹森くん。…私を探してくれて、見つけてくれて有り難う』
「どう致しまして、…君が無事で良かったよ」
以前、諏訪がこんな事を隊員に言っていた。【柚紀は"当たり前"な事を自分には当てはまらないと考えている節がある】と。笹森は聞いた直後は理解出来なかったが、こうやって実際に遭遇して初めて痛感する。でもそう感じた事を出来るだけ表面に出さないように心掛けた。…敏い彼女に気づかれないようにと