32.演奏の曲~旋律を手繰る~
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((とっきーって、何時もサポートしてくれるよね~。頼りにしているけど、…それが役目とか思っていない?自分に嘘ついてない?……柚紀ちゃんの事も含めて、さ))
((……鶴ヶ峰さんに関してなら、お前だってそうじゃないのか?気づいてない訳じゃないだろ?…彼女と他の女子とは……何かが違うってさ、どうなんだ佐鳥?))
((……同じ事を聞いたらとっきーは答えられる?))
((………正直言って…違うとは言えないと思う。だけどおれには、理由が……分からない))
動いたのはほぼ同時だが、佐鳥一人が先に柚紀の体を支える形になり、ケースを動かして遅れた時枝はバランスを崩しかけた佐鳥を助ける形で柚紀を支えている状態だ、…これらを瞬時にやり遂げるこの絶妙な連携プレイが嵐山隊の
一方で内部通信が聞こえない、生身の柚紀は今の状況に驚いているのと同時に疑問を抱いていた
『(どうして?何で……二人なら…大丈夫なんだろ?いきなりだったし…男の人に…触られるのは……駄目な筈なのに……少し前に、佐鳥くんに触られた時は…駄目だった………なのに今は………それに……何処か…落ち着く?)』
……佐鳥に悪気がある訳でもないのも、あくまでも手助けであるのも分かっている。だが…いきなり触られたにも関わらず、恐怖心や嫌悪感、緊張感がないのだ。それに時枝も控え目ながら触れて居るし、何故今回は反応が出ないかが……理由は分からない、だが何処か嬉しく感じる柚紀だった
その後柚紀の体制を元に整えると、二人は少し距離を取る。その間に傷などのチェックをしてからヴァイオリンをケースに片付けながら、先ずは二人が来た理由を考える柚紀だが、やはり検討が付かないので直接訊ねることに。きちんとケースに収納を終えて片手で持ちながら立ち上り二人と真っ正面から対峙、少し躊躇しながら柚紀が口を開く
『えっと……さっきは助けてくれて有り難う二人とも。それで、どうして屋上に来たのか聞いても…良いかな?偶然じゃ…ないよね?』
「あ~、えっとその…確認と言うか君に用があったとも言えるけど………とっきー、説明頼む」
「もう佐鳥は、本当に面倒とか少しでも難しいと感じたらおれに丸投げするよね、毎回。ハァー………おれ達は鶴ヶ峰さんに聞きたい…心配だったのも理由でもあるか?兎に角君を探して此処に来た。おれが教えた…此処に居る気がした、……条件的にも此処位しか思い付かなかったから」
『私に?…それと……条件?』
どうやら二人とも同じ理由でそれも自分に用があると聞き首を傾げる柚紀、この時既に色んな疑問と共に一つの嫌な予感が浮かんでいた
『(……誰にも邪魔されたくなくて、…一人になりたくて此処に来たのに。場所が分かった事より問題は……私を探しに来た理由。……もしも、コレが当たったら………"隠せれない"、隠しちゃ駄目だよ…ね)』
そんな諦めに似た考えが頭の中を横切るが、表情に出さないようにしており、まだ柚紀の変化に気付けない二人は、目線のみで会話をし負けたらしい佐鳥が渋々話を始めた
「あの、さ…多分気のせいじゃないと思う。聴きづらかったし、途切れ途切れだったし、殆どの人は気づいてなかった。でも、佐鳥…と、とっきーには聴こえた。一人なら空耳で済むけど、二人に…それも別の場所に居たのになら………そうなるよね。…ねぇ、…柚紀ちゃん。……それ(ヴァイオリン)演奏する前にさ…歌ってなかったかな?…曲名は知らないけど…後、……ごめん!オレはおつるちゃんに聞きました。"柚紀ちゃんが何処で歌っているか教えて欲しい"って」
「……おれの場合は側に嵐山さんも綾辻先輩も居たのに、聴こえたのはおれだけ。…初日の時に居合わせたメンバーにしか聴こえないって訳じゃないのも、これで証明済み。…条件の方は鶴ヶ峰さんが、知っているかも知れないから一度置いておこう。おれもあの歌がなんの曲か知らないし……自信がないけど多分、そのヴァイオリンで弾いていたのと同じ曲。…違うかな?」
『!!!』
二人の言い分を聞いて柚紀は驚きと共に冷や汗を感じていた。……確かに間違えはない、歌っていたし、同じ曲をヴァイオリンで弾いていたのも正解だ。…だか
『……なんで、……どうして…聴こえたの…?』
「え?だって歌ってたんでしょ?ならサイドエフェクトが発動して聞こえるのは当たり前じゃないの?それにほら、佐鳥達はトリオン体だし」
「聴こえ方が変だったのは、鶴ヶ峰さんの身に何かあったかと心配したけど、そうじゃ……鶴ヶ峰さん?夕暮れのせいでちゃんと判断できないけど顔色…悪くない?」
「えっ?断りもなく佐鳥がまた触っちゃったから……じゃないよね?今は触ってないし」
様子が可笑しいのに気付いた二人、佐鳥が心配して距離を詰めようとすると
『……お願い…来ないでっ!!……近づかないでっ!!』
「「!!」」
柚紀が怯えた表情をして後ろに下がる。それを見て反射的に更に近付こうとした佐鳥の腕を掴んで時枝が阻止する。……柚紀の様子が明らかに変な状態で刺激を与えたら駄目なのは、例の騒動で痛感しているので一先ず様子を見る事に
一方柚紀は嫌な予感が当たってしまった事にショックを受けていた。そしていざ話そうとしても、内容の重大さを…無知による自らの罪を知っているからこそ口が開かない
更に、この二人に知られた事が発言の妨げになっていた。それでも『私でなくても構わない、だが一人で悩みを抱え込むな……もう大丈夫だから』…言実との約束に後押しされ、そっと胸元に手を伸ばし…"落ち着く為の癖"からかそのまま襟元をギュッと握り締め、まるで懺悔するかの様な辛そうで泣きそうな顔をして柚紀はこう告げた
『どうしてなの?なんでなの?……どうして遠くに居た二人に私の声が…歌が届いちゃったの??!聴こえる筈…ないのにっ!!!』