基地内は表だって今の現状を公開していないらしく、一部を除いて平常通りの雰囲気だ。なので言実も普段と変わらぬ足取りで作戦室に向かっていた。無表情な自分から状況を読み取れる人なんて先ず居ないだろうが、念のためである

『失礼する。…状況はどうなってる？』
「！！言実くん、何故此処に？！君はこの手の案件にはこちらから要請を出さない限り首を突っ込まないたろ？」
『そうせざるを得ない事情が出来たからな、……沢村ちゃん手短に説明をくれ』

柚紀が三門市に初めて来た日の様に、アポなしに作戦室に入る言実。室内ではオペレーターがひっきりなしにパソコン操作をしていた。忍田は居るが城戸や鬼怒田が居ないので、まだ状況は思った以上に悪くないと推測する。言実の訪問に忍田は驚かれたが、此方もゆっくりはしてられないので、早急に沢村に説明を求める

「迅くんからの緊急通信を受信して、要求通りに諏訪・太刀川両オペレーターにコンタクト後に警戒区域全域にゲートが発生。断続的な発生が続きましたが一時的な事で暫くして落ち着いた…筈でしたが、一部区域にてゲートが大量に発生。現在もゲート発生率は高数値を保ったまま……現在はそれを監視するに値してます」
『……その地域の担当部隊に指示は出してないのか？』
「その地域の担当は慶達だ。なら、下手に指示を出すより現場で対応させた方が良いと私が判断した。それで、何故言実くんが動く必要があるのか説明してくれると私は有りがたいのだが…」

沢村の今までの状況説明の把握と、モニターに映る情報を確認し、他地域の担当部隊の事はさほど気にしなくても大丈夫と推測した後に忍田の問い掛けにどう答えるか考えて言実はこう返した

『私が動く理由として現時点で己以外の理由は、…一つのみだ。今現在太刀川と諏訪両隊の元には……あの子が居るからな』
「！！まさか、彼女が？！…確かに言実くんが動くのにそれ以上の理由はないな。たが、しかし何故」
『奴等を責めるなよ忍田さん、……勿論、迅もだ。元はと言えば今回の騒動の原因は私にある。責任が発生するなら私が負う故にな』
「………君にも色々あるだろうから私は責めるつもりは毛頭ない。…城戸さんはそうは言えないだろう、必要なら私が擁護するが？」
『……そうして貰えると正直言って助かる…さて』

あの日と同じように、だが今回はオペレーター達が使用するコンピューターを操作せずインカムを装着。脳内に"臨時接続"と機械的なアナウンスを聞きながら忍田の方を見て宣言する

『この件は私に一任して貰おう。…柚紀が関わっているのも要因だが、対処を間違えれば幾ら太刀川達でも危うくなる。理由は簡単だ………あの子のサイドエフェクトが関係してしまっているからだ』