「……成る程ね、だから三人で買い物って訳か。まぁ男手三人も居て言実さんが居れば余裕だもんね～」
「あ、そうよね。諏訪さん達が手伝うってことは、おサノが引っ越しの事を知っていても可笑しくはないわよね」

立ち止まっているのも通行の邪魔になるので、五人揃って歩き出す。前が小佐野と熊谷、後ろに日浦、柚紀、加賀美と並んで歩いている状態だ。歩きながら柚紀達が買い物に来た経由を熊谷が粗方説明すると、日浦が何やら自慢げに話始める

「ふふふ、実はですね先輩達。…何と！私達は先生からこの買い物にて"特別極秘任務"を仰せ付けられているんですよ！？凄いでしょ～！！！」
「「言実さんからの特別極秘任務っ？？！」」
『へ？な、何ですかそれ？？わ、わ、私何も聞いてないですよ？！うぅぅ……く、くまセンパ～イっ！』

あまり他人に頼み事をしない言実からの、それも日浦の発言から何やら重要そうな事と感じだオペレーター二人の視線が発言者と柚紀に向き、素直に驚いた。それに対して、どんな事か全く予想が出来ず不安になった柚紀が涙声で内容を知っているだろう熊谷に助けを求める。そんな声を聞いた熊谷は後ろを振り返り、未だにドヤ顔をしていた日浦にデコピンを一発

「(ﾊﾟﾁﾝ)いっ！！…痛いですよ～くま先輩っ！」
「あんたね～、色々嬉しいのは分かるけどハシャギ過ぎだよ全く。ちゃんと説明しな茜、…柚紀が特別極秘任務とか大袈裟に言われて戸惑ってるのが分からないの？」
『あ、……くま先輩怒らないであげて下さい。私が内容が全く分からないのが原因、ですから。…茜ちゃん、その任務内容聞いても良いかな？』

デコピンを食らって涙目になる日浦に、怒り気味な口調で注意する熊谷を見て思わず仲裁に入る柚紀。今回は日浦に比があるのは明らかだが、それを責めるつもりはなく逆に申し訳なさそうにする柚紀を見て、全員が複雑な表情を浮かべている。……この子は自分が悪くないのに責任を感じてしまっているのだ

「すみません柚紀先輩、嬉しすぎてつい調子に乗ってしまいました。…えっとですね、先生から頼まれた内容ですが"先輩に似合いそうな服を見繕ってくれ"と言われました」
「服を選ぶって事よね？でも何で言実さんが柚紀ちゃんの服をわざわざ二人に選ばせようとしてるのかしら？」
「……あ、私は理由分かったかも」
「流石におサノなら察する事が出来て当たり前よね。…柚紀を見ていれば誰もが一度、考えちゃう事だもの」
『？？……えっと、…もう少し詳しく説明をお願いしても良いですか？』

日浦が言実に頼まれた内容を聞いて小佐野は分かった様だが、今日が初対面な加賀美と柚紀本人は理解できていない様子だ。この反応は予想通りなので、気にせず詳しく話始める熊谷

「柚紀ってさ、何時もシンプルな服装じゃない？…別に悪いことじゃないわ。服の好みは個人によって様々だものね」
「でもでも、柚紀先輩ってぜっっったい、可愛い服とか大人っぽい服とか似合いますから？！…那須先輩だって同じこと言ってました！」
「でも柚紀ちゃんも言実さんも、そこまでファッションに興味があまりなさそうだから…って所か？」
「……確かに、…髪色的にも顔立ち的にも……色んな服を着せたいかも。見栄えとか良いだろうし、着飾ってみたいかも」
『……えっと、……み、皆さん？その……そんな事をして、…楽しいですか？』

熊谷の言葉を皮切りに日浦、小佐野、加賀美も自分の考え等を口にし全員の視線が柚紀に集まる。心遣いは嬉しいが自分には必要がないと柚紀は思っているので、あまり興味がなく困った表情をしている