26.休息の曲・一番
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眠っている柚紀は、夢を見ている訳でなく水中を揺蕩うような感覚に包まれていた。少し前に体験した思想の奥底に沈む訳ではなく、目を閉じてただただ水の中に居るみたいなものだ。違うとすれば、あの時とは違い自発的に瞳を閉じている事位だ。別に柚紀は目を開く必要ないと感じるし、こうやって水中を漂うだけでとても気楽で疲れない、そう思って身を委ねていると
‐ ポツン……ポツン… ‐
‐ ーー、ー ‐
上空から水面に何かが落ちる音と、誰かの声が聞こえた気がして精神体の柚紀はゆっくり水の中で目を開き水面を見つめる。言実が名前を呼んでいた時のように、はっきりと聞こえないが誰かが自分に呼び掛けている?そしてその声に連動する様に水面に落ち続けているアレは……
その考えに至った柚紀は水面に浮上しようと動き出す。沈む感覚には襲われないが、あの時と同じかそれ以上に体が重たく感じてしまう。…本能が休息を求めているのに反して意識を覚醒させようと抵抗しているからである。それでも上がることを柚紀は止めない、声の主は未だに不明だしちゃんと聞こえないが、もしあの水面落ち続けているものが自分の予想通りのモノなら
『(起きて私っ!!起きてアレを止めないといけない!!…だからっ!!?)』
なんとか這い上がり水面付近まで来たが、まだ顔を出すには距離がある。ならばと柚紀は手を上に伸ばし……ほんの少しだけ指先が水面から出すことが出来た
髪の房から手を離し、顔を見ているのが辛くなった佐鳥は俯いたまま暫くじっとしていた。あまり長く居ると他の人が様子を見に来るかもと思い、名残惜しいが側を離れようとした時
‐ ……サワッ ‐
「!!?」
自分の顔に何かが触れた感覚が伝わってきて、顔を上げれば身動ぎせずに寝ている筈の柚紀が、佐鳥が居る方へと手を動かしていた。伸ばされた手を反射的に掴もうとしたが、まだ瞳が開いていない状態では言実からの厳命を破った事になるかも知れないので我に返って我慢する。寝惚けて動いたか、目覚めが近いのか分からない佐鳥だがとりあえず呼び掛けることに
「柚紀ちゃん?……柚紀ちゃん、…起きたの?……ねぇ、…起きたら……」
‐ 自分(佐鳥)を見て…声を聞かせて ‐
声に出さないで佐鳥がそう願うと、それに呼応するかの様に瞼が微動し、ゆっくりと目が開かれる。半開きな状態で尚且つ体も起こせない状態で視線をさ迷わせ、佐鳥を柚紀が見つけると指先だけ触れていた手を動かして、顔の輪郭を確かめるように触りながら
『……なか…ないで、…わ…たしは……だい………じょうぶ…だから…だから………かなし…そうに……しないで…』
「っ!?……うん、大丈夫。…君が起きてくれたから、佐鳥は……大丈夫です」
…応えてくれた。それだけで歓喜溢れて泣きそうになるのを耐えて自分に添えられた手を掴み優しく握り締める佐鳥
一方で柚紀は、無理に目覚めたせいで視界も悪く体も重たい。それでもすぐ近くにいる人影に気付いて、あの時の様に頑張って手を伸ばして相手に触りながら言いたい事を告げた。彼が佐鳥と認識していない柚紀たが
‐ 自分の気のせいかも知れない、でもこの人が自分のせいで泣いている…悲しんでいる気がしたから ‐