36.好敵手の曲~影での駆け引き~
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去ったふりをして影から太刀川の様子を見ていた風間が、隊室に向かったのを見て小さくため息をついた。何はともあれ、これで柚紀に対する考えを改めるであろう。柚紀の問題は根深く、自分の洞察力を信じているが全てを把握するのは不可能なのは風間も重々承知している。諏訪から齎される情報にも耳を傾けるのは勿論だが、結局は上層部の柚紀に対する対応次第で状況は幾らでも変化するのだ。良い方ならまだ良いが、悪い方になった際、仮にもボーダーNo.1アタッカーの彼が味方であればやはり心強いのは事実だ。……実際に柚紀に凶刃を向ける輩が今後現れないとは限らないのだ、打てる手は早めに済ませるに越した事はないのだ
「(俺は別に太刀川と言実さんとの仲を取り持つ気はないが、……鶴ヶ峰の精神的負荷が減るならこの位、手を貸しても構わないだろう)」
そう考えながら歩き出す風間は、柚紀に対してかなりの高評価をつけている。一部の性格は仕方ないとして、米屋が遊び半分で称した慧眼は勿論、本来なら考えもつかない柔軟性のある思考力、そして必要なら例え目上な相手にも意見する強さと覚悟……挙げればきりがないが、兎に角"お気に入り"なのだ。それも
「念のため後で様子見に行くか。彼奴らはこの後、防衛任務だ。…なら菊地原辺りの名を使ってウチに連れて行くのも悪くないな。鶴ヶ峰の事だ、争奪戦の事もあって強くは断れん。彼奴らも喜ぶだろう、……日頃頑張る部下を労うのも上司の仕事だ。………ついでに助言結果も話すべきか?鶴ヶ峰のサイドエフェクトは精神との繋がりが密接だ、…ならば何かに対して自信が持てれば精神的にも安定するし、サイドエフェクトの効果向上にも一役買いそうだ。…新学期も近い、鶴ヶ峰も動く事が増える。……環境に慣れるまでは負担が強いられそうだが…(あの言実さんが対策をしない訳がない。そして恐らく鍵は…)」
風間隊全員が、だ。理由は色々あるが、一番なのは菊地原の為である。……あの菊地原が柚紀を人一倍気に掛けているが、本人はあくまでも"サイドエフェクト持ちの先輩"だからと豪語する。が、長い時間共にしている仲間から見ればあきらかに"特別扱い"なのが分かる。柚紀本人も菊地原に対してかなり良好な関係を保っている。なので、此処は対人関係が良くない部下の為にも……と風間自らが率先して動いている。それと柚紀の能力と肉体・精神の関係性にも気づいており、良い案が出たら此方も即行動を心掛けていた。今後の生活に対する不安もあるが、さほど風間は心配をしていない。何故なら…
「あ、風間さん。お疲れ様です」
「お疲れ様です」
「おつかれさまでーす!!」
「!!嵐山達か……全員一緒とは珍しいな」
嵐山隊三人に声を掛けられ、足を止めてそちらを見る風間。柚紀と此処での接触を禁止されているのも原因だが、嵐山隊も何かと多忙なのでロビーで見かけるのが久しぶりだったりもするのだ。更に嵐山と時枝は兎も角、スナイパーの佐鳥も居る事に流石の風間も驚きを示した。……"考えていた人物"が現れたと言う事もあった。本人たちも自覚があるらしく、複雑な表情をしながら嵐山から口を開く
「まぁ賢も居るとやっぱり、不思議に思いますよね?一応ちゃんとした理由があります。…二人がやりたいって言うので」
「ほぅ、佐鳥だけでなく時枝もか?」
「必要とおれも思いましたから。…ウチの持ち味は絶妙な連係プレイ、と皆さんに言われてます。勿論確かに自信はありますが…」
「柚紀ちゃんが、"前衛と後衛との連係って難しいからこそ鍛えれば強くなりますよね?"って。当たり前の事ですし、別に佐鳥には超絶スナイプがありますが、…他との差を付けるなら基本強化かなと」
「馬鹿の一つ覚えになりそうですけどね。……それでも強くなる必要があります。守りたいモノの為にも」
「成る程な、鶴ヶ峰は慣れてしまった俺達が見落とし勝ちなものを再認識させてくれる。所謂"原点回帰"、だな。………対戦相手を探しているなら、俺で良ければ相手をしてやるが?」
互いの顔を見合わせる佐鳥と時枝、そして小さく頷くと「「よろしくお願いします!!」」と頭を下げて三人で各ブースに向かって歩いていくのを見送る嵐山。そして、試合を見るためにモニター近くに移動しながら展開を予想する
「普通に考えれば風間さんが有利だが……二人は彼女の為に日々奮闘しているますから意外と手強いですよ?」