『…ベイルアウトしてない所からしてまだ全員生きているみたいだな』
〔お！つる姐じゃねぇか。連絡してきたって事は無事に基地まであの子が辿り着いたって訳か？〕
『残念ながら基地付近とは言え、柚紀は私と一緒に外に居る状態だ』
〔えっ？？幾ら言実さんがご一緒でも、今の状況で鶴ヶ峰を外に居させるのは危険じゃないですか？！！〕

回線を使った通信で一番初めに反応したのは太刀川で、内容が内容だったのか次に反応を示したのが笹森と言ったアタッカー勢だった。出水の反応が無いことから、少なからず状況は良くないと判断した言実は早々に本題を切り出す

『そう言うな笹森、これには理由がある。…悪いが全員今から実験に付き合ってもらうぞ。拒否権はなし、だ』
〔実験って、…おいつる姐まさか……〕
『勘違いするなよ諏訪、決めたのは柚紀本人で私は何も言ってはおらん。どちらかと言うと笹森と同意見でさっさと基地に戻りたいのが本音だが……一度やると決めたその意思は曲がらんからな、この子は』

"実験"のワードに過敏に反応した諏訪が低い声で問い掛け様とするが、すかさず言実が言いたいであろう事を否定し説明する。ここでやっと出水が反応し問い掛ける

〔っ！…でも姐さん。柚紀ちゃんの能力でどうにかなりますか？！ゲート発生は大分収まりましたし敵の数も減りましたが、現状良くないですよ？堤さんが片腕な状態で何故か少し元気な状態で戻ってきましたが、ガンナー二人はトリオン量的に落ちるのは時間の問題。…人数が減れば流石の俺達でもキツくなりますよ？〕
『そうならない様にするための行動だ、私が勝算が無いような無駄な行動をすると思うか？』
〔ですが言実さん、本当に大丈夫ですか？俺と別れる時の鶴ヶ峰の様子を見るからに……やはり不安です〕

出水からの詳細な報告からあまり猶予がないと判断するが、下手に走れば実験に支障が出るかもと考え早足に移動を続ける言実に、堤が意見を述べる。ただ、内容は柚紀の能力を疑うものでなく、心情等を心配してのものであった。それに対してどう返そうかと思案した時、不意に後ろを付いてきている柚紀に視線を向ければ、無言ながらも力強く頷き返してきた。それを見た言実は満足そうな表情をし、そして自信満々にこう返事をした

『甘く見るな、柚紀は私の姪だ。やる時はきちんと成果を出す子なのは私が保障する。……準備が整い次第早急に始める、それまでもう少しだけ耐え凌いでくれ』