「……そう言えば、生身の状態でトリオン量減ったらどんな事になりますか？ほら、俺達はあくまでもトリオン体の時にしか、基本トリオン使わないじゃないですか？だからトリオン量が減ってもトリオン体維持が出来なくなる位で、生身に影響出ない……今の鶴ヶ峰に対してどんな対応が正解なのか俺、分からないです。…皆さんは？」
「あ～～、確かに日佐人の言う通りだな。…言実さんはその事何も言ってなかったから、すっかり忘れてた」
「つーか、"生身の状態でトリオン操作出来る"って人が今まで居なくない？だから幾ら言実さんでも知らない可能性あるよねコレ」

笹森から出た素朴な疑問に対して、全員ハッとなり考え始める。笹森の言い分や小佐野が指摘した通りに恐らく前例がない事態の可能性が高く、何が正解なのか間違いなのか判断つかない。時枝も考えているが答えが出ず、ふと嵐山だけ他と何か違うのを感じ取り訊ねる事に

「嵐山さんは何かご存知なのですか？おれ達とは違って余裕があると言いますか、…アテでもあるのですか？」
「ん？残念ながら、俺も初めての体験だから対応法は知らない。だが、……充が言うようにアテならあるぞ？(ｳﾞｰｳﾞｰ)お！噂をすれば………迅からのメールだ」
「「「あ～成る程！」」」

余裕が感じられる嵐山の理由を聞き納得する諏訪隊のメンバーに、時枝も内容が気になるのか嵐山の手元にある携帯を覗き込む。ある程度内容を理解出来た所で嵐山がメールを読み上げる

【よ、嵐山。頼みを聞いてくれて有り難うな、それと皆もご苦労様

さて、労いの言葉はこの辺にして本題に入るか。
生身の状態でトリオン残量が少ないと起こる事は「風邪を引いた人みたいな状態」が一番しっくり来るかな？熱や咳と言った症状はないが、体が上手く動かせなかったり睡眠を欲したりする。それと生命維持にエネルギーを優先的に使う関係上、一時的な五感機能の低下や身体機能もかなり低下する。体温管理や消化のよい栄養のある食べ物とかを意識してくれ。怠ると本当の風邪を引く、それも重度のな。
後、これは柚紀ちゃんに現れる症状とは限らないが、エネルギーバランスが崩れた影響で防衛本能が過敏になって一部の感覚が研ぎ澄まされた事例もあるから、接する時は十分に気を付けろよ？その子を泣かせたくないだろ？
ま、注意点はこんな感じだ。ある程度回復するまで頑張って看護しろよ嵐山隊

実力派エリートより】

読み上げた内容を聞いて、それぞれ思うことがあるのか反応に差が出ていた。が、少なくとも対処法が分かった事には全員安心してはいる

「つまり、風邪引きの人にするのと同じ対応で大丈夫そうだね。あ、飲み物は兎も角、食べ物消化に良いのあったか？」
「落ち着けつつみん、起きて直ぐに食べるとは限らないよ。食欲がないって可能性もあるし」
「俺と堤さんは生身だから、嵐山さん達が感じない感覚も分かるだろうけど…それでも判断難しそう」
「それに……言実さんの口振りでは鶴ヶ峰さんのトリオン減少量はかなりらしいから、長期戦も覚悟した方が良さそうだね」
「どちらにしても、柚紀ちゃんが目を覚ますのを待つしか今の俺達には出来ない。…今は賢が側に居る、何かあれば直ぐに気付くだろう」

それぞれの考えを述べた最後に嵐山が簡潔に纏め、全員が頷いて同意する。そして柚紀が…今は佐鳥も居る部屋の方を静かに見つめるのであった