29.休息の曲・四番
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佐鳥は誰もいない閑散とした廊下を一人、お手洗いの帰り道を考え事をしながら隊室へ歩いていた。一人になると余計に考えなくてもいいことも、気になっていればやはり考えずには要られなくなるのだ。その内容はと言うと……言実と連絡が取れた際に、諏訪隊室での出来事を報告がてら見解を求めて帰ってきた内容が脳内で反芻していた
『迅が言っているトリオン減少によって発生する症状は、確かに間違ってはいない。しかしだな、五感の感覚が箇所が違うとはいえ機能低下・過敏の症状が片方のみならいざ知らず、両方同時発生する事は本来はあり得ぬ筈だ。それが成されたとすれば原因は恐らく…』
「(……無理矢理に意識を浮上させたって、おつるちゃんは言ってたけど、まさかオレの声が聞こえたからとかじゃ流石にないでしょ?でも起きた直後のあの言葉は…)はぁー、オレの頭では考えるだけ無駄だよな。おつるちゃんですら確信がないみたいだし、……アレのせいで何か後遺症とか出たら…佐鳥は柚紀ちゃんに顔向けが出来なくなるよ」
柚紀が起きるまで二人っきりだった空間での出来事を嵐山達にも話していない佐鳥。諏訪隊室で時枝に一度で訊ねられたがそれだけで再度催促もない事もそうだが、…どうしても話そうとは思えなかった。何故なのかは本人にも分からず、更に色々罪悪感に襲われるが頭を振って無理矢理考えるのを止める事にした。…自分が考えても答えは出ないのだから
「(色々あるけどコレ全部…)柚紀ちゃんが起きれば分かるかな?分からないままは、何かモヤモヤする…今までこんな事、あったかな?」
体調関係は柚紀本人に聞くしかないし、未だに眠っている彼女は自分より格段に頭の回転が良く、理解力なんかも高い。だから話せば何か糸口が掴めるのでは?と他人頼りな事を考えていたら隊室に到着し、慣れた手付きでロック解除し誰も起きていない室内に入った……筈が、少し前まで眠っていた柚紀が上半身を起こしている姿を見て相手と目があってしまい頭が真っ白になり
『「…………え?」』
柚紀と同じタイミングで同じ言葉を口にして佐鳥は暫くその場を動けなかった
一方の柚紀はと言うと、佐鳥の登場により今の環境が昔ではない事が認識出来たのと、驚きのあまりに涙が引っ込んでしまった。しかし、向こうが微動だにしない事が心配になり自分が上手く体が動かせないことを忘れてた状態で、名前を呼び掛けて側に行こうと腕に更なる力を加えようとした時
『…………さ…ぁっ(ズルッ!!)?!?!』
腕の力だけで上半身を支えるのが限界となり、体が崩れ落ちエアマットから床にずり落ちてゆくが、柚紀は体が動かせない為に成す術もなく、"落ちる!"っと認識しては居るが受け身も取れないので痛みの衝撃に備えて反射的にぎゅっと目を閉じる
‐ ドタンッ!! ‐
『っ………………??「ぎ、ギリギリセーフっ!やっぱりトリオン体と生身とじゃ反応速度が全然違うや」…!!?(ビクッ)』
お尻から下の下半身は床に落ちて、衝撃等も伝わってきたが、腰から上は一向に衝撃や痛みが伝わってこなく不思議に思っていた柚紀は、至近距離からいきなり佐鳥の声が聞こえてきたのが気になり目を開いて驚きのあまりに体が硬直した。何故かと言うと、転がるようにして落ちた際にあお向けになった柚紀の上半身と床の間に佐鳥が何とか腕を滑り込ませて、不格好ながら肩を抱く様な体制となり、後頭部を床にぶつけるのだけは何とか回避した状況だからだ。そして、咄嗟に動いたのは良いが次に何をすれば良いか分からずそのまま固まってしまう佐鳥。他の女子相手ならこんな風に困ったりはしない筈だが、柚紀が相手だとどうも勝手が違うらしい
「(落ちそうだっから何とか助けたけど、この後はどうすれば良いのさ?!と、とりあえず体制を整えるべきか?)『…さ……り………み…』え?何?柚紀ちゃんどうしたの?」
対応に困り果てている佐鳥に、喉が乾燥し過ぎて上手く話せない柚紀は頑張って水分補給がしたい事を訴える