獅子は愛の檻に囚われた
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「――潔くん!!」
「……チッ!!」
いつもの笑顔で潔に駆け寄るアイツの声に、ピッチから立ち去ろうとしていた足を思わず止めて振り返った。
視線の先には何やら楽しげに会話をする潔と紬の姿があった。常に殺気立っているこの監獄には似つかわしくない二人のその甘く穏やかな空気感はまるで恋愛映画のワンシーンのようで、その部分だけが切り取られたかのように見えた。
その光景に自分の内側からどろり……と、ドス黒い感情が溢れ出したのが分かり、わざとらしく大きな音を立てて舌打ちをすると、ガシガシと強く頭を掻いた。
―どうして、俺じゃない……―
…まただ。
最近、何かにつけてこの言葉が脳内に流れる。
朝から晩までサッカーのことだけを考えるのがこの監獄の常。
それでいい。自分はその為にここに来たのだ。
サッカーと凪がいればそれで十分。それ以上何もいらない。
そう思っていたのに。思っていたはずなのに……。
アイツが……自分のナカに入り込んでくる。アイツが自分の心を激しく乱してくるのだ。
正直なところ、最初は目障りだと思っていた。
もう一人のマネージャーだかなんだか知らないが、いつの間にか自分と凪との間に入り込んできて、そしていつの間にか凪が懐いていて……。
気に食わなかったのは事実だが凪が懐いているということは、特に害のある奴でもないのかと思ったのもまた事実で……。
凪を見ていた目は、いつの間にかアイツだけを見るようになっていた。
己の目が、心が、彼女を追い求めていることに気づいてしまったのだ――。
それなのに、彼女のその宝石のように大きな双眸は自分を見てはくれない……。
「……っ」
こんな気持ちになったのは初めてだ。凪を失った時とはまた違う。形容しがたいこの感情。
今まで欲しいものはなんでも手に入れてきた。苦労せずとも手に入れることが出来た。どんなことでも自分の思い通りにしてきたのだ。
それなのにアイツだけは思い通りにならない。
アイツの世界に自分は存在すらしていないのではないかとすら思う。
俺とアイツの間には、見えない壁がある気がする。俺とアイツを隔てる壁が……。
「……み、御影くん?大丈夫?」
「っ!!?」
唐突に自分の名前を呼ばれ、ハッと顔を上げれば目の前には心配そうに見つめるアイツがいた。
「ご、ごめんね急に声かけて…。でもなんか……苦しそうだったから、御影くんのこと、その……放っておけなくて……」
‘苦しそうだったから’
彼女が発したその言葉の通りだった。
ああ――。そうだな――。
お前の言う通りだ。俺は今苦しい。
お前との間にある見えない壁が、俺をここまで苦しめているんだ。
その壁はどうして出来た……?
壁の原因は……。
―紬ちゃん!―
―紬ちゃーん!!―
―紬ちゃん―
―紬〜―
「
他の奴らが当たり前に呼んでいる名前を、俺が呼んでいないからだ――。
ただ、それだけのことだ――。
「御影くん、今……私の名前、呼んだ……?」
驚きの表情を浮かべたアイツ……紬は、口を金魚のようにパクパクさせていた。
「……悪ィかよ。他の連中だってそう呼んでんだから、これからは俺もお前のことそう呼ぶ」
ぶっきらぼうにそう答えれば、紬は大きな目をさらに見開きパチパチと数回瞬きをした後、嬉しそうに破顔した。
「ううん!!御影くんに名前呼んでもらえて、すっごく嬉しいよ!!」
「……っ、そーかよ」
じんわりと温かくなっていく心。それと同時に俺たちを隔てていた壁が、少しずつだが溶けていくような感覚を感じた。
今まで感じたことのない感覚。サッカーでは得られなかった気持ち…。
目の前で微笑む彼女が、今俺は、どうしようもなく愛しい――。
「……チッ!!」
いつもの笑顔で潔に駆け寄るアイツの声に、ピッチから立ち去ろうとしていた足を思わず止めて振り返った。
視線の先には何やら楽しげに会話をする潔と紬の姿があった。常に殺気立っているこの監獄には似つかわしくない二人のその甘く穏やかな空気感はまるで恋愛映画のワンシーンのようで、その部分だけが切り取られたかのように見えた。
その光景に自分の内側からどろり……と、ドス黒い感情が溢れ出したのが分かり、わざとらしく大きな音を立てて舌打ちをすると、ガシガシと強く頭を掻いた。
―どうして、俺じゃない……―
…まただ。
最近、何かにつけてこの言葉が脳内に流れる。
朝から晩までサッカーのことだけを考えるのがこの監獄の常。
それでいい。自分はその為にここに来たのだ。
サッカーと凪がいればそれで十分。それ以上何もいらない。
そう思っていたのに。思っていたはずなのに……。
アイツが……自分のナカに入り込んでくる。アイツが自分の心を激しく乱してくるのだ。
正直なところ、最初は目障りだと思っていた。
もう一人のマネージャーだかなんだか知らないが、いつの間にか自分と凪との間に入り込んできて、そしていつの間にか凪が懐いていて……。
気に食わなかったのは事実だが凪が懐いているということは、特に害のある奴でもないのかと思ったのもまた事実で……。
凪を見ていた目は、いつの間にかアイツだけを見るようになっていた。
己の目が、心が、彼女を追い求めていることに気づいてしまったのだ――。
それなのに、彼女のその宝石のように大きな双眸は自分を見てはくれない……。
「……っ」
こんな気持ちになったのは初めてだ。凪を失った時とはまた違う。形容しがたいこの感情。
今まで欲しいものはなんでも手に入れてきた。苦労せずとも手に入れることが出来た。どんなことでも自分の思い通りにしてきたのだ。
それなのにアイツだけは思い通りにならない。
アイツの世界に自分は存在すらしていないのではないかとすら思う。
俺とアイツの間には、見えない壁がある気がする。俺とアイツを隔てる壁が……。
「……み、御影くん?大丈夫?」
「っ!!?」
唐突に自分の名前を呼ばれ、ハッと顔を上げれば目の前には心配そうに見つめるアイツがいた。
「ご、ごめんね急に声かけて…。でもなんか……苦しそうだったから、御影くんのこと、その……放っておけなくて……」
‘苦しそうだったから’
彼女が発したその言葉の通りだった。
ああ――。そうだな――。
お前の言う通りだ。俺は今苦しい。
お前との間にある見えない壁が、俺をここまで苦しめているんだ。
その壁はどうして出来た……?
壁の原因は……。
―紬ちゃん!―
―紬ちゃーん!!―
―紬ちゃん―
―紬〜―
「
紬……
」他の奴らが当たり前に呼んでいる名前を、俺が呼んでいないからだ――。
ただ、それだけのことだ――。
「御影くん、今……私の名前、呼んだ……?」
驚きの表情を浮かべたアイツ……紬は、口を金魚のようにパクパクさせていた。
「……悪ィかよ。他の連中だってそう呼んでんだから、これからは俺もお前のことそう呼ぶ」
ぶっきらぼうにそう答えれば、紬は大きな目をさらに見開きパチパチと数回瞬きをした後、嬉しそうに破顔した。
「ううん!!御影くんに名前呼んでもらえて、すっごく嬉しいよ!!」
「……っ、そーかよ」
じんわりと温かくなっていく心。それと同時に俺たちを隔てていた壁が、少しずつだが溶けていくような感覚を感じた。
今まで感じたことのない感覚。サッカーでは得られなかった気持ち…。
目の前で微笑む彼女が、今俺は、どうしようもなく愛しい――。
1/1ページ
